ヘタレ女の料理帖

津崎鈴子

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嵐は突然やってくる3

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翌朝、企画案を3つ出してみて、それぞれに意見をもらうことにした。

一つ目はそれぞれのお店に希望者を募り指導はそれぞれに任せるやり方。これは希望者が殺到する店の負担が半端ない事。時間制にするしか対応策が思いつかない。
二つ目は、空き店舗をその日だけ解放してワークショップを開催する。この場合は指導する先生の問題がある。
三つ目は逆に、ワークショップは、各店舗で行い、空き店舗に各店舗から格安で提供してもらった商品を並べて子供が販売するバザーのような店舗。

どちらにしても指導出来る大人の確保をどうするかなのよねぇ。

マサキさんに連絡したら、夕方に実行委員の若手が集まるというのでその時にプレゼンしてほしいとリクエストされたので待ち合わせることになった。


夕方までにエミさんと買い物に商店街に出かけると、おばあちゃんたちが井戸端会議をしていた。
みんな、シルバーカーを杖代わりに買い物に来た面々でいつもこの商店街の隅っこの休憩スペースで集まって楽しそうに話をしている。

「やぁ、今日もやってるねぇ!」

エミさんが声をかけると一斉に振り向き笑顔で挨拶をする。

「エミさんじゃないの。元気そうだねぇ。この間までいた若いのの代わり?」

おばちゃんたちの情報収集の貪欲さってある意味凄いなと思う。あの迫力には圧倒されるわ。

「ああ。この子は姉の孫なのよ。手伝ってもらっててね。イジメんじゃないわよ」
と、エミさんが笑っておばあさんたちに紹介する。

「よろしくお願いします。ユキです」

「そうだ。あんたたち、ユキちゃんは商店街で何かイベントをするらしいから協力してやってね。頼りにしてるよ」

 とエミさんは、おばあさんたちに声をかける。
エミさんによると、このおばあさんたちは、情報収集のネットワークがあるらしい。
中には仕事を譲って隠居している人たちもいるらしい。基本仕事はしないけど時間を持て余している人ばかりだという。

「今、子供の為のイベントを企画を提案してるんですけど、ひとりで考えてると煮詰まっちゃって」

と、おばあさんたちに冗談っぽく弱音を吐いていると、おばあさんたちのリーダー格の人が話を聞かせてみなさい、と親切に言ってくれたので甘えることにする。

実行委員さんの前に市場調査よろしくプレゼンをしてみた。

すると、いろんな質問が飛んできた。横文字の言葉がわかりにくかったらしい。でもおばあちゃんたちは案外柔軟に耳を傾けてくれている。年がいくと頭が固いもんだって思っていたけど、女性はエミさん筆頭に年が寄ってても柔軟な思考を持っている人がいることを実感する。

「ワークショップっていうのは、体験型の講習会のようなものなんです。よく街角でやってる、キャンドルづくりとか、ブックカバー作りとかフラワーアレンジとかみんなで楽しむんです」

「その講習会でなにやるの?」
「先生をしてくださる方によるかと思うんですけど、人脈がなくて」

「材料費とかは持ち寄りなの?それとも参加費を払って道具を買うの?」
「いえ、参加費はいただこうと思ってるんですけど、そこのところもどうするかまだ分からなくて」

なんか、質問されると、ひとりではわからなかった穴が見つかるなぁ。

「商店街を盛り上げるイベントなんだから、外部から先生呼ぶのはもったいないよ」
おばあさんのひとりがいう。

「そうだよ。手芸店のキクさんとか、花屋のユミさんなんか先生にどうだい?教えるの上手いよ?」

おばあさんたちによると、商店街で隠居しているおばあさんたちを使えばいいという。
商店街の為なら一肌脱いでくれるだろうと太鼓判を押す。

「手伝いくらいなら暇人の私らも出来るよ。私らだってまだまだ捨てたもんじゃないんだから」

じ、人材と人件費が一気に片付いた気がする……。

その意見も踏まえてもう一回練り直さなきゃ。

「なんだったらエミさんも英会話教室をやりゃあいいじゃないの。昔みたいに」

おばあさんたちがとんでもないことを言い出した。

「そうね、一日くらいならいいよ」

エミさんもノリノリだった。うわっすごい売りが出来たかも。

一応、このことも補足して、夕方、商店街の会議室に向かった。

実行委員の若手は、目を丸くしてプレゼンを聞いていたけど、老人マンパワーの活用までは考えていなかったらしく、おばあちゃんたちの意見にさらに補足的な意見をまとめてどんどんアイデアが固まっていく。

夜遅くまで喧々諤々と意見を戦わせ、すり合わせ決定稿を完成させた。

あとは、商店街のご意見番たちにこの案をぶつけるだけだった。
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