転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ

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2章 幼少期編 II

6.お花畑

 
今日も離宮でおやつを食べた後、私は音楽堂へ直行した。

歌の練習のためだ。
私は音痴を直したい。

音痴克服バケツ法には、マガルタル楽士が根気よく付き合ってくれている。
本当に効果があるのか興味もあるのだろう。
最初は吹き出していたけど、心の広いお姫さまは気づかないふりをしてあげるよ。今も苦しそうに笑いをこらえている他の楽師たちもね。
ふん。音痴が治ったらみてなさいよ。絶対ぎゃふんと言わせてやる。


「シュシュ~、頑張ってるか~い?」

ようやく忙しさから解放されたらしいルベール兄さまがやって来た。

「お~そらのくもは、ど~こへゆく~、か~ぜがつよいと、は~やいなぁ♪」

ルベール兄さまのペイアーノの伴奏で『元気な雲さん』を歌っている。

最終確認だ。
ルベール兄さまのOKが出たら、音痴は脱出したことにする。そう決めた。

兄の素敵な笑顔を頂きました! OKってことよね。ねっ、マガルタル楽士。
『発声練習は毎日行いましょう』は答えになってないですよ。ねぇったら。


「でも……踊れないから、歌っても楽しいのは半分だけなのです」

体がムズムズして仕方がないのだ。

「シュシュが歌を作って、振り付けも考えたらいいよ。兄上に見直してもらおう」

歌って踊って雷を落とされたのバレて~ら。

「……歌。うた、うた~、うった~、うた~、たぁ」

……うん。これは歌じゃないね。

「どうしたの? いつも歌ってるみたいなのでいいんだよ。あ、イティゴ姫みたいのはやめておこうね」

イティゴ姫?……そんなの歌ったっけ?

「あ~、無意識だったか。じゃぁ……」


何か考えてくれているようなので、待ちます。


「……窓の外には何が見えるかな?」
「……お花」
「何色かな?」
「赤と黄色」
「つぼみかな?」

はっっっ!

「咲いています……あ~かい お~はなが さきました~♪」

手の平を小さく開いて花を表現してみた。

ルベール兄さまはニッコリ笑った。
マガルタル楽士はウンウン頷いた。

♪~♪♪ ♪~♪♪♪ ♪♪♪♪♪~

自分の練習をしていた楽士が、私が歌った節を奏でてくれた。

「き~いろい お~はなも さきました~♪」

両手を大きく開いた。
先を促され、ペイアーノの合の手が入る。

「あ~おい お~はなは どこにあるぅ~♪」

額に手をかざして探すふり。

「お~さんぽ しながら さがしましょ~♪」

腰に手を当ててスキップ。

「ランランラ~ン、ランランラ~ン、ラララララ~ン♪」

回転しながらスキップ スキップ。


スキップ スキップ スキップ……

スキップ スキップ スキップ……


家族の憩いの時間ファミリータイムにお披露目した。

拍手喝采だ。

お父さまは『うちの子は天才だ!』と親馬鹿を炸裂させた。
お母さまは感動して涙ぐんでいる。
アルベール兄さまからは『まぁ、いいだろう』を頂いた。
ルベール兄さまは縦琴ギターでの伴奏係。
ベール兄さまは予想通りの爆笑。
ルーちゃんはゆりかごでネンネだ。

特別ゲストのシブメンは、新作のお菓子に視線が行っている(聞けよ)

なぜシブメンがいるのかというと、家族立ち合いのもとで私の鑑定をするためだ。
媒体というスキルを持っているかどうか……なんか、妄想している様子がということらしい。

ルベール兄さまも持っているという媒体。
外付けハードディスクのような、ソフトウエアのような、持っていると便利そうな媒体。

欲しいな。持ってたらいいな。ルン♪


「媒体は……ありますな」


あったーーーっ! やったーーーっ!


「しかし、媒体と繋がる条件が快楽だけというのは、残念なことです」


あれ? 残念って、言われちゃった? 


「残念ですなぁ」


もう一回言われちゃった。


「ゼルドラ、使い道のない媒体など可愛そうではないか。前世の記憶はよく覚えているだろう? 因果関係はどうなっているのだ? 何かあるだろう?」

お父さま~♡

「人間を深く鑑定するのは好きではありません。不快な時もあるのです」

シブメン、そこをなんとか!

