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リトの赤魔法
赤魔法を知る者
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翌日また次の町へ向かおうと動き出したとき、次の町へ続く方向の道から、助けを求める人の声が聞こえてきた。
「た、助けてくれ! 狂暴化した魔獣が何匹も湧いてやがる……!!」
叫びながら走って逃げてくる人々の姿を見た二人は顔を見合わせ頷き、すぐさまその道の方へ駆けだした。
逃げて走ってくる人波に逆らいながら進んでいると、魔獣の群れが見えてきた。大きなトカゲのような魔獣が数匹地面を這っているのが見える。動きはかなりすばしっこそうだ。
戦闘の構えに入るミラに、リトがすかさず強化魔法を掛ける。
「ミラ、……強化は掛けといた。」
「ありがとう。リトは、周囲の人を安全な場所に」
「わかった。……いくぞ。」
二人はそれぞれの役割を果たすべく、走り出した。
リトは足がすくんで動けなくなっている人や、好奇心から見物しに来た人々を誘導して安全な場所に移動させる。こういう人目が付く場所ではリトはあまり戦わないようにしていた。うっかり赤魔法で攻撃しているところを誰かに目撃されたら面倒だからだ。
「危険ですから、街の方へ走ってください! 安全になったらお知らせします!」
リトが誘導を終え、魔獣が湧いていた場所に戻ってくる間に、ミラはすべての魔獣の討伐を終え、結晶の破壊まで済ませていた。ここ数日毎日戦っているので手慣れたものである。
「ありがとうリト、助かったよ。怪我人は?」
「見た限りではみんな無事だ」
「良かった……。じゃあ、待っている人たちに伝えに行かないとね。」
二人が今日出発した町の方へ戻ると、町の入り口付近で不安そうに待つ人々が見えた。人々は戻ってきたミラたちの姿を見て表情を和らげた。
「おお、無事に戻ってきたのか!」
「もう通れるようになったのか!?」
「はい、討伐は終わりましたので通れます。私たちも向こうの町に行きますので、一緒に行きましょう。」
よかった、これで一安心だ、と安堵の言葉を口にする人々を先導して、次の町へと向かった。
道中、反対側に逃げて待機していた人たちにも、討伐が終わったことを知らせながら歩く。
そして特に大きな問題も起こらず、次の町へ到着した。
「この道はとりあえず問題なさそうだな。」
「ああ。それにしても、かなり道に近いところに設置してあった。見つかるリスクも高いだろうに、大胆なことをするもんだ……」
「それだけ切羽詰まってるってことか?」
「有り得る……」
そんなことを話しながら町を歩いていると、目の前に見覚えのある人物が現れた。水色の髪を一つに縛っている男だ。
「数日ぶりですね、勇者殿。そして……リトさん、とお呼びすればよいですか?」
「あなたは……アレクさん? どうしてこんなところに……」
「王都周辺を定期的に偵察しているものでして……たまたま居合わせました。」
不思議そうに問いかけるミラ。それに返答しながらアレクは二人のほうに近づいてきた。
「もしお時間があれば少しお話しさせていただきたいのですが……よろしいでしょうか。」
「特に予定がある旅ではないので問題ないですが……」
「それでは、あちらに私の今日の宿がありますので、そこの部屋でお話ししましょうか。ああ、今は従者も自由時間なので、私一人でお話しさせていただきます。」
なぜわざわざ部屋の中で、と思わなくもなかったが、アレクに案内されるまま部屋へと向かう。
部屋の中の席に着くなり、アレクは早速本題を切り出した。
「単刀直入にお伺いします。リトさん、あなた……赤魔法が使えますね?」
「…………何のことでしょう」
王立図書館で話したときはリトに一瞥もせず、名前すら聞こうともしなかったアレクだったが、今日はしっかりとリトを見つめて話しかけてきていた。
「隠さなくても大丈夫です。先ほど魔獣討伐に当たるお2人を見かけました。恐らく、強化魔法を使っていましたよね。リトさんの目が一瞬だけ赤く光って、そこから勇者殿の動きが明らかに速くなった」
そんな一瞬の出来事で赤魔法のことを見抜かれていたことに驚く。恐らく、赤魔法について知識を持っているのだろう。でなければ分かるはずがない。ということは、吸血鬼と赤魔法使いの血縁の可能性についても知っているはずだ。
「……目的は、なんですか」
警戒心全開で返答するリトを和らげようと、アレクが笑って答える。
