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険しい道のり
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私が承諾し、少しだけ準備の時間をとってもらった。
明日、夜が明けてからの出発でもいいだろうにそうもいかないらしい。
すぐにでも出発したい様だったけどこっちだって準備がある。
一応乾燥した薬草に採取道具一式、日持ちする食料。水筒に水を汲み
何かと気にかけてくれるご近所のおばさんに声をかけると待ち合わせに指定した
村はずれの巨木に到着するころには日が傾きかけていた。
私が準備している間に3人も身支度を整えていたらしい。
湯を使わせてもらったのだろう、とてもこざっぱりとしていた。
「では、ドゥーラさん、よろしくお願いします」
ヘルシャフトと交渉していた青年はファザーンと名乗った。
丁寧な物腰で、その容貌とあいまってとても好感が持てる。
そして残りの二人もざっくりと紹介してくれた。
ちょっとした小山のように大柄なのがガルディア。一番年長に見える。
腰に剣を下げ、硬そうな皮でできた鎧をつけているから護衛なんだろうか?
ガルディアと並ぶからか少し小柄に見えるけど私よりはずいぶん背が高いのが
ケルド。足の運びからも身軽なのがわかる。
挨拶もそこそこに、早速、薬草採取に出かけることにした。
道中で、彼らが王都の資産家クアンダーの娘が原因不明の病に倒れ、王都一の名医
から、集めるように言われたもので唯一手に入らなかったのが新鮮なブリスコラの花びらだったらしい。
若干8つで生死をさまよう女の子のことを思うと3人も急ぎ足になるらしい。
事情を知って勢い込んで歩いたものの、なかなか見つからない。
ブリスコラが群生しているのは人里離れた山の中腹の岩場だけど、暖かくなっては
花の盛りは終わっている。もし、狂い咲きしているとしたらもうあの場所しかない。
薬草採取を生業としているものには、自分の縄張りとか、秘密の採取場所がある。
それは、代々守っていたものであったり、人が決して踏み入れないような場所にあったり他人の縄張りなんかは踏み込んではならない領域とされている。
まずは、私の縄張りの山へ。岩場の陰に隠れている場所にあるかどうかを丁寧に見て回る。しかし、やはりすでに枯れて次の季節を待つものばかりだった。
もはや、あそこに行くしか手はないかもしれない。
「ファザーンさん、ガルディアさん、ケルドさん。今から同行してもらう場所は
一切口外しないことを……誰にも伝えないことを約束してもらえませんか」
私は3人に向いて言葉を発する。
3人は、それぞれを見渡してうなづく。
「今から向かうのは、一般の人間が踏み込んではいけない場所です」
私の思いつめた様子に息を呑むのがわかる。
おそらく、ヘルシャフトもあそこに踏み入れることを確信していたのだろう。
3人を伴って進みだしたさらに険しい道のりを、黙々と歩いていった。
空には降るほどの星。
いつもはここまで歩かないせいか足が悲鳴を上げている。徐々に遅くなる歩み。先を歩いている3人の背中が少し離れていく。
「大丈夫?ごめんね、女の子をこんな夜遅くに連れ出すことになってしまって」
どんどん遅れて来ている私をみて、ファザーンは済まなそうに腰をかがめる。
「こんなくらいで音を上げるなんざ、鍛え方が足りねぇってこった。若いのによ」
ガルディアは少し呆れながらため息を漏らす。
そんなガルディアに身軽な青年ケルドは軽口を返しガルディアのげんこつを華麗に
かわしている。
「すまねえ。俺たちの都合で連れ回してるのに気が利かなかったな……」
大柄なガルディアが背をかがめて謝ってきた。
「いいえ、ちょっと鍛錬が足りませんでしたね……」
私も、少しうつむいてため息をついた。
その時、視界が揺らいだ。
「ええ?!」
急に体がふわりと浮いたかと思うと視野が急に高くなった。
「すまねぇ。休ませてやりてえが病人が待ってるんだ。俺が抱えていくから口だけ動かせ」
ガルディアに抱き上げられている事を認識して、思わず口をパクパクとさせてしまう。
頬も急に熱を帯びる。
今までこんな形で男性に抱き上げられることなど皆無だった私は固まってしまった。
「おおっおっさん、大胆!!」
ケルドに冷やかされつつも、ふいっと横を向く。少し耳が赤い。
「おっさんって、失礼なやつだなぁ!俺はまだ28だ!!!」
ガルディアの一言に私はさらに固まった。見た目からしてもっと上かと思っていましたよ!
