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第二章 旅の始まり
俺の知らない親心
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その後は子供が女に抱きつき泣きじゃくり親から事の顛末を聞かされた。
「先日あの男が来て、足を悪くしている私を人質に、母を助けたかったら、旅人を連れてこいとこの子に…。」
「ごめんなさい…」
子供は泣きながら謝り、母も頭を下げる。
まぁそんな感じはしていた。
最初から俺達に声をかけてくる時点でおかしいからだ。
「なるほど…とても辛く大変だったと思います。よく頑張ったね。」
そう言って子供の頭を撫でる。
こんな子供でも辛く苦しい思いをするのが、今のこの国なのだ。
「旦那さんは?」
「旦那はいません…。流行病で亡くしました。」
「それはお気の毒に…。」
母親の足は纏足と呼ばれる足をしていて、足が小さい女ほど美しいと言う風潮で。
幼少期から足に布を巻き強制的に成長を阻害するというものであった。
あれでは、ろくに動く事もできまい…。
「呼ばれたのが、私達で良かったです。もし他の方だったら本当に男の言った通りになっていたと思いますから…。」
そうシュエメイが言う。
「あの…お礼と言ってはなんですが、うちの家には食物が沢山あります。どうか少しでも食べてってください。」
「え!いいんですか!それじゃお言葉に甘えて!」
一気に明るくなるシュエメイ。
戦っている時はあれだけ冷酷な目をしているのに、すっかり普段通りの年相応な少女に戻っている。
「シャオラン、泣いてないでこの方々達に最高のもてなしをしてあげて。」
「わかりました!」
シャオランと呼ばれたその子供はテキパキと手際よく調理をしていく。
「おねーさんも手伝ってあげよう!」
そう言ってシュエメイも調理場へと立つ。
残された俺に母親が尋ねてくる。
「妹さんですか?とてもお強いんですね。」
「いえ、成り行きで一緒に旅をしている者です。」
「まぁ!それはいいですね…。旅っていいものですよね、きっと。」
そう言って母親は自分の足を物憂げな顔をして撫でる。
「あの方の動き1度見た事ある気がするんです。私の実家の方で。」
「実家と言いますと?」
「広東が実家なんです。まぁそこそこの豪族です。そこで行われた演武で同じ動きを見た事ある気がします。」
「なるほど…同じ流派とかなんですかね…。」
「武術の事はあまり明るくなく分からないですね…。そんな事より旅人さん。一個頼みがあるんですが、宜しいですか?」
「と、言いますと?」
「私は見ての通り旅もできませんし、日常生活もままなりません。旦那が逝ってしまった後は、あの子が私の世話をしてくれています…。」
「ですが、今回を機に私は実家に帰ろうと思うのです。でも、あの子は連れて行けない。私と同じ運命を辿って欲しくないから。」
「なるほど…。」
「だからですね、旅人さんあの子をシャオランを旅に加えてあげてくれませんか?」
「なんでそうなるんですか!?」
「あのお方は強いし、あなたは洞察力もあるとお見受けしました。この後のあの子の人生を私の介護に費やしたくはないんです。」
「なるほど…。」
母親は実家に帰ると自分の娘まで自分と同じく不自由な体にさせてしまう。
しかし、このままここにいても埒が明かない。
そう思って毎日を過ごしていたらしかった。
「一回後でシュエメイに聞いてみます。」
「本当ですか!?ありがとうございます。」
そんな会話をしていると目の前に大量の食事が運ばれてきた。
「出来ました!お食べ下さい!」
色鮮やかな海鮮物や、青々とした野菜で出来ているそれは今まで自分とは縁遠いと思っていたご馳走であった。
が、しかし、その端に真っ黒焦げの何かがあった。
なんだこれは…炭…?
