ヘタレ女の料理帖

津崎鈴子

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眠り姫が目覚めたあとに4

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 早速家に帰ってヨーコさんにお礼を言おうとエミさんの部屋に寄る。

「ただいまー」

中からは、エミさんがお帰りーと控えめに声を返してくれる。
ふすまをそっと開けると、ヨーコさん、エミさんのベッドの足元で転寝していた。

風邪をひいてもいけないから、そっとひざ掛けをかける。

エミさんは、ヨーコさんを慈しむように見つめる。

「楽しかったようね。よかったわ」

エミさんはにっこりと微笑む。

お世話で疲れているヨーコさんを起こさないようにアイコンタクトで自分の部屋に戻ってきた。

さて、早速企画書をまとめよう。

商店街の若者が、出会いがなくて嘆いていたから、なんとか出会いになるような場を気軽に楽しめるイベントってどういう切り口で行こうかなぁ。

パソコンを立ち上げて箇条書きでアイデアをどんどん出していく。
頭に思いつくままのキーワードを出していく。


☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・

集中していると、背中に温かさと重みが加わった。
振り向くと、真剣な顔をしたヨーコさんがモニターをのぞき込んでいる。

「ふんふん、なになに…………街コン?商店街の夏祭りの企画?」

「え、うんそう。商店街の若手が出会いがないって嘆いていたから出会いの切っ掛けになるようなイベントが出来ないかって企画案作ってるところなんだ」

「へえ。いいんじゃない? 目の付け所はいいと思うよ。ただ、これ、気を付けないとトラブルになる可能性もあるから企画段階でしっかりトラブル対策を練っておいて対応できるスタッフ揃えないと厳しいね」

 ヨーコさんが、この企画を見た感想としては、まず恋人探しがメインになりすぎて特定の異性に人気が集中しすぎるだろう事、あぶれた人間のフォローをどうするか、独身の人間を狙ってお遊び目的の既婚者が紛れ込むのを水際で防げないだろう事、ここで知り合った人たちが、詐欺に引っかかったりで騙された場合、クレームが出るだろう事。イベント開催の時間帯によってはお酒が入って暴力沙汰になることも予想できるから開催時間をどうするか。おすすめはランチの時間帯がいいって。明るいしお開きにしやすいからって。

 すごいなぁ。一目見てここまでの意見が出せるのってすごい。

「とにかく、商店街側でどこまでのことができるかをそのざっとしたのでいいから見せたら?」

ヨーコさん、そのぐらいの方が意見に幅が出ると太鼓判を押す。

「ありがとう、ヨーコさん、そうするわ」
「もちろん、私も手伝うよ。面白そうじゃん。それに、その企画内容なら腕っぷしの強いのがスタッフに多い方がいいよ」

ヨーコさん、何気に私強いんですけどってアピールしてる?

ああ、そういえば、エイジさんやユージさんとか商店街の若手はヨーコさんの名前を出したらビビってたなぁ。そういう事なのか。と納得。

そうして企画案をプリントして明日に備えることにした。


翌日、さっそくマサキさんとタカシさんに企画を話した。

面白そうだけど、と言ってくれたものの少し歯切れが悪い。

商店街の若手からの意見もあって出会いの切っ掛けになればって企画したんだけどと説明すると
マサキさんが、思い切ったのか意見を出してきた。

「運営には、俺とタカシとユキちゃんが参加するんだよね?」

固い声だ。うん、そのつもりと答える。

「裏方スタッフに徹するんだよね?」

念押しがすごい。

「もちろんだよ。私が出した企画だしね」

「参加者には混ざらないよね?参加人数少ないとか、女性の比率が悪くても」

ん?マサキさん、すごく心配してくれてるなぁ。もしかしや、やきもち?

いや、自意識過剰だよなぁ、こんなこと思うなんて。

「まぁね。ヨーコさんも手伝ってくれるから私が参加者に混ざることは無いわ」
そのひとことに、タカシさんもマサキさんも目を瞠って驚いた。

「ど、どっちで参加するって?!」

声がハモる。

「もちろん、運営側だって。腕っぷしが強い人が多い方がいいって言ってたから」

そっちかぁ、ってふたりあからさまにホッとしてる。

全く、ヨーコさんの過去が少し興味あるなぁ。商店街の男性陣ほぼ全員にビビられてるヨーコさん最強すぎる。
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