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クモの糸
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前置き。
ここの話から、ざまあ表現が入り始めます。好きじゃない方は、ご注意ください。
==================================
何でもない日常が戻ってきて、のんびりとしていた午後、思いがけないメールが届いた。
差出人は元同僚で同期だったクミちゃん。仲良かったけどしばらく連絡はなかった。
件名は「大至急!!」
なんだか気になって本文を読むと、どうやら元職場の同僚や元上司たちにテルとあいちゃんの結婚式の招待状が届き始めているらしい。
ああ、この間テルの妹のハルカちゃんが来た時にお腹が目立たないうちに式を挙げるからって言ってたなぁとのんびり考えていた。
【あいちゃんの相手、あんたのカレシじゃなかった?結婚寸前の】
たしかにそろそろ婚約するかもと言ってた話はそんなに大きな会社じゃないし知れ渡ってて、何回か飲み会の時に飲みすぎて迎えに来てもらった時に紹介してるから知ってる人も多いとは思う。
そういえば、私がテルと別れた話なんて出来ないまま職場を去ったし今更だなと思ったりはしたけど、もう私とは別れたし、今後のことも知りたくないからその件に関しての連絡不要、とだけメールした。
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・
そんなメールのこと、すっかり頭から消し去って買い物に商店街に出かけた私は、信じられない物を見た。
八百屋のタカシさんが、女性と深刻に何か話をしている。
遠目で女性の後姿しかわからないけど、なんか見覚えあるような気がしていた。うーーん。誰だっけ。
ふと、その女性が別の方向を向いたときに一瞬見えた怒りのオーラ。その様子に恐れおののく様子のタカシさん。何やったの?修羅場ですか?
その女性は、別の方向へ歩き出した。
タカシさんは深いため息をついていた。
まぁタカシさんもモテるからなぁ。修羅場もあるんだろうけどもっと上手くやってる印象だった。モテる男は辛いんだね。と勝手に解釈していたら、タカシさんこちらを振り向いた。
お互いに目が合う。
き、気まずい。
「やぁ、ユキちゃん今日も元気そうだね~」と、タカシさんは能天気に話しかけてきた。
「こんにちわ、タカシさん。あの、さっきの女の人……」
は、しまった。余計なことを言っちゃったわダメだ。つい聞きたいっていう本音が…………。
「ああ、学生の頃の先輩でね。その人から頼まれごとをしてたんだ」
「勘違いしてました。修羅場なのかなって。あはは……」
固まる空気。でも、苦笑いで頭を掻きながらタカシさんは話してくれる。
「彼女は、学生の頃の先輩でカリスマ的な人なんだ。怖くて逆らえないんだよ、今でもね」
怖くて逆らえない割に、すごく懐かしそうな仄かな笑顔に、その言葉通りではないのがわかる。
「タカシさんの学生の頃かぁ。どんな人だったんですか?」
「うーーん。ユキちゃんにドン引きされそうだから秘密♪」
秘密って。ドン引きされる過去ってちょっと興味あるなぁ。
そういえばタカシさんってなんかつかみどころがない印象がある。
ノンフレームの奥の切れ長の眼が涼やかで冴え冴えとしているのに、笑顔だからそれがわかりにくい。柳に風というように、いろんな会話を軽くさらりと受け流す。人生の酸いも甘いも嚙分けた熟年マダムにはその話術が心地よいとファンが多いって話もある。謎だ。
そのまま一緒に八百屋まで行き、エミさんに頼まれた品物を買い、一言二言軽口をいいつつタカシさんと別れて家に帰る途中、スマホの着信音が鳴る。両手に荷物だから出られない。誰からだろう、と思っているが一向に鳴りやまないので仕方なく商店街の外れのベンチが今誰もいないのをみてそこで座り、荷物を横に置きスマホを確認。画面には高校の同級生のトモちゃんからだった。トモちゃん、結婚して他県に嫁いでいるから年賀状とかそれぞれの誕生日にメールするくらいしか今は交流ないけどとても仲が良く、結婚式にはお互い呼ぼうという協定を取り交わした親友のひとりだ。久しぶりだなぁ。なんかあったのかな?と、軽く思って電話に出ると、トモちゃんはお久しぶりーといつもののんびりした口調で少し季節の挨拶とか近況を話した。そして少しためらった感じから思い切ってちょっと聞きたいことがあるんだけどと話を切り出してきた。
《ねえ、テルと別れたの?年賀状にはそろそろ婚約するかもって書いてたのになんかあったの?》
「ああ、ごめん。色々あってね、別れたのよね」淡々と話す。胃の底が凍り付きそう。
《実は、テルから招待状届いたんだよね。でも相手、ユキちゃんじゃないしおかしいと思ったの》
「そっか。私は招待されてないから知らなかったわ」
つい憎まれ口が出てしまう。なんか、思っていたよりも吹っ切れてないのかな。
