17 / 18
いつか灰になるまで(終)
しおりを挟む
「そういえば、どうして俺にお祓い依頼許可したんですか?」
事務所に行くと所長である岩波が珍しくいたため、依頼完了の報告がてら疑問に思っていたことを聞いてみた。
岩波は初めう~んと唸っていたが、渋々といった様子で話し始めた。
「実はな、お前と電話で話しているとき、お前の兄貴に頼まれたんだよ」
「兄って、千尋兄さんにですか?」
「あぁ」
驚いた。
夜尋には兄の気配など少しも感じなかったのに。
改めて、岩波の実力を思い知る。
「お前にしか頼めないっていって頼んでてなぁ。そんな風に言われたら断れないだろ、しかも相手はお前の身内だし」
それにあんだけ苦しんだ奴の願いを無下にできん。と、岩波は頭を掻きながら答えた。
やっと分かった。
兄は初めから、自分と悠灯を会わせたかったのだと。
兄の事件でずっと苦しんでいる二人を、もしかしたら救いたいと思っていたのかもしれない。
二人が兄にいつまでも囚われていたせいで、兄が安心して眠れていなかったと思うと、なんだか自分のどうしようもなさに呆れた。
とんだ遠回りをしてしまった。
しかし、最後に見た兄の表情は穏やかで、幸せそうだった。
それだけで、夜尋は救われたような気がした。
やっとここに来ることができた。
前はきっとここを訪れたら、本当に終わってしまうような気がして来れなかった。
小さな花束しか買えなかったが、これだけでも十分だろう。
『都築家墓』
そう書かれた墓石をまっすぐに見つめた。
お墓には到底似合わないとも思ったが、せっかく持ってきたのだからと花を花立に差す。
千尋に似合いそうな黄色い花が墓石を華やかにしている。
(辛気臭いのよりもきっとこっちの方が好きだよな)
ふっと笑う悠灯の瞳には、もう悲しみも苦しみもなかった。
幸せになることで千尋の幸せに繋がると今は信じられるから。
吸い込まれそうなほど青い空を見上げる。
待っていて。きっといつかあなたと一緒のところに逝くから。
あなたが願った通りに必ず幸せになるから。
それまであともう少しだけ待っていて。
いつか――――
いつか灰になるまで。
事務所に行くと所長である岩波が珍しくいたため、依頼完了の報告がてら疑問に思っていたことを聞いてみた。
岩波は初めう~んと唸っていたが、渋々といった様子で話し始めた。
「実はな、お前と電話で話しているとき、お前の兄貴に頼まれたんだよ」
「兄って、千尋兄さんにですか?」
「あぁ」
驚いた。
夜尋には兄の気配など少しも感じなかったのに。
改めて、岩波の実力を思い知る。
「お前にしか頼めないっていって頼んでてなぁ。そんな風に言われたら断れないだろ、しかも相手はお前の身内だし」
それにあんだけ苦しんだ奴の願いを無下にできん。と、岩波は頭を掻きながら答えた。
やっと分かった。
兄は初めから、自分と悠灯を会わせたかったのだと。
兄の事件でずっと苦しんでいる二人を、もしかしたら救いたいと思っていたのかもしれない。
二人が兄にいつまでも囚われていたせいで、兄が安心して眠れていなかったと思うと、なんだか自分のどうしようもなさに呆れた。
とんだ遠回りをしてしまった。
しかし、最後に見た兄の表情は穏やかで、幸せそうだった。
それだけで、夜尋は救われたような気がした。
やっとここに来ることができた。
前はきっとここを訪れたら、本当に終わってしまうような気がして来れなかった。
小さな花束しか買えなかったが、これだけでも十分だろう。
『都築家墓』
そう書かれた墓石をまっすぐに見つめた。
お墓には到底似合わないとも思ったが、せっかく持ってきたのだからと花を花立に差す。
千尋に似合いそうな黄色い花が墓石を華やかにしている。
(辛気臭いのよりもきっとこっちの方が好きだよな)
ふっと笑う悠灯の瞳には、もう悲しみも苦しみもなかった。
幸せになることで千尋の幸せに繋がると今は信じられるから。
吸い込まれそうなほど青い空を見上げる。
待っていて。きっといつかあなたと一緒のところに逝くから。
あなたが願った通りに必ず幸せになるから。
それまであともう少しだけ待っていて。
いつか――――
いつか灰になるまで。
0
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる