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第三章 主人公、投獄!
20.新竜人族・ハイライター
しおりを挟む「わか、わかったよ。竜人族は怖いイメージがあったけど、ハイライターはそうでもないんだな」
「そのイメージは旧竜人族だろう? 言っておくが、俺様は旧型とは別だ! 旧竜人族とは違う、俺様は新竜人族だ! 失礼な奴だなまったく!」
はっ、なるほど!
街の中でよく見かける、竜の顔をしてるけど人間みたいに歩く奴らは旧型の竜人・ドラゴニュートで、人間の顔をしていてるのに特徴が竜なのが新型の竜人・ドラゴニアンなのか!
つまり、『旧』の方は純製竜人で、『新』の方は人間の遺伝子が強い竜人ってことだ!
「俺、実は過去に色々あって、この世界の常識に疎いんだよ。旧と新の竜人の違いって教えてもらえるか?」
「おおっ。今時、竜人について知らない奴なんて珍しいな。旧竜人族ってのはな、基本的に魔法は使えないんだ。魔力がほぼゼロだからな。その代わりに、口から炎を吐き出したり、武器を持って戦う。新竜人族は、人間族と同じように魔力が高いんだ。口から炎を出せるし、魔法もこの通りだ!」
と、ハイライターは手元に氷を作り出すと、口から吐き出した炎でそれをドロドロに溶かした。
なるほど、旧と新でこれだけの格差が出てしまうのか。
旧の方はなかなか不憫な設定を持ってるんだなぁ。
「え、ちょっと待て! なんで詠唱無しで魔法が撃てるんだ?」
俺は先の追加設定で『呪文の詠唱を簡略化する』と書いた!
詳細には、『詠唱は指に力を入れながら、その魔法の名前を唱える』って設定したのに!
こうしなきゃ、俺と戦う敵が何の魔法を使ったかが判明しないからだ!
なのに、ハイライターは無詠唱で氷を作り出しやがった!
「なんだ、無詠唱がそんなに珍しいか?」
「珍しい……どうしてハイライターは詠唱無しで呪文が撃てるようになったんだ? まさかとは思うが、神様から貰ったスキルとか言い出さないだろうな?」
俺は設定記入をミスしたか、それともまだこの世界にチート級のスキルがあるのかと疑問を持つ。
まぁ、どうせ後者が正解なのだろうが。
「新竜人族特有の魔力だぞ、本当に何も知らないんだな。ある程度の努力をすれば、新竜人種なら誰だってこの技は得られる」
「そ、そうなんだな、はははは……」
そんな常識、どのラノベにも書いてない!
てことは、新竜人族って実質最強の種族なんじゃないか?!
「そんなことよりもノベル! お前はどんな罪でここに収監されてんだ?」
「えっ。えっと……国家転覆を企てた罪で」
「は、マジかよ! わっははははっ! まさか、この街のマスターを倒せるとか思ってたのか?! あー、腹いてぇ~!」
と、ハイライターはわざとらしいくらいに大笑いをして腐りやがった。
なんだ、俺を苛立たせたいが為の演技か?
「そんでそんで! ノベルはマスターを倒せるくらい強いのか?」
「そりゃ分からんけど……って! 俺は別に国家転覆とか考えてる訳じゃない! これは何かの間違いなんだよ! 最高騎士長って馬鹿が俺をこの監獄に入れやがったんだ!」
俺はどうしようもないイラだちを消化しようとハイライターに文句をぶつけると、彼は腹を抱えて笑い転げる始末。
「はー、やっべぇな! マスターと戦う意志を見せるだけでも相当な覚悟が必要だぞ! 何せ、この街のマスターは三大賢者の1人なんだからな! そのマスターに勝てりゃ、この街を統べる夢も叶うかもなっぷすっ」
ど、どこまでも馬鹿にしやがって!
ハイライターのやつ、やっぱり俺のことを揶揄うために話を聞き出してやがる!
今更言うけど、この街のマスターになりたいだなんて、子供の夢もいいとこだ!
異世界の常識も知らないのに、この街の首相になりたいだなんて言ってるようなものだ!
ガキの将来の夢じゃあるまいし!
「はぁ、おかしいおかしい。だが、ノベルの度胸は本物だ。あの三人衆の猛攻を肌で止めたって実力なら、努力次第では、マスターに勝てるようなポテンシャルはあるんじゃないか?」
「え?」
俺は、ハイライターの真面目そうな顔を見てドキッとした。
急に空気が変わったように見えた。
ってか、あの三人衆って誰のことだ?
もしかして、三人衆って、チンピラ傭兵クンたちのことか?!
なんでこいつがそんなことを知ってる?!
「俺様はな、昔から鍛錬を怠ったことがない。毎日腕立て・腹筋・背筋・スクワット・バーピーを1000回している!」
ハイライターは床にうつ伏せると、その場で腕立てを始めたのだ!
筋肉が伸び縮みするたびに、ばちんと面白い音を立てる。
それほど、竜人族の筋肉はしなりが良く、ゴムみたく柔軟に伸び縮みするのだろう。
「俺様は、昔から体が弱かった。筋トレなんて30回出来たら万々歳だった。だが、俺様はそれじゃ満足しなかった。どうせなら、100回、200回、1000回したほうがカッコいいだろ!」
俺の目の前で高速で筋トレを始めるハイライター!
なんのスイッチが入ったのか分からないが、彼のその姿勢からはものすごい熱意が伝わってくる!
「ノベルも俺様と一緒に筋トレしないか?」
「え、あ! やるわ! そしたら!」
「筋トレして、マスターを倒す夢を俺様と追おうじゃないか! わっはははははは!」
ハイライターは高笑いしながら、楽しそうに筋トレを続けるのだ。
俺も、彼の横に並び、微力ながらも筋トレを開始する。
なんでこんな風なノリになったのかは分からないけど、そのうちシャバに出た時に強くなっているのならばこれでもいいか!
「まずノベルは筋トレ100回ずつを目標にしろ! いいな兄弟!」
「おう、わかったぜ兄弟!」
――こうして、俺とハイライターとの地獄の筋トレ訓練が幕を開けたのである!
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