2 / 34
松川紗希の興味
きっかけ
しおりを挟む
私たち夫婦は、人付き合いが得意な方ではない。
同じマンションに住んでいる住人とは、すれ違えば挨拶を交わす程度だ。
そんな毎日に、変化が訪れたのはつい先日。
隣に引っ越してきた夫婦のご主人が、夫の職場に転職してきたらしい。
帰宅した後、荷物を置きながら夫が不満そうにぼやいた。
「お隣に引っ越してきた望田さん、今日からうちの会社で働くらしいんだよ。部署は違うから頻繁に会うことはないだろうが、今日は帰りも一緒でね。ちょっと気まずいかな。」
「そうなの? 帰る時間ずらす?」
「いやだよ、早く家に帰りたい。なんでこっちが変えなきゃならないんだ。」
そういいながら夫は優しく私を後ろから抱きしめてきた。
「まぁそれでさ、向こうが、『うちで呑みませんか』って。断るのも面倒だから1回だけ行ってくれない?」
「え、私も?」
「向こうも奥さんがいるみたいでさ。奥さん同士も交流があった方がいいかってことで、そういう話になったんだ。行けそう?」
相手方の家にご招待までされ、これから職場で顔を合わせる夫の為を考えると、最低限の付き合いは必要か、と諦めて会合に参加することにした。
明くる週末、その新しく同僚となった隣家に、お邪魔する日を迎えた。お酒も飲むとのことだったので、いくつかつまみを用意して向かった。
ピンポーン
隣家のチャイムを鳴らす。
「隣の松川ですー」
「はーい」
女性の声で返事が聞こえた。奥様が出迎えてくれるようだ。
「どうぞ~お待ちしてました、今日はわざわざありがとうございます。あ、梨奈と申します。」
上は赤色の薄手のスクエアネックニット、下はハイウエストのスキニーパンツを着た女性が玄関を開き迎え入れてくれた。
綺麗な人だ。
長いけれど不自然ではないまつ毛や、濃すぎないメイク、シミや毛穴の目立たない肌。パーマではなくアイロンで巻いたであろう緩くウェーブのかかった髪。
普段から自身の見た目に気を遣っていることが感じられた。
薄手で体型の出る服なので、スタイルの良さも伺える。
「はじめまして。紗希と申します。旦那がお世話になってます。」
「はじめまして。航と申します。今日はお誘いいただいてありがとうございます。」
「どうぞ、上がってください。」
「お邪魔します。」
ご近所付き合いの乏しかった私たちは、久々の他人の部屋に少し緊張しながら足を踏み入れた。
奥ではお隣さんの旦那さんが待っていた。
「どうもどうも、お世話になってます。浩介です。すみません、無理言っちゃって。」
「浩介さん!いえいえ、なかなかない機会なので、楽しみにしてました。」
浩介さんは、眼鏡を掛けた細身の男性で、想像していたよりも優しそうな人で安堵した。
まだ知り合って間もないこともあり少しぎこちない感じはするが、両旦那は悪くない雰囲気のようだ。
こうして、隣家同士の飲み会が始まった。
お酒が強くない私と違って、旦那はかなり飲む。しかし、私があまり飲めないことを知ってか知らずか、家では飲まないようになっていた。久しぶりにお酒を飲める機会ということで、夫は楽しそうに飲んでいるようだ。
「それにしても偶然ですよね。転職前はどんなご職業で?」
「似たような業種です。ただ、残業代が出なくて…」
「ああ、そうなんですね。」
夫同士が他愛のない会話をしている中、相手方の奥さんとともにつまみの準備を進めていた。
「今日はお邪魔しちゃってすみません……」
「いえいえ、うちの旦那が誘っちゃったみたいで。好きなんですよ、こういうの。お隣さんだから、また誘っちゃうかも。」
「そうなんですね。来客が多いと奥様も大変そうで……」
作業をしている梨奈さんの胸元に、女性の私でも思わず目が奪われてしまった。
「(スタイルいいなあ、出るとこ出てて、締まるとこは締まってる……)」
夫に少し前に、「やっぱり谷間って見ちゃう?」と聞いた時、「見るつもりなくても、見ちゃうね」という発言をしていたことを思い出す。
「(やっぱり、大きい方が好きなのかなあ……)」
自分も極端に小さい訳では無いが、それよりも更に存在感のある梨奈の胸元に勝手な劣等感を抱いた時、
「どうかしましたか?」
梨奈さんに声をかけられ、我に返った。
「あ、いえいえ、なんでもないです!」
キッチンでの支度を終え、つまみをもってリビングに戻りながら、ふと夫の目線を伺った。
「(たしかに、見てるなぁ……バレてないと思ってる?)」
それからもことあるごとにちらちらと伺っていると、お酒が入っていて多少理性が弱まっているのか、梨奈さんが他所を向いている時にぼーっとして視線が無意識に胸元へ向けられている姿を幾度か見かけた。
3杯ほど飲んだところで、そこまでお酒に強くない私は、眠気が来ていた。まだまだ会は終わりそうもなく、話をぼんやり聞いているうちにウトウトと眠りについてしまった。
