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眠り姫の見る夢は
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なんでガルディアがユーラーティ神官の手下のような事をしているの?
私は、必死にくちに手を当てた。声が漏れそうになるから。
先ほど漏れ聞こえた男たちの言葉が今の状況を繋げた。
捕虜になったガルディアは、今、神殿側に協力している、と。
どういう事なんだろう。何か意味があるんだろうか、それとも、裏切ったのか……。
混乱するばかりで身動きが取れない。
どれだけの時間が流れたのか、長いようで短かったかもしれないが足音は遠ざかってあたりには、また静けさが戻ってきた。
ガルディア……ひどい目に遭わされて仕方なく従っているの?
それとも何かを守るために渋々従っているの……?
アルカの街で初めて出会い、ブリスコラを手に入れるために旅をした事がまるで遠い昔の事ようだ。暖かい大きな手で頭をぐしゃぐしゃに撫でられたあの時今まで触れたことのないようなぬくもりを感じた。
アルカの街の人々は、親切にはしてくれるが、大罪を犯した人間の子供と表立って接触するのを極力控えていて、どこか一線引いたような人が大半だったから。
慣れない旅で疲れきり、足を止めた時も抱きかかえて洞窟へ連れて行ってくれた。
それも、サラエリーナの命がかかっていたから、必死で。
ガルディアは自分の為だけに手のひらを返すような人じゃない。
何か理由があるはずだ。そうに違いない。
色々な考えが浮かんでは消えるが、どれもしっくりこない。
いろいろ考えても答えの出ない事に時間を費やしている暇はない。
廊下に人影はいなくなっていた。ぼやぼやしていたら人が来るかもしれない。
寝ている子供を確認しないと。もしかしたらさらわれてきた子かもしれないし。
足音を忍ばせて、隣の部屋に進む。幸い鍵はかかっていないようだ。
広々とした石造りの部屋に、大きなベッドが置かれている。
天涯から吊るされた薄絹のカーテンの向こうに子供が眠っている。
そっと、絹のカーテンを避けて眠る子供の顔を確認すると、青ざめているけれど
かすかに胸が上下して息をしているサラエリーナが眠っていた。
美しい栗毛色の巻き毛はかすかに乱れている。衣装は、白の上質な光沢のあるドレスを
身にまとっている。
小さく名前を呼びかける。しかし、何の反応もない。
そっと揺すってみる。やはり眠ったままだ。
鼻に耳を寄せてみると、かすかだが規則正しい呼吸をしている。
その時、ふとナバート師の言葉が頭をよぎった。
《 話ではわしの作った薬を投薬して、解毒したという話だった》
もしや、一度解毒された薬を、再び投薬されたのかも。
では、もう一度解毒剤を与えれば、目覚めるのだろうか。
しかし、解毒剤は見当たらない。
《大事ななんとかと言っておったから、死んではおらんじゃろう 》
こんな幼い少女に一体何をさせようとしているんだろう。
この得体の知れない神殿に恐怖を感じる。
一刻も早くここから連れ出さなければ。
どうすれば、この子を救うことができるんだろう。
こんこんと眠り続けるサラエリーナを見て呆然と立つしかなかった。
眠る人間を担いで移動する力は私にはない。とにかく解毒剤を手に入れなければ。
ナバート師ならば、どんな毒を使われたか何か知っているかもしれない。
もう一度ナバート師のところへ取って返し、解毒剤をもらえないか頼んでみよう。
今の私では力不足もいいところだ……大人になったのに、力がない。
情け容赦のない現実だった。
そっと、サラエリーナの眠る部屋を後にして抜け道のつながる隣の部屋へと戻ろうとした時
不意にくちを塞がれ隣の部屋へ連れ込まれてしまった。
大きな手に、どこか安心感のあるぬくもり。
「なんでここにいるんだよ……」
脱力したような、聞き覚えのある懐かしい声。
黒装束を身にまとったガルディアが途方にくれた表情で私を抱きしめていた。
私は、必死にくちに手を当てた。声が漏れそうになるから。
先ほど漏れ聞こえた男たちの言葉が今の状況を繋げた。
捕虜になったガルディアは、今、神殿側に協力している、と。
どういう事なんだろう。何か意味があるんだろうか、それとも、裏切ったのか……。
混乱するばかりで身動きが取れない。
どれだけの時間が流れたのか、長いようで短かったかもしれないが足音は遠ざかってあたりには、また静けさが戻ってきた。
ガルディア……ひどい目に遭わされて仕方なく従っているの?