すみません!!と心の中でつぶやく私。
目の前に見えるガルディアさんの燃えるような赤い髪は汗でじっとりと濡れていた。
私の父親譲りの黒髪はひとまとめに結い上げているが、うなじから汗が噴き出している。
みんな疲れているのに、私だけ弱音は吐けない。
「ドゥーラさん、ガルディアの言う通り病人を待たせているので急ぎます。すみません」
ファザーンの一言で、私たちは道を急いだ。
明日、夜が明けてからの出発でもいいだろうにそうもいかないらしい。
すぐにでも出発したい様だったけどこっちだって準備がある。
一応乾燥した薬草に採取道具一式、日持ちする食料。水筒に水を汲み
何かと気にかけてくれるご近所のおばさんに声をかけると待ち合わせに指定した
村はずれの巨木に到着するころには日が傾きかけていた。
私が準備している間に3人も身支度を整えていたらしい。
湯を使わせてもらったのだろう、とてもこざっぱりとしていた。
「では、ドゥーラさん、よろしくお願いします」
ヘルシャフトと交渉していた青年はファザーンと名乗った。
丁寧な物腰で、その容貌とあいまってとても好感が持てる。
そして残りの二人もざっくりと紹介してくれた。
ちょっとした小山のように大柄なのがガルディア。一番年長に見える。
腰に剣を下げ、硬そうな皮でできた鎧をつけているから護衛なんだろうか?
ガルディアと並ぶからか少し小柄に見えるけど私よりはずいぶん背が高いのが
ケルド。足の運びからも身軽なのがわかる。
挨拶もそこそこに、早速、薬草採取に出かけることにした。
道中で、彼らが王都の資産家クアンダーの娘が原因不明の病に倒れ、王都一の名医
から、集めるように言われたもので唯一手に入らなかったのが新鮮なブリスコラの花びらだったらしい。
若干8つで生死をさまよう女の子のことを思うと3人も急ぎ足になるらしい。
事情を知って勢い込んで歩いたものの、なかなか見つからない。
ブリスコラが群生しているのは人里離れた山の中腹の岩場だけど、暖かくなっては
花の盛りは終わっている。もし、狂い咲きしているとしたらもうあの場所しかない。
薬草採取を生業としているものには、自分の縄張りとか、秘密の採取場所がある。
それは、代々守っていたものであったり、人が決して踏み入れないような場所にあったり他人の縄張りなんかは踏み込んではならない領域とされている。
まずは、私の縄張りの山へ。岩場の陰に隠れている場所にあるかどうかを丁寧に見て回る。しかし、やはりすでに枯れて次の季節を待つものばかりだった。
もはや、あそこに行くしか手はないかもしれない。
「ファザーンさん、ガルディアさん、ケルドさん。今から同行してもらう場所は
一切口外しないことを……誰にも伝えないことを約束してもらえませんか」
私は3人に向いて言葉を発する。
3人は、それぞれを見渡してうなづく。
「今から向かうのは、一般の人間が踏み込んではいけない場所です」
私の思いつめた様子に息を呑むのがわかる。
おそらく、ヘルシャフトもあそこに踏み入れることを確信していたのだろう。
3人を伴って進みだしたさらに険しい道のりを、黙々と歩いていった。
空には降るほどの星。
いつもはここまで歩かないせいか足が悲鳴を上げている。徐々に遅くなる歩み。先を歩いている3人の背中が少し離れていく。
「大丈夫?ごめんね、女の子をこんな夜遅くに連れ出すことになってしまって」
どんどん遅れて来ている私をみて、ファザーンは済まなそうに腰をかがめる。
「こんなくらいで音を上げるなんざ、鍛え方が足りねぇってこった。若いのによ」
ガルディアは少し呆れながらため息を漏らす。
そんなガルディアに身軽な青年ケルドは軽口を返しガルディアのげんこつを華麗に
かわしている。
「すまねえ。俺たちの都合で連れ回してるのに気が利かなかったな……」
大柄なガルディアが背をかがめて謝ってきた。
「いいえ、ちょっと鍛錬が足りませんでしたね……」
私も、少しうつむいてため息をついた。
その時、視界が揺らいだ。
「ええ?!」
急に体がふわりと浮いたかと思うと視野が急に高くなった。
「すまねぇ。休ませてやりてえが病人が待ってるんだ。俺が抱えていくから口だけ動かせ」
ガルディアに抱き上げられている事を認識して、思わず口をパクパクとさせてしまう。
頬も急に熱を帯びる。
今までこんな形で男性に抱き上げられることなど皆無だった私は固まってしまった。
「おおっおっさん、大胆!!」
ケルドに冷やかされつつも、ふいっと横を向く。少し耳が赤い。
「おっさんって、失礼なやつだなぁ!俺はまだ28だ!!!」
ガルディアの一言に私はさらに固まった。見た目からしてもっと上かと思っていましたよ!
すみません!!と心の中でつぶやく私。
目の前に見えるガルディアさんの燃えるような赤い髪は汗でじっとりと濡れていた。
私の父親譲りの黒髪はひとまとめに結い上げているが、うなじから汗が噴き出している。
みんな疲れているのに、私だけ弱音は吐けない。
「ドゥーラさん、ガルディアの言う通り病人を待たせているので急ぎます。すみません」
ファザーンの一言で、私たちは道を急いだ。
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