同じマンションに住んでいる住人とは、すれ違えば挨拶を交わす程度だ。
そんな毎日に、変化が訪れたのはつい先日。
隣に引っ越してきた夫婦のご主人が、夫の職場に転職してきたらしい。
帰宅した後、荷物を置きながら夫が不満そうにぼやいた。
「お隣に引っ越してきた望田さん、今日からうちの会社で働くらしいんだよ。部署は違うから頻繁に会うことはないだろうが、今日は帰りも一緒でね。ちょっと気まずいかな。」
「そうなの? 帰る時間ずらす?」
「いやだよ、早く家に帰りたい。なんでこっちが変えなきゃならないんだ。」
そういいながら夫は優しく私を後ろから抱きしめてきた。
「まぁそれでさ、向こうが、『うちで呑みませんか』って。断るのも面倒だから1回だけ行ってくれない?」
「え、私も?」
「向こうも奥さんがいるみたいでさ。奥さん同士も交流があった方がいいかってことで、そういう話になったんだ。行けそう?」
相手方の家にご招待までされ、これから職場で顔を合わせる夫の為を考えると、最低限の付き合いは必要か、と諦めて会合に参加することにした。
明くる週末、その新しく同僚となった隣家に、お邪魔する日を迎えた。お酒も飲むとのことだったので、いくつかつまみを用意して向かった。
ピンポーン
隣家のチャイムを鳴らす。
「隣の松川ですー」
「はーい」
女性の声で返事が聞こえた。奥様が出迎えてくれるようだ。
「どうぞ~お待ちしてました、今日はわざわざありがとうございます。あ、梨奈と申します。」
上は赤色の薄手のスクエアネックニット、下はハイウエストのスキニーパンツを着た女性が玄関を開き迎え入れてくれた。
綺麗な人だ。
長いけれど不自然ではないまつ毛や、濃すぎないメイク、シミや毛穴の目立たない肌。パーマではなくアイロンで巻いたであろう緩くウェーブのかかった髪。
普段から自身の見た目に気を遣っていることが感じられた。
薄手で体型の出る服なので、スタイルの良さも伺える。
「はじめまして。紗希と申します。旦那がお世話になってます。」
「はじめまして。航と申します。今日はお誘いいただいてありがとうございます。」
「どうぞ、上がってください。」
「お邪魔します。」
ご近所付き合いの乏しかった私たちは、久々の他人の部屋に少し緊張しながら足を踏み入れた。
奥ではお隣さんの旦那さんが待っていた。
「どうもどうも、お世話になってます。浩介です。すみません、無理言っちゃって。」
「浩介さん!いえいえ、なかなかない機会なので、楽しみにしてました。」
浩介さんは、眼鏡を掛けた細身の男性で、想像していたよりも優しそうな人で安堵した。
まだ知り合って間もないこともあり少しぎこちない感じはするが、両旦那は悪くない雰囲気のようだ。
こうして、隣家同士の飲み会が始まった。
お酒が強くない私と違って、旦那はかなり飲む。しかし、私があまり飲めないことを知ってか知らずか、家では飲まないようになっていた。久しぶりにお酒を飲める機会ということで、夫は楽しそうに飲んでいるようだ。
「それにしても偶然ですよね。転職前はどんなご職業で?」
「似たような業種です。ただ、残業代が出なくて…」
「ああ、そうなんですね。」
夫同士が他愛のない会話をしている中、相手方の奥さんとともにつまみの準備を進めていた。
「今日はお邪魔しちゃってすみません……」
「いえいえ、うちの旦那が誘っちゃったみたいで。好きなんですよ、こういうの。お隣さんだから、また誘っちゃうかも。」
「そうなんですね。来客が多いと奥様も大変そうで……」
作業をしている梨奈さんの胸元に、女性の私でも思わず目が奪われてしまった。
「(スタイルいいなあ、出るとこ出てて、締まるとこは締まってる……)」
夫に少し前に、「やっぱり谷間って見ちゃう?」と聞いた時、「見るつもりなくても、見ちゃうね」という発言をしていたことを思い出す。
「(やっぱり、大きい方が好きなのかなあ……)」
自分も極端に小さい訳では無いが、それよりも更に存在感のある梨奈の胸元に勝手な劣等感を抱いた時、
「どうかしましたか?」
梨奈さんに声をかけられ、我に返った。
「あ、いえいえ、なんでもないです!」
キッチンでの支度を終え、つまみをもってリビングに戻りながら、ふと夫の目線を伺った。
「(たしかに、見てるなぁ……バレてないと思ってる?)」
それからもことあるごとにちらちらと伺っていると、お酒が入っていて多少理性が弱まっているのか、梨奈さんが他所を向いている時にぼーっとして視線が無意識に胸元へ向けられている姿を幾度か見かけた。
3杯ほど飲んだところで、そこまでお酒に強くない私は、眠気が来ていた。まだまだ会は終わりそうもなく、話をぼんやり聞いているうちにウトウトと眠りについてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる