悪逆皇帝は来世で幸せになります!

CazuSa

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第4章

195.それが一番許せなかったの…

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ベッドに入り、シルビアと向き合うように横になった。
暗がりの部屋で少しだけ穏やかな表情のシルビアを見て、聞くなら今なのかもしれないと思った。

「答えたくないなら良いのだけど……。シルビアは、あの子たちに一体どんなことをされたの?」

それは、ずっと聞きたかったことだった。

シルビアがどんないじめを受けてきたのか。
そうして閉じこもってしまったのか。

なぜそんなにも追い詰められてしまったのか。

ずっと知りたかった。
どうしても聞き出さなければならなかった。

しかし、その欲望に気づかれてしまえばこの子はまた閉じこもってしまう。
そうなれば守れなくなってしまう。
それだけは避けなければならなかった。

今日聞き出せなくても時間はあるから焦る必要はないのだろう。
だが、早いに越したことはない。

それに、シルビアを一刻も早く解放させてあげたかった。

少し祈るような気持ちでシルビアの言葉を待った。

「お姉様は、私の事、嫌いにならない?」

シルビアが放った言葉は私の思っていたものとは大きく外れていた。
的外れな問いに、意図を測りかねて言葉に詰まる。

何も答えない私に不安になったのか、シルビアは続けた。

「お父様にね、言われたの。情けないって、それでもベルフェリト家の娘なのかって。すごく、残念そうに……」

それは、私にとっては日常茶飯事だけれどシルビアにとってはとてもショックな言葉だったのだろう。
目の端が僅かにぬれ始めているのに気づき、怒りが込み上げた。

結局、お父様はこの家の事しか考えていないのだ。
それは、貴族であれば普通の事だと分かっている。
しかし、そのためにまだ幼いこの子を傷つけてしまうのが、どうしても許せなかった。

「私はシルビアを嫌いにならないわ。言ったでしょう? 貴方は私の妹だもの」

「それは義務だから?」

薄暗い部屋の中でも不安そうなシルビアの顔がはっきりと見えた。
いつの間にか、この子に言われた悪意も何もかもどうでもよくなっていた。

「いいえ」

私はシルビアの不安をちゃんと拭えるように、彼女の体に手を添えると優しく答えた。

「貴方が深く、傷ついているのがわかるからよ」

ただ、シルビアに笑っていてほしい。
もう苦しい思いをしてほしくない。

……これは私の感情なのだろうか。

「やっぱり……。お姉さまはすごく優しい。誰よりも、ずっと」

そんな。
そんな事、初めて言われた。

シルビアの瞳には涙がきらめいている。
それは息を飲むほどきれいだった。

でも、それ以上に。
シルビアがくれた言葉の方が、私にはもっと美しいもののように思えた。

「入学してからずっと、シャルロット様に嫌なことをされたわ」

それからシルビアは、いじめについて話してくれた。

教科書やノートに罵詈雑言を書かれたり、私物を隠されたり汚されたり。
始めのうちはそんなものが主だったため、我慢できたそうだ。

しかし、1カ月もするとシルビアが相手にしていないことに彼女たちも気づいたらしい。

それからはいじめがエスカレートしていった。
こそこそするような事もなくなり、いじめが表面化してきたのだ。
そう以前私が見かけたような、魔法を使って暴力を振るわれるような事もしょっちゅうだったらしい。

だが、それに手を差し伸べる相手はいなかった。

「だって相手はシャルロット様よ。誰もあの子には逆らえないもの」

「……」

私もシャルロットには嫌味を言われてきた。
しかしそれは言葉だけで、行動には移されていなかった。

だから可愛らしいもの程度で収まっていたのだ。

まさかここまで非情な人間だったとは、思いもしなかった。

彼女はこのオルタリア王国の第一王女なのに。

こんな平和な国の王女が、そんな非道な行いをするなんて考えられないじゃない。

沸々と怒りが沸き起こる。
しかし、それが筋違いな事であることは自分が一番よく分かっていた。

だってもう私は、”そちら側”の人間なのだから。

シルビアをいじめる行為を聞き出したのは、セイラへのいじめの参考になるのではと考えたからだ。

これだけでもどうしようもない悪党に成り下がっている。
それなのに、どうして彼女の事を怒ることができるだろうか。

そんなの身勝手だ。

「私、ずっと辛かった。嫌な事も、苦しい事もいっぱいされた。どうして私がこんな目に遭わなければいけないのかって、いつも思ってた」

可哀そうなシルビア。
1人で全てを抱えて。

そして、いつしかその重荷に耐えられなくなってしまった。

そうして、立ち上がれなくなってしまったのだ。

こんなに追い詰めるまで、私はセイラをいじめなければならないのだろうか。
それに耐えられるほど、私は強い人間になれるだろうか。

非情な人間に、なれるだろうか。

「でも、それよりなにより――」

それ以上に何か酷い事をされたのか。
そう思うと、まるで自分が追い詰められているような感覚がして胸のあたりが痛んだ。


「お姉さまの悪口を言われるのが、一番嫌だったの……」


頬に何か暖かいものが流れた。
その意味が私にはわからなかった。

どうしてこの子はそこまで私を好きでいてくれたんだろう。
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