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第8話 勉強と師匠と子供が4人
しおりを挟む私たちには、勉強部屋が用意された。
自室から、その勉強部屋まで師匠に連れられて廊下をあるく。
師匠、私、トゥジョー、ケシェット、ギャルディオンの順に並んで歩くので、さながら、親ガモについて歩く子ガモ4人だ。
私たちの行進を見守る執事や侍女たちの眼が生温かい
部屋の前に着くと師匠が言った。
「はい。みんな注目。ここが勉強部屋になります。朝食を済ませたら、毎日朝9時にはここに集合しなさい。4人で一緒に来てもいいし、ここで集まってもいい。ただし、私が来る前に先に部屋に入ってはダメだ。廊下で私を待ちなさい。」
「えー、なんで待たなきゃダメなのー?」
やんちゃなケシェットが文句を言う。
師匠は、説明はこうだ。
「この部屋には、私が“時の魔法”をかけているからだだよ。つまり、廊下と部屋の中では時間の流れが変わっているんだ。だから、私の保護がないまま勝手に部屋に入ると、時酔いしてしまう。そうだな、馬車に酔うのと同じ感じだ」
「なんでそんなことするんだよー?」
シェットが再び文句を言う。
「1日8時間勉強したら、君たちは遊ぶ時間がなくなってしまうでしょ?だから、私が時の魔法で勉強部屋の中だけ時間の流れを遅くしてあげてるんだ!優しい師匠を持てて君たちはラッキーだろう?」
師匠がどや顔を見せる。
続けて、
「それと、ケシェット。君は師匠に対して言葉遣いを直さないと痛いお仕置きを準備するよ?」
ケシェットが急に姿勢を正して叫んだ!
「師匠、ありがとうございます。」
直立不動の姿勢で師匠に感謝を述べたケシェットに、私とトゥジョー、ギャルディオンは大笑いした。
「さあ、中に入ろう」
師匠にと一緒に中に入ると、勉強部屋は父上の仕事部屋ほどの大きさがあった。
中庭に面している部屋なので、日当たりと風通しも抜群だし、父上の仕事部屋と同じ造りの本棚もあって、私はすぐにこの部屋が気に入った。
「勉強机を4つ用意しておいたので、好きなところに座りなさい。私の席は君たちの左前の大きい机だが、授業中はこの黒板の前に立つから、私の机の見やすいところを気にして席を決めなくてもいい」
師匠に促されて、それぞれ好きなところに座る。
師匠に向かって、右からギャルディオン、ケシェット、トゥジョー、私だ。
「じゃあ、勉強を開始するよ。まずはこの国について質問だ!誰かこの国の名前を知っている?」
トゥジョーが手を上げる
「ティーフォン帝国です」
「正解だ。ここはティーフォン帝国。黒板に地図を貼るから、それを見て」
そう言って師匠は黒板に大きな地図を貼った。
「この大陸は。この地図のように正方形を斜めにした菱形に近い形になっていて、我々のティーフォン帝国はこの大陸の東に位置する。そして、ちょうど反対側である西側にトルネー帝国。北にはラグラス国。南にはシュード国があり、大陸をこの4つの国で分割している。そして、大陸の周りは海に囲まれていて、海を渡ると別の大陸があると言われている」
皆、師匠の説明を真剣に聞いている。
「一番大きくて強い国が、西側のトルネーだ。それから、ティーフォン、ラグラス、シュードの順になっている。そして、この4つの国は言葉が似ているのが特徴だ。それぞれの国に行けばわかることだが、多少語尾が違ったりするところはあるけれど、会話が成り立たないほどの差はない。これは各国が陸続きで1つの大陸にあることが大きな理由だ。学説という偉い先生達の考えでは、元になった言葉が一緒だったと言われている」
ギャルディオンが質問する。
「師匠、それぞれの国の大きさはどれだけ違うのですか?」
師匠が答える。
「そうだな、大体だが、トルネーが4/10、ティーフォンが3/10、ラグラスが2/10、シュードが1/10というところだ」
ケシェットが、
「だったら、ティーフォンがシュードを征服しちゃえばいいんだよ。そうすれば、ティーフォンだってトルネーと同じ大きさになれるじゃん!」
そうだ、そうだと皆がうなずく。
けれど、師匠が首を横に振った。
「実際は、そう簡単にはいかないのさ。なぜなら、土地の大きさとは関係なく、シュードはとても経済が発展していて、その意味では大国と言っていい規模を持っているんだ」
「えー」
4人が口をそろえる。
「じゃ、わが国は何がすぐれているんですか?」
トゥジョーが発言する。
それに答えて、師匠が、
「我が国が優れているのは魔法だ。これは他の国よりも我が国が優れている」
トゥジョーが質問を続ける
「では、トルネーとラグラスは?」
「トルネーは西側の山脈を領地の一部として持っているので鉱石や森林資源が豊富だ。ラグラスは、漁業と軍事が強いといっていいだろう」
「それぞれに特徴があるんですね」
ギャルディオンが、地図を凝視する。
「そうだ、ギャルディオン。それぞれの国が、それぞれに強みを持っている」
「我が国のコトをもっと教えてください」
今度は私が発言する。
すると、師匠が我が国について話してくれた。
「ティーフォン帝国は、プイッサ陛下とパイス・リール皇后によって統治されている国だ。現在、陛下には、王位継承権を持つ皇子様がお2人いらっしゃる。第一皇子がアポートル殿下、第二皇子がリビ殿下。ともに皇后がお産みになっているご兄弟でいらっしゃる。そして、今年、アポートル殿下は8才、リビ殿下は6才になられる。我が国では、皇子様が8才になられる時に、将来、皇子様のお后様になるご婚約者様を決める習わしになっているんだ」
トゥジョーが夢見るように両手を胸の前で組んで言う。
「婚約者が決まるなんて素敵!」
そんなトゥジョーを見たケシェットが大きな声を出す。
「なんだよ、トゥジョーって馬鹿だなー。皇子様の婚約者なんて貴族も貴族、すっごい偉い貴族の子供しかなれないんだから、トゥジョーじゃ絶対に無理なんだよ!」
すると、師匠が言った。
「婚約者になるのに爵位の高い低いは関係ない。ただ、皇子様のご婚約者様は、5才で受ける洗礼式の時に真名を授けられた貴族の娘の中から決めるとされているんだ」
(これか!)
師匠の言葉を聞いて確信できた。
やはり真名を授かったことがいけなかったのだ。
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