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序章
1.哀れなる私の前世
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昔からこの世界には、転生者というものが当たり前に存在していた。
現在、世界人口の10分の1にも満たない確率で存在しており、希少な存在として認知されている。
転生者は2度目に限らず、3度目4度目という者も中にはいるらしい。そして、彼らは等しく普通の人々よりも優秀だった。
それはそうだ。以前の記憶を持っているということは、生きていく術を多少習得・理解しているということになるのだから。
そしてそれは、私も同じだった。
クオフォリア帝国。
それが私の前世が統治していた国。
その国の第1皇子として生まれ、次期皇帝として育てられた。
優しい両親と快活な弟と共に過ごしていた幼少期は本当に幸せだった。
しかし、22歳になるときに突然父が崩御してから自体は一変する。
元々前皇と折り合いの悪かった貴族たちは私の言うことなど全く聞かず、今まで自制してきた欲を発散するかのように民衆から奪えるだけの貢納を巻き上げた。
そうこうしているうちに、代替わりの混乱の隙に国を奪おうと隣国が攻めてきたことにより戦争が勃発した。
暴走する貴族、言うことを聞かない側近、混乱に託けて民衆を蹂躙する兵士たち……。
私の意志はまるで、口にした瞬間蒸気のように消えて誰にも届くことはなかった。
しかし、その暴虐の全ては私の責任となった。
貴族が民衆から全てを奪うのも。国がうまく廻らないのも。兵士たちが街を蹂躙するのも。
全て。全て。全て。
全て私が計画したのだという。
そんな皇帝に、民たちは呪い、正義感の強い貴族・騎士たちは反逆を企てた。
そして、私が齢26歳のとき。
彼らは革命を起こした。
夜襲をかけた皇宮には実際見張りなど殆どおらず、忍び込んで半刻も経たずに皇帝は捕らえられた。
恐らく見張りは既にそちら側の人間だったのだろう。
いつかこうなることはわかっていた。
だから、抵抗など一切しなかった。
私は彼らに拘束されると皇宮の地下にある牢獄に投獄された。
そこで知らされたのは、この反逆を実行しようと計画した首謀者は私の側近で幼馴染の騎士であるということだった。
彼は人一倍正義感が強い人だった。
恐らく私の今までの悪行がどうしても許せなかったのだろう。
親友だと思っていた人物に裏切られても、もうどうとも思わなくなっていた。
そのあと数日も経たず、私は公開処刑された。
多くの民衆が私に恨みの念と、これまでの悪行に対しての恨みつらみを叫んでいる声が木霊している。
斬首刑に処される時、私の首を切る役目を負ったのは幼馴染の騎士であった。
彼は恐ろしいまでの、憎悪の塊のような顔で私を見つめていた。
最後に見る親友の顔がこんなものだなんて、我ながら哀れだと他人事のように思ったものだ。
せめて、次に統治する者がこの国を愛し、正しく導いてくれますように――――――。
前世の私の最後の感情は、そんなものだった。
***
ざっくりいえばこれが私が思い出している限りでの、私の前世・クオフォリア帝国最後の皇帝リヴェリオ・ヴァン・オルフェリウスの一生だ。
なんという最悪な人生なのだろう。
周りの暴挙に振り回され、都合の悪い事はすべて皇帝の所為にされ。
挙句の果てに殺される。
前世の私がどのような性格だったのかは知らないが、今の私だったら絶対にこんな風になる前に、周りに当たり散らし国外でもどこでも逃げているところである。
(それが皇帝と言う者なのかしら?)
莫迦らしい。実に莫迦らしい人間だ。
私は絶対にこんな人間にはならない。
信じてもらえない悲しみも、裏切られる苦しみも、私は前世のおかげですべて知ってしまった。
だからこそ、今世では波風を立たてず平穏に暮らし幸せになる。
それが私、エスティ・ベルフェリト公爵令嬢の人生における目標である。
現在、世界人口の10分の1にも満たない確率で存在しており、希少な存在として認知されている。
転生者は2度目に限らず、3度目4度目という者も中にはいるらしい。そして、彼らは等しく普通の人々よりも優秀だった。
それはそうだ。以前の記憶を持っているということは、生きていく術を多少習得・理解しているということになるのだから。
そしてそれは、私も同じだった。
クオフォリア帝国。
それが私の前世が統治していた国。
その国の第1皇子として生まれ、次期皇帝として育てられた。
優しい両親と快活な弟と共に過ごしていた幼少期は本当に幸せだった。
しかし、22歳になるときに突然父が崩御してから自体は一変する。
元々前皇と折り合いの悪かった貴族たちは私の言うことなど全く聞かず、今まで自制してきた欲を発散するかのように民衆から奪えるだけの貢納を巻き上げた。
そうこうしているうちに、代替わりの混乱の隙に国を奪おうと隣国が攻めてきたことにより戦争が勃発した。
暴走する貴族、言うことを聞かない側近、混乱に託けて民衆を蹂躙する兵士たち……。
私の意志はまるで、口にした瞬間蒸気のように消えて誰にも届くことはなかった。
しかし、その暴虐の全ては私の責任となった。
貴族が民衆から全てを奪うのも。国がうまく廻らないのも。兵士たちが街を蹂躙するのも。
全て。全て。全て。
全て私が計画したのだという。
そんな皇帝に、民たちは呪い、正義感の強い貴族・騎士たちは反逆を企てた。
そして、私が齢26歳のとき。
彼らは革命を起こした。
夜襲をかけた皇宮には実際見張りなど殆どおらず、忍び込んで半刻も経たずに皇帝は捕らえられた。
恐らく見張りは既にそちら側の人間だったのだろう。
いつかこうなることはわかっていた。
だから、抵抗など一切しなかった。
私は彼らに拘束されると皇宮の地下にある牢獄に投獄された。
そこで知らされたのは、この反逆を実行しようと計画した首謀者は私の側近で幼馴染の騎士であるということだった。
彼は人一倍正義感が強い人だった。
恐らく私の今までの悪行がどうしても許せなかったのだろう。
親友だと思っていた人物に裏切られても、もうどうとも思わなくなっていた。
そのあと数日も経たず、私は公開処刑された。
多くの民衆が私に恨みの念と、これまでの悪行に対しての恨みつらみを叫んでいる声が木霊している。
斬首刑に処される時、私の首を切る役目を負ったのは幼馴染の騎士であった。
彼は恐ろしいまでの、憎悪の塊のような顔で私を見つめていた。
最後に見る親友の顔がこんなものだなんて、我ながら哀れだと他人事のように思ったものだ。
せめて、次に統治する者がこの国を愛し、正しく導いてくれますように――――――。
前世の私の最後の感情は、そんなものだった。
***
ざっくりいえばこれが私が思い出している限りでの、私の前世・クオフォリア帝国最後の皇帝リヴェリオ・ヴァン・オルフェリウスの一生だ。
なんという最悪な人生なのだろう。
周りの暴挙に振り回され、都合の悪い事はすべて皇帝の所為にされ。
挙句の果てに殺される。
前世の私がどのような性格だったのかは知らないが、今の私だったら絶対にこんな風になる前に、周りに当たり散らし国外でもどこでも逃げているところである。
(それが皇帝と言う者なのかしら?)
莫迦らしい。実に莫迦らしい人間だ。
私は絶対にこんな人間にはならない。
信じてもらえない悲しみも、裏切られる苦しみも、私は前世のおかげですべて知ってしまった。
だからこそ、今世では波風を立たてず平穏に暮らし幸せになる。
それが私、エスティ・ベルフェリト公爵令嬢の人生における目標である。
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