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第4章
196.守る覚悟
シルビアは両親に私の悪口を吹き込まれていたはずだ。
だからあの林で会った時、あんなに私を冷たくあしらった。
でもシルビアは、私の悪口を言われて辛かったと言った。
じゃあ、あの時も本当は私を思っていてくれたの?
嫌いではなかったの?
そう思うと涙が溢れて止まらない。
でも、それがどうして流れてしまうのかはわからない。
ただ、嬉しいから流れているのではないという事だけは分かった。
「私、お父様に言われたの。お姉さまは私たちの事をなんとも思っていない、いつも私たちを不幸にすることを考えている悪党みたいな人なんだって。私、そうは思えなかった。でも、お父様は私に嘘をつくはずないって思って。私どうすれば良いのかわからなくて……。でも、あの子たちにお姉さまの悪口を言われたとき、私に言われるよりずっと、嫌だった。苦しくてすごく辛かった。多分、あの時初めて、シャルロット様を憎んだ」
憎しみなんて、シルビアには似合わない。
綺麗なこの子を汚してしまう人がいることに、世界の残酷さを見せつけられているような気分になった。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい、お姉さま。私、お姉さまの事ずっとずっと大好きなのに。あんなに酷い言葉ばかりかけてしまって……」
シルビアが泣くのは、きっと自分じゃなくて私の為だ。
この子が愛おしくて仕方なかった。
「いいの、いいのよ。シルビアはさっきも今も謝ってくれたでしょう? だからもう十分よ」
シルビアの頭を優しく撫でる。
それだけで、この子は笑ってくれた。
こんなにも可愛らしく綺麗なこの子がこれ以上悪意に晒されないように。
苦しまないように。
せめて私だけは、この子の悲しみにならないように。
「ありがとうシルビア」
優しい声でこの子に囁く。
「私を好きでいてくれて」
いつかこの子とも別れる時が来る。
その時、この子が少しでも私を嫌悪してくれるように。
私はこの子がされたことを、利用しなければならない。
思えば私は、誰かを大切に思えば思うほどその人との別れの日を夢見ているような気がする。
***
守るものがあると人は強くなると誰かが言っていたけれど。
本当にそうなのだと思う。
シルビアを守ると決めてから、私は手段を選ぶことをやめた。
セイラを傷つけることもナタリーに嫌われることもきっともう躊躇わない。
しかし、それと時を選ぶ事とは違う。
今はまだ、誰かに疑われるわけにはいかなかった。
布石がまだ十分でない時点で計画が進んでしまえば、どこかで綻びが生まれてしまう。
それだけは避けなければならない。
ナタリーに関しては手遅れなのは分かっているけど、疑いをこれ以上深めないようにしなければ。
だってこの計画は誰かを傷つけるためのもの。
意味もなくそんなことをしてしまうのは、絶対に駄目な事だ。
……そう思っている間は、まだ吹っ切れていないのかもしれないけれど。
その準備のため昼休みになると、用事があると言いいつもの昼食会には参加しなかった。
Bクラスに赴きいじめっ子3人令嬢の1人、ミクリ・ロイネル子爵令嬢を呼び出すと人気のない場所へと移動する。
呼び出されてから此の方、ずっとビクビクとされているのが気になったが気にしないでおいた。
だって聞き出したら私、ショック受けるような気がするんだもん。
「あ、あの……。ベルフェリト様、私に一体何の御用で……」
か細い声で問いかける彼女を見ていると、とても共謀していじめを行っているとは思えない。
これじゃあ私が彼女をいじめているみたいね。
まぁ、それは置いといて。
「ロイネルさんにお願いがあるの。これに書いてある事をしてくれないかしら」
そういって一片の紙切れを渡す。
そこにはセイラへのいじめの指示が書かれている。
彼女はそれをまじまじとみて、どういったものなのかを理解するとパッとこちらに顔を向けた。
「えっ? で、でもそれなら他の方々もお呼びすれば良かったのでは……」
困惑気味に言う彼女の言う事は一理あることだ。
しかし、それでは私の行動が目立ってしまう。
「馬鹿ね貴方。他の子まで揃えて呼び出したら、何かあるって周りに気づかれるかもしれないじゃない。少しは頭使いなさいよ」
必要以上に彼女に辛辣な言葉を投げる。
こうして少しづつ綻びを生じさせればうまくいくだろう。
「とにかく、あの子たちと一緒にそれをしておいてね」
そういうと彼女の脇を通りすぎた。
「えっ! あ、あの、ベルフェリト様は?!」
当然の問いかけに私は少しだけ振り返って答える。
「私が直接手を下すなんてそんな事すると思っているの? 私は公爵令嬢なのよ。汚れ仕事は貴方たちの担当でしょ」
「そんなっ!」
彼女が大声で反論しようとしたが、拒絶するように顔を背けた。
コツコツと鳴る足音が廊下に響く。
と、そこで言い忘れていたことを思い出して足を止める。
振り返ると、そこには疑いの目を向けた彼女がそこに立っていた。
私が立ち止まったことに違和感を覚えたのか、さらに顔を歪める。
「それとその紙。捨てずにとっておきなさい」
それだけ言うと、もう振り返ることもなくその場を後にした。
あの紙は重要な手がかりとなる。
この計画にとって、とても重要な手がかりに。
だからあの林で会った時、あんなに私を冷たくあしらった。
でもシルビアは、私の悪口を言われて辛かったと言った。
じゃあ、あの時も本当は私を思っていてくれたの?