トモちゃん、何かを察したのか、地元の話題に話をシフトしていってくれた。
ここの話から、ざまあ表現が入り始めます。好きじゃない方は、ご注意ください。
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何でもない日常が戻ってきて、のんびりとしていた午後、思いがけないメールが届いた。
差出人は元同僚で同期だったクミちゃん。仲良かったけどしばらく連絡はなかった。
件名は「大至急!!」
なんだか気になって本文を読むと、どうやら元職場の同僚や元上司たちにテルとあいちゃんの結婚式の招待状が届き始めているらしい。
ああ、この間テルの妹のハルカちゃんが来た時にお腹が目立たないうちに式を挙げるからって言ってたなぁとのんびり考えていた。
【あいちゃんの相手、あんたのカレシじゃなかった?結婚寸前の】
たしかにそろそろ婚約するかもと言ってた話はそんなに大きな会社じゃないし知れ渡ってて、何回か飲み会の時に飲みすぎて迎えに来てもらった時に紹介してるから知ってる人も多いとは思う。
そういえば、私がテルと別れた話なんて出来ないまま職場を去ったし今更だなと思ったりはしたけど、もう私とは別れたし、今後のことも知りたくないからその件に関しての連絡不要、とだけメールした。
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・
そんなメールのこと、すっかり頭から消し去って買い物に商店街に出かけた私は、信じられない物を見た。
八百屋のタカシさんが、女性と深刻に何か話をしている。
遠目で女性の後姿しかわからないけど、なんか見覚えあるような気がしていた。うーーん。誰だっけ。
ふと、その女性が別の方向を向いたときに一瞬見えた怒りのオーラ。その様子に恐れおののく様子のタカシさん。何やったの?修羅場ですか?
その女性は、別の方向へ歩き出した。
タカシさんは深いため息をついていた。
まぁタカシさんもモテるからなぁ。修羅場もあるんだろうけどもっと上手くやってる印象だった。モテる男は辛いんだね。と勝手に解釈していたら、タカシさんこちらを振り向いた。
お互いに目が合う。
き、気まずい。
「やぁ、ユキちゃん今日も元気そうだね~」と、タカシさんは能天気に話しかけてきた。
「こんにちわ、タカシさん。あの、さっきの女の人……」
は、しまった。余計なことを言っちゃったわダメだ。つい聞きたいっていう本音が…………。
「ああ、学生の頃の先輩でね。その人から頼まれごとをしてたんだ」
「勘違いしてました。修羅場なのかなって。あはは……」
固まる空気。でも、苦笑いで頭を掻きながらタカシさんは話してくれる。
「彼女は、学生の頃の先輩でカリスマ的な人なんだ。怖くて逆らえないんだよ、今でもね」
怖くて逆らえない割に、すごく懐かしそうな仄かな笑顔に、その言葉通りではないのがわかる。
「タカシさんの学生の頃かぁ。どんな人だったんですか?」
「うーーん。ユキちゃんにドン引きされそうだから秘密♪」
秘密って。ドン引きされる過去ってちょっと興味あるなぁ。
そういえばタカシさんってなんかつかみどころがない印象がある。
ノンフレームの奥の切れ長の眼が涼やかで冴え冴えとしているのに、笑顔だからそれがわかりにくい。柳に風というように、いろんな会話を軽くさらりと受け流す。人生の酸いも甘いも嚙分けた熟年マダムにはその話術が心地よいとファンが多いって話もある。謎だ。
そのまま一緒に八百屋まで行き、エミさんに頼まれた品物を買い、一言二言軽口をいいつつタカシさんと別れて家に帰る途中、スマホの着信音が鳴る。両手に荷物だから出られない。誰からだろう、と思っているが一向に鳴りやまないので仕方なく商店街の外れのベンチが今誰もいないのをみてそこで座り、荷物を横に置きスマホを確認。画面には高校の同級生のトモちゃんからだった。トモちゃん、結婚して他県に嫁いでいるから年賀状とかそれぞれの誕生日にメールするくらいしか今は交流ないけどとても仲が良く、結婚式にはお互い呼ぼうという協定を取り交わした親友のひとりだ。久しぶりだなぁ。なんかあったのかな?と、軽く思って電話に出ると、トモちゃんはお久しぶりーといつもののんびりした口調で少し季節の挨拶とか近況を話した。そして少しためらった感じから思い切ってちょっと聞きたいことがあるんだけどと話を切り出してきた。
《ねえ、テルと別れたの?年賀状にはそろそろ婚約するかもって書いてたのになんかあったの?》
「ああ、ごめん。色々あってね、別れたのよね」淡々と話す。胃の底が凍り付きそう。
《実は、テルから招待状届いたんだよね。でも相手、ユキちゃんじゃないしおかしいと思ったの》
「そっか。私は招待されてないから知らなかったわ」
つい憎まれ口が出てしまう。なんか、思っていたよりも吹っ切れてないのかな。
トモちゃん、何かを察したのか、地元の話題に話をシフトしていってくれた。
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