発展科学の異端者 学生編

天才？天災？科学魔法師現る

9.久しぶりの再会

「……」
「………」

　この場に、無言の時間が訪れる。時計は、夜ご飯の時間を示していた。

「城ケ崎君。少し君と話がしてみたい。橋爪さん。君は夕ご飯にでも、急いで向かうといい」

　その言葉は的確だった。橋爪は少し驚いた表情を浮かべていたが、白石の圧に負けたのか一礼をしてその場を離れていく。

　そしてこの場には、零と白石だけが残された。

「会議室を、押さえている。ついて来い」
「……拒否権は…」

　零の言葉を遮るように、白石は零を睨みつけてきた。

　零はロボットの様に、ついていくことしかできなかった。

「入れ」
「へーい」

　会議室らしき部屋に着く。その部屋は、机と椅子とホワイトボードしかなかった。零が部屋に入ったと同時に、白石は部屋の扉の鍵をかける。

「用心深いな。白石副代表」
「それはしますよ、城ケ崎様」

　白石の口調が急に変わる。それが分かっていたのか、零はくすっと笑う。

「その喋り方になると、いつもの翔さんって感じがしますね」
「そうですか。まあ、確かに先ほどは堅苦しいって感じがしますが……」

　突然変わったことには、理由があった。

「それにしても、零様もだいぶん成長されましたね」
「昔と変わってないような気がするけどね」
「この学園に通われているってことは、将来は科学武装師ですか」

　白石の言葉に、零は少しだけ考える。その様子を白石は見て、何か察したように言葉をつなぐ。

「そうでしたね。零様は、科学武装師には興味がありませんでしたね。だとすれば、婚約から逃げたってところでしょうか」
「……そんなところだ」
「そうですか……。では、うちの娘はどうでしょうか」

　白石の口から、とんでもない言葉が飛び出してきた。

「それは……、昔に断ったような気がするが…」
「昔は、昔ですよ。今は、変わっているかもしれませんからね」
「いや、変わらないよ」
「そうですか。残念ですね」

　白石は、少しだけ残念な表情を浮かべている。零は、続けるように喋り始める。

「僕は、普通の生活をしたいだけなんだ」
「普通ですか？」
「ああ。戦いによる死が、近くない世界で行きたいって思ってね」
「こんな世界ですよ。戦いのない平和な場所なんて、存在しませんよ」

　そうだ、この世界はモンスターが現れるようになって、平和という言葉は無くなった。もし、こんな世界に平和があるとすれば、タイムマシンで過去に戻ることぐらいだろう。だがそんなことは、神が許さないはずだ。

「はああ。まあ、自身を守れるだけの、力は必要なのかな」
「そうですね。こんな世界です。自身の命は自信で守ってもらわないと、私たちは困ってしまいます」
「そんなものなのか……」
「ええ、城ケ崎家の人間なら、それだけの力は持っているはずですよ。しかも、零様は才能の塊ですから」

　零は、黙って視線を逸らした。白石は、零を見続けていた。

「あなたは知らないようなので、言いますけど……。ついこの間。クリスが、表舞台に出てきました」
「…ーっ」

　零は驚き、目を開いていた。

「何だと……」

　零は、クリスの名について、聞いたことがあった。