「他にもあるかもしれませんよ? 全部視てください。ね?」
「普通は視られることを嫌がるものですが」
「わたくしに隠し事はありません!(キリッ)」
「存じていますが、お断りします」
「お願いしますぅぅぅ。わたくしだけお馬鹿さんなのは嫌なのです~、ねぇぇ~」

アルベール兄さまは、婚約者にヘタレな以外は完璧なお方。
ルベール兄さまは、視野の広さと思慮深さが媒体にあったと判明=天才。
ベール兄さまは、聞いたことは忘れないたちだと私は知っている。
ルーちゃんは、お祖母さまの賢さを受け継いでいるに違いありません。

お願いを聞いてくれないと足にしがみつきます。あ、気づかれた。足を組んだって諦めませんよ。くっ、アルベール兄さまにも気づかれた。睨まれているけど今回は譲れません。私の一生がかかっているのです。さぁ、シブメン、勝負です!

「……血縁者になら、媒体と同調させることは出来ますが」

簡単に打開策が出てきた。

「よし、やってくれ。良いなシュシューア?」

シブメンは小さく頷いた。
私は大きく頷いた。



「…………」



どうしました? みんなスタンバイできていますよ。早く同調とやらをやってください。



「……あ、そうか。シュシュ、おいで」

ルベール兄さまがお膝をポンポンした。わ~い。

「あぁ、快楽が必要だったな……茶を配ってくれ」

お父さまは、部屋侍女にお茶の用意を指示する。

本日のお茶請けはシブメンも狙っていた『チーズテリーヌケーキ』です。
ルベール兄さまの好きなドライフルーツをたっぷり入れた、白くて可愛いケーキなのです。

「万物に感謝を」

感謝を~っ!

……………………………………………………
ドライフルーツのチーズテリーヌの作り方
①白ワイン+粉ゼラチンを湯煎で溶かし込む。
②クリームチーズを湯煎で柔らかくする。
③ドライフルーツとナッツを細かく刻む。
④全部と蜂蜜を混ぜて、冷やして完成です。
……………………………………………………

白いチーズテリーヌの中に閉じ込められたカラフルなドライフルーツの宝石。
めちゃくちゃお洒落! 贈り物に最適! お茶会で出した最初の人は時の人になること間違いなし!

今日がお初のクリームチーズは、モッツレラをクリーム状になるまでミキサーにかければ出来上がります。
濃厚さを求めるなら、モッツレラを作る過程で生クリームやヨーグルトを加えましょう。これはワインのお供としてもおすすめですよ。

「お前は乳の加工品が本っ当に好きだな」
「えへへ~」
「褒めていない」

アルベール兄さまが面白くなさそうに舌鼓を打つ。
美味しいのでしょう? 美味しいですよねぇ? 顔でバレていますよ。黄ヤギが足らないなんて言ってられませんよね。

「僕のために作ってくれたんだよね~」
「はい。干し果物のお菓子は、すべてルベール兄さまのためのものです。わたくしの愛情がたっぷり詰まっているのです(作ったのはチギラ料理人ですが)あ~ん」
「あ~ん」
「美味しいですか?」
「美味しいよ~、プニプニ~」
「シュシュですよぅ」
「シュシュも、あ~ん」
「あ~ん」

うふふふ、あははは……


ほわわ~ん……


お花がいっぱ~い、ひらひら~ん、らんら~ん♪





「なるほど……」

お父さまの声?

「シュシューア、こちらにいらっしゃい」

お母さま?

「この蝶……シュシューアか?」

アルベール兄さま。

「お花畑かぁ、シュシュらしいなぁ」

ルベール兄さま。

「蝶なのに歌ってる。気持ち悪いぞ」

ベール兄さま。

「すぅすぅ」

ルーちゃんはお眠です。


ひらひら~、ららら~……


私の家族は~、私のお花畑で~、お話し合いを~、していますぅ♪

そうか、あれが、これが、それは……




「………………………………………………………わかった。もう良い、ゼルドラ」




お父さまの声でハッとする。

同調が解けたの?



皆の顔を見る。
みんなも私を見ている。
ぬるい表情が揃っていた。



……あぁ、そんな目で見ないでくださいませ。

ううぅ……私だけお馬鹿なのぅ?……う~、えぐぅ。



「ばっ、媒体で歌っているなら、歌で記録するとか暗記するとかできそうじゃない?」

苦しそうに言うルベール兄さま。

「つながる条件が快楽なら、歌に酔いしれる必要があるだろう」

アルベール兄さまの無情な分析。

「気持ち悪いから人前でやるなよ、シュシュ」

ベール兄さま、出来そうもないと思っていますね?

「暗記項目を歌にするのは、通常人でもやっていますな」

またシブメンは~、挫けるようなことを~。


「お父さ……」

お父さま、お母さま……微笑みが優しすぎるぅぅぅ(涙)




おつむが弱い転生者なんてカッコわるすぎるよ。
チート来い、チートよ来い!

……あぁ、別の話題に飛んじゃった。トホホ……

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