「やだなぁ、別に弱みを握って脅してやろうとか、そういうことじゃないんです」
「じゃあ一体……」
「リトさん、僕とも血の契約を結んで貰えませんか?」
「え……」
予想外の言葉に返答に困るリト。ミラが何か言いたげに眉を寄せるがそれを制し、アレクが続ける。
「実は古より、王族と赤魔法使いの一族は懇意にしていたんです。その関係は、赤魔法使いの一族が途絶えたことで終わってしまった」
「そんな情報、どこにも……」
「まぁ、色々事情がありましてね。文献には残されていない歴史です」
そこまで聞いてミラが我慢の限界とばかりに口を開く。
「昔はそうだったかもしれませんが、今は違います。別にリトがあなたと懇意にする理由にはなり得ないのでは? それに、今は吸血鬼との戦闘を控えています。もし血の契約の拒絶反応が起こってしまうと、体力を消耗してしまう。それは得策ではないはずです」
必死に抑えようとしているが、ミラの声には隠しきれない怒気が含まれていた。
「おやおや。……まぁ、確かに勇者様の言うとおりですね。私も少し、気が急いてしまったようです。何せ……求め続けた『300年前に失われたはずの魔法』が、目の前にあるのですから……」
そういうとアレクは獲物を狙うような目でリトを見つめる。
「リトさんご本人は、どうお考えですか?」
「まぁ、俺の力を役立ててくれるなら、別にいいかなと……ただまぁ、拒絶反応のこともあるし、今はちょっと……」
「ははは、分かりました。しかしまだ望みはあるということですね」
ミラは不服そうだが、これ以上不機嫌を晒す訳にはいかないとグッと堪えている。
「では、必ず生きて戻ってきてください。王都で待ってます。……あ、そうそう。お察しの通り、この辺りで結晶の配置が増えてます。恐らく、吸血鬼もこの辺りにいるのでしょう。警戒した方が良さそうです」
アレクからの話はこれで終わりだった。
完全に諦めた訳ではなさそうなアレクにまだ何か言いたげなミラだったが、依頼のこともあるとこの場はグッと堪え、2人で部屋を後にした。
残されたアレクは室内から、窓の外の2人を見つめていた。
「やはり、そういう関係ですよねぇ」
アレクは顎に手を置きながら、しげしげとリトを見て呟く。
「勇者殿には申し訳ないですが……リトさんは必ず手に入れます」
水色の瞳には明らかな嫉妬の色が滲んでいた。
「た、助けてくれ! 狂暴化した魔獣が何匹も湧いてやがる……!!」
叫びながら走って逃げてくる人々の姿を見た二人は顔を見合わせ頷き、すぐさまその道の方へ駆けだした。
逃げて走ってくる人波に逆らいながら進んでいると、魔獣の群れが見えてきた。大きなトカゲのような魔獣が数匹地面を這っているのが見える。動きはかなりすばしっこそうだ。
戦闘の構えに入るミラに、リトがすかさず強化魔法を掛ける。
「ミラ、……強化は掛けといた。」
「ありがとう。リトは、周囲の人を安全な場所に」
「わかった。……いくぞ。」
二人はそれぞれの役割を果たすべく、走り出した。
リトは足がすくんで動けなくなっている人や、好奇心から見物しに来た人々を誘導して安全な場所に移動させる。こういう人目が付く場所ではリトはあまり戦わないようにしていた。うっかり赤魔法で攻撃しているところを誰かに目撃されたら面倒だからだ。
「危険ですから、街の方へ走ってください! 安全になったらお知らせします!」
リトが誘導を終え、魔獣が湧いていた場所に戻ってくる間に、ミラはすべての魔獣の討伐を終え、結晶の破壊まで済ませていた。ここ数日毎日戦っているので手慣れたものである。
「ありがとうリト、助かったよ。怪我人は?」
「見た限りではみんな無事だ」
「良かった……。じゃあ、待っている人たちに伝えに行かないとね。」
二人が今日出発した町の方へ戻ると、町の入り口付近で不安そうに待つ人々が見えた。人々は戻ってきたミラたちの姿を見て表情を和らげた。
「おお、無事に戻ってきたのか!」
「もう通れるようになったのか!?」
「はい、討伐は終わりましたので通れます。私たちも向こうの町に行きますので、一緒に行きましょう。」
よかった、これで一安心だ、と安堵の言葉を口にする人々を先導して、次の町へと向かった。
道中、反対側に逃げて待機していた人たちにも、討伐が終わったことを知らせながら歩く。
そして特に大きな問題も起こらず、次の町へ到着した。
「この道はとりあえず問題なさそうだな。」
「ああ。それにしても、かなり道に近いところに設置してあった。見つかるリスクも高いだろうに、大胆なことをするもんだ……」
