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忘れ物の秘密
私たちのあり方
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今日は妊娠してから二回目の妊婦検診だ。普通の検診と同じような体重や血圧などの基本的な検査に加えて、お腹の子供を確認するエコー検査も受けてきた。お医者様に画像を見ながら説明されたが、正直シルエットもよくわからず、言われてみれば……という程度だった。私はつわりも軽い方ということもあり、不安はあれど妊娠の実感は薄かった。それでも確かに現代医療はこのお腹に新しい命が宿ったことを示してくれている。なんだか不思議な気持ちになりながら、自宅の扉を開けた。
「ただいま~」
今日は航も休みだから部屋にいるはずだが、返事がない。まさか、梨奈さんに会いに行ったりしてないよね、などと半信半疑でリビングへ進んでいくと、無表情でソファに座る航がいた。
「航…? どうしたの? 大丈夫?」
返事もせずに微動だにしない明らかにおかしい様子の航に、声をかける。しかし、相変わらず返答がない。ふと航の視線の先を追うと、ローテーブルの上にキーホルダーのようなものが置かれていた。どこかで、見たような気がするキーホルダーだが、どこで見たか思い出せない。
「これ……、これがどうかしたの?」
「どうかしたの、じゃないだろ。とぼけないでくれよ。これ、寝室掃除してたら出てきたんだ。」
その言葉を聞いて、私ははっとしてしまった。私たち以外に寝室に入った人は、私が知る限り一人しかいない。しかし咄嗟に、それを悟られてはいけないと平静を取り繕った。
「え、そうなの?見たことないけど……」
「俺、たまに通勤する時に見てて、覚えてるんだ。これ、浩介君のだろ。どういうことだよ。」
「そう、なんだ……」
動悸が激しくなり、だんだんと取り繕うのが難しくなっていく。どうして。これから二人で元通りになれるはずだったのに。なぜ、私が一方的に責められなければならないのか……!
いろいろな感情が爆発し、整理できない感情が涙となって溢れ出してくる。
「泣けば済むと思ってるの? ……こんなこと言いたくないけど、そのお腹の子も、俺の子か分からないんだろ?」
その言葉を聞いて、我慢の限界が来てしまった。
「なんでそんなこと言えるのッ!? この子は間違いなく航の子! 大体、航が梨奈さんと会ってたこと知ってるんだから!! それさえなければ、こんなことにはならなかったのに……!」
「な………っ、知ってた、のか……?」
それから私たちはこれまであったことを洗いざらい話した。話し合ううち、航も自分の過ちを認め、必要以上に責めることはなくなり、私も冷静さを取り戻した。もう子供はできているし、三人で幸せになりたいという気持ちはお互いに変わらないということも共有しつつ、どうやってこの気持ちに折り合いを付けて行くのか、日々話し合っていくことになった。
ーーーーーーー
それから月日は流れ、無事にお腹に宿った命を出産することができた。今日は私が退院して家に戻る日だ。隣では航が私の荷物を持ちながら、私の腕に抱かれている小さな命を見て微笑んでいる。私たちは、航が私の罪に気付いた日から、事あるごとに話し合いを重ねた。涙を流すこともたくさんあったが、確実に、心の距離は戻ってきている。今、こうやって二人で新しい命の誕生を祝うことができているのが何よりの証拠だ。
「紗希、とりあえずゆっくり休んでね。そろそろミルクの時間かな?飲ませておくね。」
「ありがとう。航もいろいろ準備してくれて、疲れてるでしょ。無理しないでね。」
こうやって、お互い気遣いの声を掛け合う。そう、私たちは私たちの形で歩んでいくのだ。
そして、穏やかな気持ちで過ごす私たちの寝室の片隅。そこには、あのマトリョーシカの小物入れが置かれていた。
【了】
「ただいま~」
今日は航も休みだから部屋にいるはずだが、返事がない。まさか、梨奈さんに会いに行ったりしてないよね、などと半信半疑でリビングへ進んでいくと、無表情でソファに座る航がいた。
「航…? どうしたの? 大丈夫?」
返事もせずに微動だにしない明らかにおかしい様子の航に、声をかける。しかし、相変わらず返答がない。ふと航の視線の先を追うと、ローテーブルの上にキーホルダーのようなものが置かれていた。どこかで、見たような気がするキーホルダーだが、どこで見たか思い出せない。
「これ……、これがどうかしたの?」
「どうかしたの、じゃないだろ。とぼけないでくれよ。これ、寝室掃除してたら出てきたんだ。」
その言葉を聞いて、私ははっとしてしまった。私たち以外に寝室に入った人は、私が知る限り一人しかいない。しかし咄嗟に、それを悟られてはいけないと平静を取り繕った。
「え、そうなの?見たことないけど……」
「俺、たまに通勤する時に見てて、覚えてるんだ。これ、浩介君のだろ。どういうことだよ。」
「そう、なんだ……」
動悸が激しくなり、だんだんと取り繕うのが難しくなっていく。どうして。これから二人で元通りになれるはずだったのに。なぜ、私が一方的に責められなければならないのか……!
いろいろな感情が爆発し、整理できない感情が涙となって溢れ出してくる。
「泣けば済むと思ってるの? ……こんなこと言いたくないけど、そのお腹の子も、俺の子か分からないんだろ?」
その言葉を聞いて、我慢の限界が来てしまった。
「なんでそんなこと言えるのッ!? この子は間違いなく航の子! 大体、航が梨奈さんと会ってたこと知ってるんだから!! それさえなければ、こんなことにはならなかったのに……!」
「な………っ、知ってた、のか……?」
それから私たちはこれまであったことを洗いざらい話した。話し合ううち、航も自分の過ちを認め、必要以上に責めることはなくなり、私も冷静さを取り戻した。もう子供はできているし、三人で幸せになりたいという気持ちはお互いに変わらないということも共有しつつ、どうやってこの気持ちに折り合いを付けて行くのか、日々話し合っていくことになった。
ーーーーーーー
それから月日は流れ、無事にお腹に宿った命を出産することができた。今日は私が退院して家に戻る日だ。隣では航が私の荷物を持ちながら、私の腕に抱かれている小さな命を見て微笑んでいる。私たちは、航が私の罪に気付いた日から、事あるごとに話し合いを重ねた。涙を流すこともたくさんあったが、確実に、心の距離は戻ってきている。今、こうやって二人で新しい命の誕生を祝うことができているのが何よりの証拠だ。
「紗希、とりあえずゆっくり休んでね。そろそろミルクの時間かな?飲ませておくね。」
「ありがとう。航もいろいろ準備してくれて、疲れてるでしょ。無理しないでね。」
こうやって、お互い気遣いの声を掛け合う。そう、私たちは私たちの形で歩んでいくのだ。
そして、穏やかな気持ちで過ごす私たちの寝室の片隅。そこには、あのマトリョーシカの小物入れが置かれていた。
【了】
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