それとも何かを守るために渋々従っているの……?
アルカの街で初めて出会い、ブリスコラを手に入れるために旅をした事がまるで遠い昔の事ようだ。暖かい大きな手で頭をぐしゃぐしゃに撫でられたあの時今まで触れたことのないようなぬくもりを感じた。
アルカの街の人々は、親切にはしてくれるが、大罪を犯した人間の子供と表立って接触するのを極力控えていて、どこか一線引いたような人が大半だったから。
慣れない旅で疲れきり、足を止めた時も抱きかかえて洞窟へ連れて行ってくれた。
それも、サラエリーナの命がかかっていたから、必死で。
ガルディアは自分の為だけに手のひらを返すような人じゃない。
何か理由があるはずだ。そうに違いない。
色々な考えが浮かんでは消えるが、どれもしっくりこない。
いろいろ考えても答えの出ない事に時間を費やしている暇はない。
廊下に人影はいなくなっていた。ぼやぼやしていたら人が来るかもしれない。
寝ている子供を確認しないと。もしかしたらさらわれてきた子かもしれないし。
足音を忍ばせて、隣の部屋に進む。幸い鍵はかかっていないようだ。
広々とした石造りの部屋に、大きなベッドが置かれている。
天涯から吊るされた薄絹のカーテンの向こうに子供が眠っている。
そっと、絹のカーテンを避けて眠る子供の顔を確認すると、青ざめているけれど
かすかに胸が上下して息をしているサラエリーナが眠っていた。
美しい栗毛色の巻き毛はかすかに乱れている。衣装は、白の上質な光沢のあるドレスを
身にまとっている。
小さく名前を呼びかける。しかし、何の反応もない。
そっと揺すってみる。やはり眠ったままだ。
鼻に耳を寄せてみると、かすかだが規則正しい呼吸をしている。
その時、ふとナバート師の言葉が頭をよぎった。
《 話ではわしの作った薬を投薬して、解毒したという話だった》
もしや、一度解毒された薬を、再び投薬されたのかも。
では、もう一度解毒剤を与えれば、目覚めるのだろうか。
しかし、解毒剤は見当たらない。
《大事ななんとかと言っておったから、死んではおらんじゃろう 》
こんな幼い少女に一体何をさせようとしているんだろう。
この得体の知れない神殿に恐怖を感じる。
一刻も早くここから連れ出さなければ。
どうすれば、この子を救うことができるんだろう。
こんこんと眠り続けるサラエリーナを見て呆然と立つしかなかった。
眠る人間を担いで移動する力は私にはない。とにかく解毒剤を手に入れなければ。
ナバート師ならば、どんな毒を使われたか何か知っているかもしれない。
もう一度ナバート師のところへ取って返し、解毒剤をもらえないか頼んでみよう。
今の私では力不足もいいところだ……大人になったのに、力がない。
情け容赦のない現実だった。
そっと、サラエリーナの眠る部屋を後にして抜け道のつながる隣の部屋へと戻ろうとした時
不意にくちを塞がれ隣の部屋へ連れ込まれてしまった。
大きな手に、どこか安心感のあるぬくもり。
「なんでここにいるんだよ……」
脱力したような、聞き覚えのある懐かしい声。
黒装束を身にまとったガルディアが途方にくれた表情で私を抱きしめていた。
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