「それだけ切羽詰まってるってことか?」
「有り得る……」
そんなことを話しながら町を歩いていると、目の前に見覚えのある人物が現れた。水色の髪を一つに縛っている男だ。
「数日ぶりですね、勇者殿。そして……リトさん、とお呼びすればよいですか?」
「あなたは……アレクさん? どうしてこんなところに……」
「王都周辺を定期的に偵察しているものでして……たまたま居合わせました。」
不思議そうに問いかけるミラ。それに返答しながらアレクは二人のほうに近づいてきた。
「もしお時間があれば少しお話しさせていただきたいのですが……よろしいでしょうか。」
「特に予定がある旅ではないので問題ないですが……」
「それでは、あちらに私の今日の宿がありますので、そこの部屋でお話ししましょうか。ああ、今は従者も自由時間なので、私一人でお話しさせていただきます。」
なぜわざわざ部屋の中で、と思わなくもなかったが、アレクに案内されるまま部屋へと向かう。
部屋の中の席に着くなり、アレクは早速本題を切り出した。
「単刀直入にお伺いします。リトさん、あなた……赤魔法が使えますね?」
「…………何のことでしょう」
王立図書館で話したときはリトに一瞥もせず、名前すら聞こうともしなかったアレクだったが、今日はしっかりとリトを見つめて話しかけてきていた。
「隠さなくても大丈夫です。先ほど魔獣討伐に当たるお2人を見かけました。恐らく、強化魔法を使っていましたよね。リトさんの目が一瞬だけ赤く光って、そこから勇者殿の動きが明らかに速くなった」
そんな一瞬の出来事で赤魔法のことを見抜かれていたことに驚く。恐らく、赤魔法について知識を持っているのだろう。でなければ分かるはずがない。ということは、吸血鬼と赤魔法使いの血縁の可能性についても知っているはずだ。
「……目的は、なんですか」
警戒心全開で返答するリトを和らげようと、アレクが笑って答える。
「やだなぁ、別に弱みを握って脅してやろうとか、そういうことじゃないんです」
「じゃあ一体……」
「リトさん、僕とも血の契約を結んで貰えませんか?」
「え……」
予想外の言葉に返答に困るリト。ミラが何か言いたげに眉を寄せるがそれを制し、アレクが続ける。
「実は古より、王族と赤魔法使いの一族は懇意にしていたんです。その関係は、赤魔法使いの一族が途絶えたことで終わってしまった」
「そんな情報、どこにも……」
「まぁ、色々事情がありましてね。文献には残されていない歴史です」
そこまで聞いてミラが我慢の限界とばかりに口を開く。
「昔はそうだったかもしれませんが、今は違います。別にリトがあなたと懇意にする理由にはなり得ないのでは? それに、今は吸血鬼との戦闘を控えています。もし血の契約の拒絶反応が起こってしまうと、体力を消耗してしまう。それは得策ではないはずです」
必死に抑えようとしているが、ミラの声には隠しきれない怒気が含まれていた。
「おやおや。……まぁ、確かに勇者様の言うとおりですね。私も少し、気が急いてしまったようです。何せ……求め続けた『300年前に失われたはずの魔法』が、目の前にあるのですから……」
そういうとアレクは獲物を狙うような目でリトを見つめる。
「リトさんご本人は、どうお考えですか?」
「まぁ、俺の力を役立ててくれるなら、別にいいかなと……ただまぁ、拒絶反応のこともあるし、今はちょっと……」
「ははは、分かりました。しかしまだ望みはあるということですね」
ミラは不服そうだが、これ以上不機嫌を晒す訳にはいかないとグッと堪えている。
「では、必ず生きて戻ってきてください。王都で待ってます。……あ、そうそう。お察しの通り、この辺りで結晶の配置が増えてます。恐らく、吸血鬼もこの辺りにいるのでしょう。警戒した方が良さそうです」
アレクからの話はこれで終わりだった。
完全に諦めた訳ではなさそうなアレクにまだ何か言いたげなミラだったが、依頼のこともあるとこの場はグッと堪え、2人で部屋を後にした。
残されたアレクは室内から、窓の外の2人を見つめていた。
「やはり、そういう関係ですよねぇ」
アレクは顎に手を置きながら、しげしげとリトを見て呟く。
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水色の瞳には明らかな嫉妬の色が滲んでいた。
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