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リトの赤魔法
サイロスとの再会
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翌朝、ミラの両親が離れの扉を叩く音で目が覚めた。どうやら久しぶりにミラが戻ってきたので、他の親族にも会ってほしいと、あいさつ回りをすることになったらしい。リトもついていくかと聞かれたが、気を遣うので辞退した。
その間、リトは一人でフォトスの町を散策し時間を潰すことにした。昨日ミラに案内してもらった店に行こうか、歩いていて気になった店に入ろうか悩みながら町を歩く。
歩きながら待ち行く人々を見ていると、ふと勇者の血が入っている者の特徴について思い出した。勇者の血が入っている者は、銀髪か銀色の瞳の特徴を受け継ぐことが多いらしい。フォトスの街並みはその特徴に当てはまる人が三割程度だろうか。そのうち、銀髪に銀の瞳と両方の特徴を持っている者は、街を歩いている限りでは見当たらなかった。
「(ミラのお母さんの髪と瞳の色は栗色だった。でもミラは銀髪に銀の瞳だ。お父さんの血が濃いのか、直系だからなのか……)」
正直ミラが直系かどうかは知らなかったが、勝手に憶測を立てながらぼんやりと歩いていると、目の前に見覚えのある男が現れた。
「おう、偶然だな、こんなところで会うなんて」
それは先日修練の洞窟の入り口で会ったサイロスだった。
「……どうも」
「ミラは一緒じゃねえのか?」
「ええ、まあ……」
「もしかして旅のお仲間ごっこは終了か?」
嫌味な言い方でリトを攻撃してくる。初めて会った時からわかっていたが、あまりにもあからさまな敵意に会話をする気が失せてしまう。さっさと切り上げて離れようと思っていたリトだったが、サイロスがそれを許してくれなさそうだった。
「時間あるんだろ? ちょっと面貸せよ。それとも、ビビっちまって来れねぇか」
半笑いのサイロスに挑発に乗ってはいけないと頭ではわかっていたリトだったが、弱いやつだと思われたままなのがどうしても受け入れられなかった。
「ありますよ、時間。付き合います。」
「そう来なくっちゃなあ? じゃ、こっちだ。」
サイロスに言われるがまま、後をついていく。地面がフォトスの町の中心地の白い石材から、どこにでもある土の地面へと変わる。気づけば、人気の少ない町の外れの林の中に連れ出されていた。木陰で立ち止まったサイロスは、リトの方へ向き直り、喋り始めた。
「ここまで来ればいいか。……お前、リトって言ったか? 聞きてえことがあるんだが……お前、どうやってミラに取り入ったんだよ。」
「別に、何もしてないですよ。急に誘われたんです。」
「ミラは旅に同行したいという者全てを断って来たんだ。どこの馬の骨とも知らねえやつを急に誘って仲間にするなんて、俄には信じがたい」
険しい顔つきで話すサイロスに、リトは疑問を投げかける。
「どうして、そこまで俺がミラの仲間になったことを受け入れられないんですか。」
直球な質問が癇に障ったのか、サイロスの眉が不快そうにピクリと動いた。
「俺はな、ミラと当代の勇者の座を争ったうちの一人だ。実力だけで言えば互角で、ミラの次に有力な候補とされていたんだ。でも俺は最後の最後で、神に選ばれなかった。
……それはまあいい。問題はそのあとだ。俺はやはり、勇者の名を冠して旅に出ることを諦められなかった。
そこでミラに同行させてほしいと申し出たんだ。でも断られた。ミラの次に有力だった俺が、だぞ? それが何で、修練の洞窟の世話になるような奴が仲間になってるんだよ。おかしいと思うのは間違ってるか?」
「そんなこと、言われても……」
サイロスの気持ちはわからなくはないが、ミラがリトを選んだ理由はすんなりと口に出せるものではない。リトが言い淀んでいると、サイロスが下卑た笑みを浮かべながら二人の関係を勘繰ってくる。
「もしかして、お前ら、……”デキ”てるんじゃねえのか?」
ミラが隠そうとしている二人の関係を言い当てられ動揺しそうになるが、ここでうっかりボロを出してサイロスに勘付かれてはいけないと、リトは必死に平静を装う。
