元世界最強の人間と行く地獄のワールドツアー

ルークの真実

ルークの意思

　アーティと”ルース”が戦っている時のルーク達の話になる。

　すごい爆発音が聞こえる。それは想定外なほど大きな音。でもルークは聞いたことのある音。これを聞いたのはチャームズタウンで聞いた音。

　つまり”龍のブレス”だという結論にたどり着くまで、そこまで時間がかからなかった。

　でも、ここまですることなのかは、ルークには分からなかった。

　理由は一つ。代償だ。”龍のブレス”は基本的にどんな魔法でも防ぐことが不可能に近いと考えている。つまり、それだけ威力が高いということだ。威力が高い魔法は、連続発動ができなかったり、体力の消費が早かったり、命を削ったりなどの代償がある。その中でも”龍のブレス”の代償は他人の命と引き換えに発動と、代償が大きすぎる。

　逆に考えれば、代償を考えるよりも先に、発動しなければならない場合はどうなるだろうか。それを考えた瞬間、一つの答えが浮かぶ。

「アーティ先生が殺されかけた……」

　それは考えたくもないものであり、信じがたいものでもあった。

　ルークは首を振る。

　先生に限ってそんなことにならないって思って……。

　ルークは現場を見に行く前に、弟妹のそばに誰かいてほしいと思って、家の中を歩いたが誰も残っていなかった。あの現場に向かったのかもしれない。

　部屋に戻ってくると、2人が近づいてきて服をつかんだ。

「お兄ちゃん。何なんだよ。今の」
「こわいよー」
「大丈夫。大丈夫だよ。僕がいるから、大丈夫だ」

　ルークは弟妹を抱え込むようにして、落ち着かせる。


　そうだ、今の僕にできることは、この子たちを守ること。

　アーティ先生は、アーティ先生でしっかりと仕事をしているから。

　落ち着かせること数分。あれ以降”龍のブレス”を使用した形跡はない。

　弟妹は落ち着いたのか、少しうとうとしている。

「ルーク。みーつけた」

　その声のする方を見ると、そこにいたのは、ミアさんだった。

「ルーク。アーちゃんから伝言。『今、バルーンシティでは”ルース”の攻撃を受けている。僕は”ルース”を殲滅しに行かなければいけないから、君には2つ選択肢を与える。一つ弟妹を連れてシヨンオークまで逃げる。二つ弟妹をミアに託して僕のもとに来る。この選択肢の2つだ。僕は、君に来てほしいとは思わない。必要であればルークと私（ミア）、弟妹と逃げても構わない。もし来るというなら、覚悟を決めて来てくれ』ってことらしいよ。どうするルーク」

　ルークは、弟妹の様子を見る。2人とも少し震えている。

　決断できない。内容からすると、言って真実を聞いた方がいいように感じる。でも、2人を見放すことはできない。大切な家族だ。

「ミアさん。一つお願いがあります」
「何。ルーク」
「僕はこの戦いに行かないと、いけないと感じています。なので、できるだけ離れて、この2人を安全な場所において、参加したいです。だめですか」
「……もし、ダメと言ったら」
「それは、……」
「嘘よ。でもルーク。いいこと教えてあげる。決断するときは、失敗を恐れちゃあダメよ。人間は失敗しながら成長するからね。失敗を前提にやるのは間違えだけど、人間は完璧じゃないの。だから意思は強く持ちなさい」
「はい。すみません……。もう一度言わせてください」
「いいよ」
「僕は、この戦いに参加しないといけないんです。でも弟と妹を放置もできません。だから、この2人を安全なところに連れて行って、この戦いに参加します。手伝ってください。ミアさん」
「うん。いいよ。手伝うよ」

　それは、ルークが決めた答えだった。