「こっちの黒いのは…シュエメイさんが作ったやつです…。」
「えっと~…ごめんね…。」
どうやらシュエメイは相当に料理が下手なようだった。
「まぁまぁ気にせずに…存分に頂いてください!」
そう母親が言い皆で食卓を囲んだ。
孤児院以来の皆で食べる食事はとても美味しくとても幸せだった。
その後夜になり母親はシャオランと俺は外でシュエメイと件のことについて話すことになった。
相手の事情と、頼まれた事を話した。
少し思案した後シュエメイは快く
「いいよ!旅は人数が多い方がいいしね!それに私妹欲しかったし!」
と二つ返事で返してくれた。一方中では泣きじゃくる子供の声が聞こえた。
「いやだ!お母さんと離れたくない!」
「お願いシャオラン言うことを聞いて。」
母親は真っ直ぐな瞳でシャオランを見つめる。
「だって、お母さん私がいないと…。」
「シャオラン?お母さんの事は心配しないで。お母さんは大丈夫だから。」
「でも…!」
「でもじゃないの、シャオラン。毎月文を送るから。」
「私はねシャオラン。自由に生きて欲しいの。お母さんからのおねがい。聞いて欲しい。」
「……」
そう言うと母親はしっかりとシャオランを抱きしめ頭を撫でた。
少しばかり母親という存在を羨ましく感じていた。
シュエメイは横でうるうると泣いていた。
その後母親は実家に文を出し、二泊ほど泊まった後に迎えが来た。
「お迎えに参りました。ファリン様。」
「うん。ありがとう。ちょっと待って。」
迎えの者にそう言い母親はシャオランを呼んだ。
「私の可愛い子。あなたは色んな事を経験するでしょう。私は一緒には行けないけど。あなたからの文をとても楽しみにしています。だからどうか、泣かないで、強く、逞しく生きて。」
「はい…はい…!お母さん…!」
シャオランは目に涙を浮かべながら、泣かぬまいとしていた。
「ハルさん、シュエメイさん。シャオランをよろしく頼みますね。お願いします。」
そう言い残しシャオランを強く抱き締め母親は馬車に乗せられ実家へと向かっていく。
「私…!私ちゃんと強くしっかり、生きるから…!ちゃんと頑張るから!」
そう馬車に向かってシャオランは叫んだ。
母親の馬車が見えなくなってもシャオランは泣かなかった。
少し立ったあと自分の頬を叩き居直って俺達にぺこりと頭を下げると
「行きましょう、お二方。母の文が届く前に次の街へと!」
シュエメイと俺は顔を合わせ笑い
三人の旅が進んでいく。
「先日あの男が来て、足を悪くしている私を人質に、母を助けたかったら、旅人を連れてこいとこの子に…。」
「ごめんなさい…」
子供は泣きながら謝り、母も頭を下げる。
まぁそんな感じはしていた。
最初から俺達に声をかけてくる時点でおかしいからだ。
「なるほど…とても辛く大変だったと思います。よく頑張ったね。」
そう言って子供の頭を撫でる。
こんな子供でも辛く苦しい思いをするのが、今のこの国なのだ。
「旦那さんは?」
「旦那はいません…。流行病で亡くしました。」
「それはお気の毒に…。」
母親の足は纏足と呼ばれる足をしていて、足が小さい女ほど美しいと言う風潮で。
幼少期から足に布を巻き強制的に成長を阻害するというものであった。
あれでは、ろくに動く事もできまい…。
「呼ばれたのが、私達で良かったです。もし他の方だったら本当に男の言った通りになっていたと思いますから…。」
そうシュエメイが言う。
「あの…お礼と言ってはなんですが、うちの家には食物が沢山あります。どうか少しでも食べてってください。」
「え!いいんですか!それじゃお言葉に甘えて!」
一気に明るくなるシュエメイ。
戦っている時はあれだけ冷酷な目をしているのに、すっかり普段通りの年相応な少女に戻っている。
「シャオラン、泣いてないでこの方々達に最高のもてなしをしてあげて。」
「わかりました!」
シャオランと呼ばれたその子供はテキパキと手際よく調理をしていく。
「おねーさんも手伝ってあげよう!」
そう言ってシュエメイも調理場へと立つ。
残された俺に母親が尋ねてくる。
「妹さんですか?とてもお強いんですね。」
「いえ、成り行きで一緒に旅をしている者です。」
「まぁ!それはいいですね…。旅っていいものですよね、きっと。」