「妄想もそこまでにしてください。根拠があるんですか?」
「根拠?まあ根拠も証拠もないが……アイツ、仲間どころか女っ気も全然なかったんだ。男が好きって言われても妙に納得できる程度にはな。」
「……どう思ってもらっても結構です。そんなことを話しに来たんですか?なら俺は……」
「おいおい、ちょっと待てって。話はまだ終わってねぇよ。」
サイロスは、立ち去ろうとするリトの腕を掴み引き留める。不意に引っ張られよろめいたリトを、近くの木の幹へ追いやる。サイロスはリトの頭の両側に手を突き、話を続けた。
「別に本当かどうかなんてどうでもいいんだよ。俺が良いっていうまで、ここから逃げ出すんじゃねえぞ。逃げたらお前らがデキてるって噂、広めるからな。」
リトの怪訝な表情を見てクククと喉を鳴らし笑うサイロス。
相手も力が強そうだが、勝てないことはないだろうとリトが無意識に体に力を込めたところで、サイロスが気づいて制する。
「抵抗したって同じだぜ。何なら俺に暴行した暴力野郎だって付け加えて噂流してやるよ。」
「はっ……良い性格してやがる。」
姑息なやり口に思わず本音が零れる。
こちらの僅かな体の機微に気付かれたことを察して、言う通り抵抗を諦めた。
「で、何が目的なんですか。」
「ああ、そりゃな、勇者サマの大事なモンを奪うなり壊すなりしてえんだよ。分かんだろぉ……?」
サイロスがねっとりとした声でそう言うと、右手でリトの顎を掴み、顔を自分の方へと向けさせた。リトは嫌悪感を露わにし、サイロスを睨め上げる。
「反抗的な目だなぁ……そんなやさぐれっぷりで、勇者サマの仲間が務まるのか?」
リトは何を言われても目を逸らし、耐えることに徹した。噂を流されてミラの心とその名誉に傷がついてしまわないように。
すると顎を掴んでいたサイロスの手が、リトの耳元から首筋を撫でるように動く。
皮膚がぞわぞわと粟立つ感覚に嫌悪感を隠せない。
「ハハッ、見るからに嫌そうだなぁ?でも、大事な大事な勇者サマの為に逃げ出さねぇってわけか。……いけ好かねぇ」
再び顎をぐいと上向かされたと思うと、サイロスの顔がリトの方へと近づいてくる。キスをされると察したリトは身体を硬直させ身構えた。
その間、リトは一人でフォトスの町を散策し時間を潰すことにした。昨日ミラに案内してもらった店に行こうか、歩いていて気になった店に入ろうか悩みながら町を歩く。
歩きながら待ち行く人々を見ていると、ふと勇者の血が入っている者の特徴について思い出した。勇者の血が入っている者は、銀髪か銀色の瞳の特徴を受け継ぐことが多いらしい。フォトスの街並みはその特徴に当てはまる人が三割程度だろうか。そのうち、銀髪に銀の瞳と両方の特徴を持っている者は、街を歩いている限りでは見当たらなかった。
「(ミラのお母さんの髪と瞳の色は栗色だった。でもミラは銀髪に銀の瞳だ。お父さんの血が濃いのか、直系だからなのか……)」
正直ミラが直系かどうかは知らなかったが、勝手に憶測を立てながらぼんやりと歩いていると、目の前に見覚えのある男が現れた。
「おう、偶然だな、こんなところで会うなんて」
それは先日修練の洞窟の入り口で会ったサイロスだった。
「……どうも」
「ミラは一緒じゃねえのか?」
「ええ、まあ……」
「もしかして旅のお仲間ごっこは終了か?」
嫌味な言い方でリトを攻撃してくる。初めて会った時からわかっていたが、あまりにもあからさまな敵意に会話をする気が失せてしまう。さっさと切り上げて離れようと思っていたリトだったが、サイロスがそれを許してくれなさそうだった。
「時間あるんだろ? ちょっと面貸せよ。それとも、ビビっちまって来れねぇか」
半笑いのサイロスに挑発に乗ってはいけないと頭ではわかっていたリトだったが、弱いやつだと思われたままなのがどうしても受け入れられなかった。
「ありますよ、時間。付き合います。」
「そう来なくっちゃなあ? じゃ、こっちだ。」