嫌いではなかったの?
そう思うと涙が溢れて止まらない。
でも、それがどうして流れてしまうのかはわからない。
ただ、嬉しいから流れているのではないという事だけは分かった。
「私、お父様に言われたの。お姉さまは私たちの事をなんとも思っていない、いつも私たちを不幸にすることを考えている悪党みたいな人なんだって。私、そうは思えなかった。でも、お父様は私に嘘をつくはずないって思って。私どうすれば良いのかわからなくて……。でも、あの子たちにお姉さまの悪口を言われたとき、私に言われるよりずっと、嫌だった。苦しくてすごく辛かった。多分、あの時初めて、シャルロット様を憎んだ」
憎しみなんて、シルビアには似合わない。
綺麗なこの子を汚してしまう人がいることに、世界の残酷さを見せつけられているような気分になった。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい、お姉さま。私、お姉さまの事ずっとずっと大好きなのに。あんなに酷い言葉ばかりかけてしまって……」
シルビアが泣くのは、きっと自分じゃなくて私の為だ。
この子が愛おしくて仕方なかった。
「いいの、いいのよ。シルビアはさっきも今も謝ってくれたでしょう? だからもう十分よ」
シルビアの頭を優しく撫でる。
それだけで、この子は笑ってくれた。
こんなにも可愛らしく綺麗なこの子がこれ以上悪意に晒されないように。
苦しまないように。
せめて私だけは、この子の悲しみにならないように。
「ありがとうシルビア」
優しい声でこの子に囁く。
「私を好きでいてくれて」
いつかこの子とも別れる時が来る。
その時、この子が少しでも私を嫌悪してくれるように。
私はこの子がされたことを、利用しなければならない。
思えば私は、誰かを大切に思えば思うほどその人との別れの日を夢見ているような気がする。
***
守るものがあると人は強くなると誰かが言っていたけれど。
本当にそうなのだと思う。
シルビアを守ると決めてから、私は手段を選ぶことをやめた。
セイラを傷つけることもナタリーに嫌われることもきっともう躊躇わない。
しかし、それと時を選ぶ事とは違う。
今はまだ、誰かに疑われるわけにはいかなかった。
布石がまだ十分でない時点で計画が進んでしまえば、どこかで綻びが生まれてしまう。
それだけは避けなければならない。
ナタリーに関しては手遅れなのは分かっているけど、疑いをこれ以上深めないようにしなければ。
だってこの計画は誰かを傷つけるためのもの。
意味もなくそんなことをしてしまうのは、絶対に駄目な事だ。
……そう思っている間は、まだ吹っ切れていないのかもしれないけれど。
その準備のため昼休みになると、用事があると言いいつもの昼食会には参加しなかった。
Bクラスに赴きいじめっ子3人令嬢の1人、ミクリ・ロイネル子爵令嬢を呼び出すと人気のない場所へと移動する。
呼び出されてから此の方、ずっとビクビクとされているのが気になったが気にしないでおいた。
だって聞き出したら私、ショック受けるような気がするんだもん。
「あ、あの……。ベルフェリト様、私に一体何の御用で……」
か細い声で問いかける彼女を見ていると、とても共謀していじめを行っているとは思えない。
これじゃあ私が彼女をいじめているみたいね。
まぁ、それは置いといて。
「ロイネルさんにお願いがあるの。これに書いてある事をしてくれないかしら」
そういって一片の紙切れを渡す。
そこにはセイラへのいじめの指示が書かれている。
彼女はそれをまじまじとみて、どういったものなのかを理解するとパッとこちらに顔を向けた。
「えっ? で、でもそれなら他の方々もお呼びすれば良かったのでは……」
困惑気味に言う彼女の言う事は一理あることだ。
しかし、それでは私の行動が目立ってしまう。
「馬鹿ね貴方。他の子まで揃えて呼び出したら、何かあるって周りに気づかれるかもしれないじゃない。少しは頭使いなさいよ」
必要以上に彼女に辛辣な言葉を投げる。
こうして少しづつ綻びを生じさせればうまくいくだろう。
「とにかく、あの子たちと一緒にそれをしておいてね」
そういうと彼女の脇を通りすぎた。
「えっ! あ、あの、ベルフェリト様は?!」
当然の問いかけに私は少しだけ振り返って答える。
「私が直接手を下すなんてそんな事すると思っているの? 私は公爵令嬢なのよ。汚れ仕事は貴方たちの担当でしょ」
「そんなっ!」
彼女が大声で反論しようとしたが、拒絶するように顔を背けた。
コツコツと鳴る足音が廊下に響く。
と、そこで言い忘れていたことを思い出して足を止める。
振り返ると、そこには疑いの目を向けた彼女がそこに立っていた。
私が立ち止まったことに違和感を覚えたのか、さらに顔を歪める。
「それとその紙。捨てずにとっておきなさい」
それだけ言うと、もう振り返ることもなくその場を後にした。
あの紙は重要な手がかりとなる。
この計画にとって、とても重要な手がかりに。
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