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第7話 洗礼式のあと
しおりを挟む教会から家に戻ると、今度は教会の伯父上がこちらにいらした。
かなり慌ただしくいらして、着くやいなや、すぐに父上の部屋に入ってしまった。
さっきまで会っていた伯父上が、わざわざこちらにいらっしゃったのだ、何かあるに違いなかった。けれど、今日は大人だけで話があると言われ、私は父上の仕事部屋から締め出されてしまった。かくれんぼもなし。
これも成長なのか、こういう時、イライラする。
私は、自室に引きこもった。
前世の記憶がある分、中身は結構な年齢だと自分では思うけれど、所詮、見た目は5才児。何が起きたのか、誰からも何も教えてもらえない。
教えてもらえないから正解がわからない。わからないけれど、私が真名を授けられたことが良くなかったのだろうと感じていた。多分、そのせいで父上、伯父上が慌てているのだと思う。
けれど、実際のところはわからない。
これは何度も言うけれど、実際のところを私はわかっていない。
母上が教会で声を裏返らせた理由も、伯父上が我が家にいらした理由も、何もわからない。
ううん、何もわからないだけじゃない。
私は、この家から出たのも今日が初めてで、外の世界で知っているのは、今日行った教会と教会までの道のりだけ。それ以外、私はこの世界のことを何も知っていない。
5才児の私の世界は、いまのところ、この家だけだ。
いっそ、前世の記憶があると言ってしまおうか?
持っている知識は、子供のソレではないから、何を言われても一緒に考えることができると。。。
うーん、いや、やはり前世の記憶を持っていることを話すのはダメだ。
私にとっては都合が良いが、それでは、父上と母上から子供を取り上げてしまうようなものだ。普通の家庭を考えてみればわかる。誰が、自分の子供に大人並みの知識を求める? 子供時代は、子供らしいのが良いに決まっている。
この部屋を見たってそうだ。
沢山のぬいぐるみ、ワンピース、フリル付いたカーテン、どこにも大人が好むような家具や装飾なんてない、ザ・子供部屋!だ。
自室のベッドに寝転がり、枕に顔を押し当てて叫ぶ。
ザ・5才児!
ザ・5才児!
ザ・5才児!
どうあがいても、今の私は、ザ・5才児!で、この部屋も、ザ・子供部屋!なのだ。
そもそも、父上、母上がいけないのではない。
自分の部屋から父上の部屋を見るほどの監視魔法を展開することが出来ない自分がいけないのだ。いくら知識はあっても、5才児の身では距離が離れている部屋を覗くほどの魔法を展開することはできない。
やったとしてもぶっ倒れるのがオチだ。
けれど、今後のコトを考えて、監視魔法の修練をすべきだろう。
次に何かあった時には、父上の仕事部屋まで監視魔法を展開できるくらいにならなくては。
次の日起きると、父上も母上も普段通りだった。
普段通りに笑顔で朝の挨拶をして、普段通り3人そろって朝食を食べた。
ただ、お昼になる頃、父上の部屋に呼ばれ、3人の子供の前に立たされた。
私の眼の前に、横一列に並ぶ男の子、女の子、男の子。
父上が説明してくれた。
「ルセル、伯爵家の長子に生まれたお前には、ゆくゆく専属の侍女、騎士、護衛がつくのだけれど、小さい頃から一緒に育つことで絆を深め合う方が良いと考えてね、急だけれど、お前の側に付く子を3人選抜したから紹介しよう」
そう言って、父上は左端の男の子から紹介を始めた。
「こちらの男の子はケシェット。お父様の専属護衛をしてくれているケルシーの次男だ。今日からルセルの側で生活する。だから、ルセルもあいさつをしなさい」
私はスカートをつまみ上げてあいさつした。
「ルセル・バーティです。よろしくお願いします」
ケシェットは、無言でペコリと頭を下げた。
“ゴン”
すると、ケシェットの隣に立っていた男性がケシェットの頭を殴った。
この人がケシェットの父親であるケルシーらしかった。
「こら、お前もお嬢様にちゃんとあいさつしろ」
ケシェットは、ゲンコツを食らって涙目になったが泣くことはなく、自分で頭をさすって言った。
「ケシェットって言います。6才です。よろしくお願いします」
父上が続ける。
「そして、この真ん中の子がトゥジョー。ルセルの侍女になる女の子だよ。この子も今日からルセルの側で生活することになるから仲良くしなさい」
「トゥジョー、5才です。ケシェットとは従兄妹です。よろしくお願いします」
「ルセル・バーティ、5才です。よろしくお願いします」
「そして、一番右端のこの子が、ギャルディオン。トゥジョーの兄にあたる。この子はルセルの専属騎士になる予定だ。もちろん、この子も今日からルセルの側で生活する。」
私は、またスカートをつまんであいさつした。
「ルセル・バーティです。よろしくお願いします」
「ギャルディオン、7才です。トゥジョーの兄です」
そして、再び父上から話があった。
「ルセル、お前の騎士や侍女になるといっても、正式にそうなるのは、それぞれが13才になった時だ。今はただの友達だと思って常に4人で遊びなさい。何をするにも4人でやりなさい。勉強も、遊びも、何でも」
「はい。父上、仲良くします」
私の返事を聞くと、父上は満足そうにうなずいた。
そして、父上からの話はまだ続いた。
「そして、最後にお前の先生を紹介しよう。ルセルも、もう5才になったから勉強を始めないといけないからね」
父上が手招きすると、部屋の隅で座っていた男性が私の元まで歩み寄ってきた。
男性の顔が見えると、それは教会の伯父上だった。
「ルセル、また会えたね、こんにちは。今日からルセルの勉強を見ることになったから、今後は伯父上ではなく、師匠とか先生とか呼んでくださいね」
私は、驚きと嬉しさで興奮していた。
「はい、師匠。よろしくお願いします。師匠は何を教えてくださるのですか?」
私の問いに、伯父上もとい師匠は、微笑んで言った。
「わが国のこと、王室のこと、貴族のこと、生活のこと、領民のこと、教会のこと、真名のこと、剣術、魔術、沢山のことを教えるよ」
(真名のことが聞ける!)
私は勉強するのが楽しみでならなかった。
やっと無知から解放されるのだ。
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