夢現アリス

Marnie

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第1章

変わらない夢

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 私は、毎日同じような夢を見る。
 夢の始まりは、必ずベッドの中。そこから起き出して、朝食と身支度を整えて学校へ行く。帰ってからは、宿題を済ませ、夕食とお風呂も済ませる。長ったらしい夢の終わりも、やっぱりベッドの中。そこで目を閉じると、何も見えなくなる。ようやく、私のワンダーランドに帰って来られるのだ。
 毎日は、そんな事の繰り返し。そんな代わり映えのしない夢の事だから、飽きてくるのも極当たり前だろう。
 しかし、現実には飽きが来ない。いつまで経っても、新鮮味や面白味に溢れている。幼い子どもの頃に創り出した世界なのに、大きくなった今でも幼稚な気はしない。それもきっと、今も尚、この世界を自分好みにカスタマイズし続けているからだろう。

「アリス?何をそんなに考え込んでるんだ?」
 おっと、お兄ちゃんのお出ましだ。私は、常にお兄ちゃんと一緒に行動している。それもそれもそのはず、ここにいる家族は、お兄ちゃんしかいないんだから。
「アーリースー?聞いてるー?」
「あっ、ごめん。何か言った…?」
「そんなにずっとうずくまったままで…考え事でもしてたのか?」
 最近、お兄ちゃんが少しツンデレになってきている気がするのは、気のせいだろうか…?
「あーー、うん、ちょっとね。」
「ちょっとって…?」
「えーっ、そこまで聞くー!?」
「聞く。」
「……この世界って、いつまで経っても飽きないなーって思ってね。夢だと、毎日毎日同じ事ばっかり!!もうこんな夢なんて見たくない、飽き飽きよ!つまんないし、疲れるだけだし…」
「それは無理だろ。だって、こ……じゃなくて……」
 お兄ちゃんは、その先を続けるのを慌てて止めたようだ。不自然さが誰にでも見てとれる。
「だって…何?」
「そのーー、勝手に引き込まれるんだろ?夢にさ。抗いようもないじゃんか。」
「まあ…ね…仕方ない事なんだけど…」
 夢からの回避は、どうやら諦める他ないようだった。
 しかし、そんなつまらない夢にも、興味や疑問を持つ事は沢山ある。どうして、夢の中での私の名前はローラなのか。どうして、夢の中では両親がいてお兄ちゃんがいないのか。そもそもどうして、毎日ほぼ同じ夢を見るのか…どうして、私の夢はこんなにもつまらないものなのか!いくら考えても、わからないものはわからないらしい。
 でも、若干助けられた部分もある。両親はちゃんと優しくしてくれるし、ご飯も結構おいしい。話せる友達もいるし、勉強も…まあ出来る方だ。周りから見れば、何ら問題もない中学3年生としてやっている。
 それに、幸い私立に通っているので、高校受験は内部進学で確実に合格出来るみたいだ。その分、中学受験で毎日ひーひー言っていたのを思い出すが…それも、これは夢だと何度も言い聞かせ、それに助けられながら持ちこたえたんだったな…
 だいぶリアリティ満載に話を進めているけれど、一応これはでのお話。夢なんて、そういうものだから。

「アリス、今日はやけに話が通らないな…」
 おっと、またまたお兄ちゃん。
「他にも色々と考え事してたの。聞いてない時だってあるわよ。」
「そんなに聞きたくないかー。アリスにとっては、結構良い話なんだけど。」
「えっ、何!?」
 食いつくように反応してしまった私は、やっぱり単純だ。それにしても、最近のお兄ちゃんはずるい!そうやっていつもからかうし、私の興味をそそりながら釣り上げるんだから。
「庭に出てごらん、王女様?」
「あっ、ティータイム!?」
「メイド達が言ってた。今日は一段と豪華な盛り付けだって。ついでに、来客の顔ぶれも豪華だって…」
「うわぁ……あいつも来るのか…あのイカれた王子様さんよぉ…」
「ははっ、そうかもな!さっ、早く行った方が良いぞー。待たせると、これまたイカれた王様が歌い出す。それだけは、俺も勘弁だ…」
「わかったから、すぐ行くって!もう、皆イカれてる…!!」

「アリス…いや、本当のお前は…ローラ……(自分で創り出した世界や王国、自分で創り出した住人達、自分で創り出したルール……お前がそれで満足しているなら、それで良い…お前の言う現実、つまりここがだなんて事、今は口が裂けても言う訳にはいかない…秘密は墓場まで持っ……そうだった…俺はもう墓場の中か…)」
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