サイロスに言われるがまま、後をついていく。地面がフォトスの町の中心地の白い石材から、どこにでもある土の地面へと変わる。気づけば、人気の少ない町の外れの林の中に連れ出されていた。木陰で立ち止まったサイロスは、リトの方へ向き直り、喋り始めた。
「ここまで来ればいいか。……お前、リトって言ったか? 聞きてえことがあるんだが……お前、どうやってミラに取り入ったんだよ。」
「別に、何もしてないですよ。急に誘われたんです。」
「ミラは旅に同行したいという者全てを断って来たんだ。どこの馬の骨とも知らねえやつを急に誘って仲間にするなんて、俄には信じがたい」
険しい顔つきで話すサイロスに、リトは疑問を投げかける。
「どうして、そこまで俺がミラの仲間になったことを受け入れられないんですか。」
直球な質問が癇に障ったのか、サイロスの眉が不快そうにピクリと動いた。
「俺はな、ミラと当代の勇者の座を争ったうちの一人だ。実力だけで言えば互角で、ミラの次に有力な候補とされていたんだ。でも俺は最後の最後で、神に選ばれなかった。
……それはまあいい。問題はそのあとだ。俺はやはり、勇者の名を冠して旅に出ることを諦められなかった。
そこでミラに同行させてほしいと申し出たんだ。でも断られた。ミラの次に有力だった俺が、だぞ? それが何で、修練の洞窟の世話になるような奴が仲間になってるんだよ。おかしいと思うのは間違ってるか?」
「そんなこと、言われても……」
サイロスの気持ちはわからなくはないが、ミラがリトを選んだ理由はすんなりと口に出せるものではない。リトが言い淀んでいると、サイロスが下卑た笑みを浮かべながら二人の関係を勘繰ってくる。
「もしかして、お前ら、……”デキ”てるんじゃねえのか?」
ミラが隠そうとしている二人の関係を言い当てられ動揺しそうになるが、ここでうっかりボロを出してサイロスに勘付かれてはいけないと、リトは必死に平静を装う。
「妄想もそこまでにしてください。根拠があるんですか?」
「根拠?まあ根拠も証拠もないが……アイツ、仲間どころか女っ気も全然なかったんだ。男が好きって言われても妙に納得できる程度にはな。」
「……どう思ってもらっても結構です。そんなことを話しに来たんですか?なら俺は……」
「おいおい、ちょっと待てって。話はまだ終わってねぇよ。」
サイロスは、立ち去ろうとするリトの腕を掴み引き留める。不意に引っ張られよろめいたリトを、近くの木の幹へ追いやる。サイロスはリトの頭の両側に手を突き、話を続けた。
「別に本当かどうかなんてどうでもいいんだよ。俺が良いっていうまで、ここから逃げ出すんじゃねえぞ。逃げたらお前らがデキてるって噂、広めるからな。」
リトの怪訝な表情を見てクククと喉を鳴らし笑うサイロス。
相手も力が強そうだが、勝てないことはないだろうとリトが無意識に体に力を込めたところで、サイロスが気づいて制する。
「抵抗したって同じだぜ。何なら俺に暴行した暴力野郎だって付け加えて噂流してやるよ。」
「はっ……良い性格してやがる。」
姑息なやり口に思わず本音が零れる。
こちらの僅かな体の機微に気付かれたことを察して、言う通り抵抗を諦めた。
「で、何が目的なんですか。」
「ああ、そりゃな、勇者サマの大事なモンを奪うなり壊すなりしてえんだよ。分かんだろぉ……?」
サイロスがねっとりとした声でそう言うと、右手でリトの顎を掴み、顔を自分の方へと向けさせた。リトは嫌悪感を露わにし、サイロスを睨め上げる。
「反抗的な目だなぁ……そんなやさぐれっぷりで、勇者サマの仲間が務まるのか?」
リトは何を言われても目を逸らし、耐えることに徹した。噂を流されてミラの心とその名誉に傷がついてしまわないように。
すると顎を掴んでいたサイロスの手が、リトの耳元から首筋を撫でるように動く。
皮膚がぞわぞわと粟立つ感覚に嫌悪感を隠せない。
「ハハッ、見るからに嫌そうだなぁ?でも、大事な大事な勇者サマの為に逃げ出さねぇってわけか。……いけ好かねぇ」
再び顎をぐいと上向かされたと思うと、サイロスの顔がリトの方へと近づいてくる。キスをされると察したリトは身体を硬直させ身構えた。
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