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序章
事の発端2
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おそらく、俺は死んだと思う。
目の前にパソコンがないし、体がない。
手のひらを見ようとしても見えない。
ってか、指が動かせない!
この展開、これから俺は天国か地獄に行くかのジャッジメントが待ってるんだな。
『――聞こえますか?』
ほい来た!
直接頭の中に語りかけるような透き通った声!
ラノベを読んできた経験上、この人は女神とかそう言う類の人物だ!
「はい、聞こえますよ女神様!」
『あら、順応性が高いのですね。そうですよ、私はあなたの世界を担当している女神です』
だろうな、と俺はドヤ顔して見せ……たいけど、今の俺はどんな形のものなのかわからない。
口が動いてるのは分かるけど。
「あれですよね、俺を天国か地獄のどちらかに生かせるジャッジメント的なやつですよね?」
核心に迫る。
俺は生前、ラノベを2万冊は読んできた。
異世界転生モノなら、この展開は数多と見てきた。
故に、いちいち説明されるのは洒落臭い。
『ジャッジメント……少し違いますが、あなたのこれからの運命を告げるために現れました』
あ、運命の選択パターン!
転生ものでは妥当な展開だな。
勇者に転生するか、能力のない人間に転生するとか!
「もしかして、俺を転生させてくれるとかですか?」
『あら、本当に熟知しているのですね。あなたのような勘の良い人は嫌いじゃないですよ』
女神は、急にどっかで聞いたことがあるようなフレーズをぶっ込んできた。
もしかして、女神って地球の漫画文化に精通してたりするのか?
女神に錬金術師の概念など理解できない気もするけど。
随分と俺の頭の中の女神のイメージをぶっ壊してきたな。
『では、あなたには細かい説明はしません。これからあなたは人生を豊かにするために、ある魔法学が発展した世界に転生してもらいます』
魔法学が発展した世界、つまり異世界だ!
よかった、また普通の世界でオギャアと泣くのは面倒だしな。
それにしても、ラノベ作家としては、この経験はすげぇラッキーなことだ!
本当の転生を経験すれば、その実体験をラノベに書くことができる!
って、ファンタジー世界に転生するのにまだファンタジーを書きたいと思ってるぞ俺!
「分かりました! 転生します! ちなみに、転生する目的はなんですか? 魔王討伐とかハーレムを作れとかスローライフしろとかなんでも請け負いますよ!」
俺は夢のような展開を前にして女神に質問をマシンガンのように撃ち出すが、
『ううんっ……。恐らく、あなたが考えているような王道ファンタジー系の転生ではないと思いますが』
なんだと?
それは一体どういうことなんだ?
よりも、女神が『王道ファンタジー系』とか言ったらダメでしょうが!
メタ発言は御法度だぞ素人女神!
「ということはつまりどういう転生なんですか?」
『あなたは、生前にライトノベルを書く仕事をしていました。しかし、あなたは心半ばにして倒れました』
「そうですね。心半ばですね」
『そのため次回の転生先は、再びあなた自身にしようと考えたのですよ』
「んっ?」
女神が謎発言をし始めた。
転生先が、俺自身?
『あなたは夢を叶えるために死んだ。きっと、あなたは再び小説家になりたいと望んでおいででしょう。だったら、一度死んだその体にもう一度戻るという提案をしてるのです』
「なるほど! 俺は死んだけど、もう一回蘇らせてくれるってことですね!」
そう言う提案か。
確かに、俺は異世界で魔物と戦うとかのんびり過ごすよりも、ラノベを書いていたい。
でも、少し残念だな。
てっきり異世界で色々な情報を得られて良いなって思ったのだが。
「え、待ってください! さっき、俺に『ある魔法学が発展した世界に転生』だって言いましたよね? その話はどうなったんですか?」
『もちろんこれから魔法の世界に転生はしますよ。ただ、一度死んだ体に戻ると言うのには些か面倒な手続きが必要なんです』
「手続き? 試練とかそう言うやつですか?」
『本当、察しがいいですね。さすがはラノベヲタクさんです』
えへへ、女神に褒められたよ。
じゃない、誰がヲタクだこのやろう!
『あなたがおっしゃった通り、こちら側から試練を与えます。試練は、あなたの仕事に関するものを採用させていただきます。もちろん、試練はライトノベルをモチーフに作らせていただいています』
「試練がラノベモチーフ? そいつはまた画期的な試練ですね。お言葉ですが、そう言うのってラノベでは『ご都合主義』って言葉で嬲られるんですが、そこんところはどうなんですか?」
「ううん……」
返事がない。
これはつまり、女神の言動に対して論破キメ技が入った証拠なのでは?!
『も、もういいです! とにかく、あなたには試練を受けてもらいます! そう言う取り決めなので!』
「あ、取り決めって言った! ちなみになんですけど、俺はなんでこんなご都合主義な試練を受けるんですか! 面倒な手続きとかって、実はそんなに大切なことではないんじゃないですか?!」
俺は大いに女神に噛みつく!
数々のラノベを読んできてるから分かる、この展開はまさに『クソラノベ』の香りがするぞ!
『では、サヨナラ~』
「なんで俺は試練を受けなきゃならない! それだけでもいいから答えてくれよ女神様!」
実体のない体が白く光るのが分かる!
これからきっと転生が始まってどっかの世界に放り出されるんだ!
その前に、転生させる側がどういう気持ちなのかを聞いておきたい!
『そんなの、神の暇つぶしに決まってるじゃないですか。あなたの【ラノベ】が面白ければ、全能神様が蘇生をしてくれるらしいので!』
「あぁぁぁぁぁぁ! やっぱり転生する理由って、神様の暇つぶしなんだなぁぁぁぁ!」
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