そう言って母親は自分の足を物憂げな顔をして撫でる。
「あの方の動き1度見た事ある気がするんです。私の実家の方で。」
「実家と言いますと?」
「広東が実家なんです。まぁそこそこの豪族です。そこで行われた演武で同じ動きを見た事ある気がします。」
「なるほど…同じ流派とかなんですかね…。」
「武術の事はあまり明るくなく分からないですね…。そんな事より旅人さん。一個頼みがあるんですが、宜しいですか?」
「と、言いますと?」
「私は見ての通り旅もできませんし、日常生活もままなりません。旦那が逝ってしまった後は、あの子が私の世話をしてくれています…。」
「ですが、今回を機に私は実家に帰ろうと思うのです。でも、あの子は連れて行けない。私と同じ運命を辿って欲しくないから。」
「なるほど…。」
「だからですね、旅人さんあの子をシャオランを旅に加えてあげてくれませんか?」
「なんでそうなるんですか!?」
「あのお方は強いし、あなたは洞察力もあるとお見受けしました。この後のあの子の人生を私の介護に費やしたくはないんです。」
「なるほど…。」
母親は実家に帰ると自分の娘まで自分と同じく不自由な体にさせてしまう。
しかし、このままここにいても埒が明かない。
そう思って毎日を過ごしていたらしかった。
「一回後でシュエメイに聞いてみます。」
「本当ですか!?ありがとうございます。」
そんな会話をしていると目の前に大量の食事が運ばれてきた。
「出来ました!お食べ下さい!」
色鮮やかな海鮮物や、青々とした野菜で出来ているそれは今まで自分とは縁遠いと思っていたご馳走であった。
が、しかし、その端に真っ黒焦げの何かがあった。
なんだこれは…炭…?
「こっちの黒いのは…シュエメイさんが作ったやつです…。」
「えっと~…ごめんね…。」
どうやらシュエメイは相当に料理が下手なようだった。
「まぁまぁ気にせずに…存分に頂いてください!」
そう母親が言い皆で食卓を囲んだ。
孤児院以来の皆で食べる食事はとても美味しくとても幸せだった。
その後夜になり母親はシャオランと俺は外でシュエメイと件のことについて話すことになった。
相手の事情と、頼まれた事を話した。
少し思案した後シュエメイは快く
「いいよ!旅は人数が多い方がいいしね!それに私妹欲しかったし!」
と二つ返事で返してくれた。一方中では泣きじゃくる子供の声が聞こえた。
「いやだ!お母さんと離れたくない!」
「お願いシャオラン言うことを聞いて。」
母親は真っ直ぐな瞳でシャオランを見つめる。
「だって、お母さん私がいないと…。」
「シャオラン?お母さんの事は心配しないで。お母さんは大丈夫だから。」
「でも…!」
「でもじゃないの、シャオラン。毎月文を送るから。」
「私はねシャオラン。自由に生きて欲しいの。お母さんからのおねがい。聞いて欲しい。」
「……」
そう言うと母親はしっかりとシャオランを抱きしめ頭を撫でた。
少しばかり母親という存在を羨ましく感じていた。
シュエメイは横でうるうると泣いていた。
その後母親は実家に文を出し、二泊ほど泊まった後に迎えが来た。
「お迎えに参りました。ファリン様。」
「うん。ありがとう。ちょっと待って。」
迎えの者にそう言い母親はシャオランを呼んだ。
「私の可愛い子。あなたは色んな事を経験するでしょう。私は一緒には行けないけど。あなたからの文をとても楽しみにしています。だからどうか、泣かないで、強く、逞しく生きて。」
「はい…はい…!お母さん…!」
シャオランは目に涙を浮かべながら、泣かぬまいとしていた。
「ハルさん、シュエメイさん。シャオランをよろしく頼みますね。お願いします。」
そう言い残しシャオランを強く抱き締め母親は馬車に乗せられ実家へと向かっていく。
「私…!私ちゃんと強くしっかり、生きるから…!ちゃんと頑張るから!」
そう馬車に向かってシャオランは叫んだ。
母親の馬車が見えなくなってもシャオランは泣かなかった。
少し立ったあと自分の頬を叩き居直って俺達にぺこりと頭を下げると
「行きましょう、お二方。母の文が届く前に次の街へと!」
シュエメイと俺は顔を合わせ笑い
三人の旅が進んでいく。
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