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第三章 主人公、投獄!
19.投獄完了!
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クソラノベで共通する事は、『人生なんてイージーモード』である事だ。
主人公が無双するラノベは、正直言って俺は好きだ。
異世界にユニークスキルを持って生まれ、原住民たちの言語を翻弄しながら勇者として成り上がっていく様は非常に痛快で、主人公につい惚れ込んでしまう。
デメリットはその主人公になりきってラノベを読むことができないところか。
強すぎるが故に、『へぇ、主人公強いんや』って感想しか出てこず、この主人公は俺だ! って感情移入ができなくなってしまう(俺は無理だ)。
ただし、主人公が最強ではない無双ラノベもある。
それは、その異世界全てがイージーモードであるからだ。
原住民たちは毎日のように汗水垂らして働いている中、主人公が持って生まれた最弱ユニークスキルにより一瞬で億万長者になる……ってクソラノベだ。
まず、考えてみて欲しい。
例えば、主人公が『石炭を生成する』ってスキルを持って転生したとする。
「うわー、石炭生成とか、魔法じゃないじゃん! ハズレスキルだわwwwww」とか序盤に叫ぶんだよクソラノベ主人公は。
だが、その主人公は石炭を生成して町で売り、巨額の富を得ることと、石炭生成を生かした炎魔法を扱うことになる未来が目に見えている。
その石炭が無尽蔵に作り出せるのなら、もうそれは無双レベルの強力なスキルになるだろう。
石炭を売り、金を巻き上げ、ある地域の財政は破綻して、努力もしない主人公は今日も笑っている。
あぁ、この世界ってイージーモードだわ!
少年。
そんな簡単な世界があるわけがない。
需要と供給のグラフのデータがある通り、急激なモノの供給を行うと、需要は反比例のように下がり続ける。
大量に石炭を売る事で、石炭の価格は大幅に下落して、最後には石ころと同じ扱いにされる。
そもそも、中世時代ではまだ石炭は重宝されておらず、蒸気機関なんかはまだまだ先の話だ!
働け、主人公なら!
金稼ぎはそんな甘いもんじゃないって事だ!
努力しろ、主人公なら!
そんなにお前が石炭で儲けないんなら、勉強して蒸気機関を完成させてみやがれ!
その上で石炭を売るんだったら、俺は認めてやっても良い!
なぜならば、絶え間ない努力による主人公だけの特権になるからだ!
◆
ここは、カナヤの牢獄。
この物語の主人公を語らせていただいております、設定では17歳のノベルという者でございます。
さて、本日はこのカナヤの牢獄のレビューをさせていただきたいと思います。
あら、なんということでしょう!
牢屋の至る箇所に砂が散乱しております!
ここはどれほどの期間、掃除されていないのでしょうか!
ブタバコと言うだけあって、牢屋の中は非常に芳ばしい臭いが漂っております!
太陽光は窓のような鉄格子からしか入って来ない。
夜の明かりは鉄格子の外にある3本のローソクのみの様です!
5畳ほどの狭い空間に、粗悪な洋式トイレが1つ、洗面台と小さな鏡、積まれたワラはベッドでしょうか?
それと嬉しいサプライズ付き!
俺の目の前には、厳つい角を持った竜人族らしき囚人がいます!
まさかのガチ罪人と同居ですか!
これはラノベではなかなか聞かない展開となります!
あぁ、あまりにも素晴らしい環境が整っていて、俺ってば涙が止まりません!
人生初の監獄デビュー!
投獄された事実なんて、ママには絶対に知られたくないですね!
「おいおい新入り。情けねぇツラで泣いてっかよ。もうシャバが恋しいか?」
うわぁっ喋ったこの人!
「恋しいっすよ! 早く外に出て、待ってくれてる仲間に会いたいっす!」
俺は涙を止めるためにズビズビと鼻を啜ると、竜人らしき男が俺の方に手を差し伸べて来る。
俺はガチ罪人である彼の手に怯えて反射で避けてしまうが、「殺すぞ!」みたいな暴力的な雰囲気は出してこない。
「おお、驚かせたかすまんすまん。俺様の名はハイライター・ドラム! 訳あってここに収監されてる罪人さ」
竜人っぽい人・ハイライターは俺にそう言って握手を求めてきたのだ。
竜人っぽいと言えど、人間の顔立ちと全く同じだ。
手足は竜のように爪があって鱗があるからそう判断したのだが。
白い髪の毛に青白い目、筋肉質な腕と、鱗だらけの両足。
背中には折り畳まれたゴリゴリの翼がある。
この世界には人間・竜人・妖精・亜人・獣人しかいない。
ハイライターの側頭部についてる禍々しい天へと向かう角、力強い翼と言い、おそらく竜なんだろうけど……。
「お、俺の名前はノベルです。俺も訳ありでここに収監されてます。よろしくお願いします」
「おうっ! とりあえず、これから世話になるってことで握手だ! よろしくぅ!」
俺は彼の手を取り、力強く握手をし……いだだだだだだだだだだだ!
「ぬおっ! すまない新入り! 久しぶりに握手をしたものだから、加減が分からんかった! すまないすまない! わっはははははは!」
「いたぁっ! わざとじゃないでしょうね?」
「はっはっはっ! すまんな! 鍛錬を積んでいるからって加減できん理由にはならんわな!」
ハイライターはそう言って自分の鱗だらけの足をバシバシと叩く。
やはり、この人は竜人だったか。
この世界で単純に攻撃力が高い種族は竜人って言ってたからな。
そりゃ加減とか分からんでも仕方がない……そんなことより、俺を虐めたりしないよね?
「ってか、硬くなるなよ兄弟! 敬語は竜鱗に受け付けねえ! 俺様も今日ここに収監されたばっかりだし、ここは爆発的にタメで行こうじゃないか!」
ハイライターは俺の肩に手を回すと、嬉しそうに笑うのだ。
……なんだ、この人は悪い人じゃないのか?
随分とフランクで話しやすそうな人だが。
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