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第七章 ノベルvsイレイザー

52.銃vs拳法

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 ◆

『ステイプラーの操るフリントロック式銃はどういう仕組みなんだ?』

『あれはね、召喚武器だよ。私の特有魔力は増幅。寝ている時に念じた武器をいくつも呼び出せるの』

『なるほどな。それで、500丁の銃を街中に垂らしてると?』

『うん。でも、その力はもうノベルのもの。ちゃんと使いこなしてね?』

『おうさ! ちなみになんだけど、銃のデザインってのは自分で決められるものなのか?』

 ◆

 ハイライターの号令の瞬間、イレイザーの姿がもう目の前に!
 彼はこのカナヤでたった1人の拳法使いらしい!
 それもそのはず、魔法や武器戦闘が発展しているこの異世界で拳法なんざ流行るわけがない!
 それなのに、イレイザーがわざわざ『拳』なんて武器を選んだ理由はたった1つ!
 ――身を賭してまで一撃必殺を与えてくる諸刃もろはな瞬間特攻しかない!

「詰みだね、ノベルくん」

「まぁ、くなよ先輩」

 ――俺は間違いなくそうくるだろうなと踏み、開始直後から何もかもを解放してんのさ。
 俺と契約しているステイプラーの魔力も借り、2人分の備蓄で呼び起こしたフリントロック式銃。
 ステイプラーの発想力とは異なり、俺は現代のAK -47のデザインを参考に作らせてもらった。
 こいつは現代では相当世話になってるからな。
 銃に乏しい俺でも姿くらいは覚えてら。
 経口はド派手に15ミリ、いくら魔法といえど連射式には流石に出来ないらしいから、マガジン部は省略。
 弾は、15ミリ×160ミリの超空想弾薬!
 全長1200ミリ、重量なんと15000グラム!
 もはや、スナイパーライフルって突っ込みたくなるが、こりゃ紛れもないフリントロックだ!
 発射初速度は解読不能、生身の人間なんかじゃ扱えない超絶弩級・頭の悪い究極の無知が考えた馬鹿馬鹿しい一品だ!


「――なんだこれ! やっべぇッス!」

 さて、俺は新竜人族ドラゴニアンだ。
 五感を一気に研ぎ澄ますことで、視覚が感じる時間を1秒間だけミリ単位に変換することができる。
 つまり、俺はイレイザーの1000倍早く思考できるわけだ!
 ま、これ使うとめっちゃ疲れるからあんまり乱用できないんだけど。

 イレイザーの拳が、俺の顎の真下から上へと向かっている。
 彼は俺にアッパーを喰らわすつもりらしいが、残念ながらそれは届くことはない。
 なぜならば、俺の顔の左右に6丁、イレイザーの真上に2丁、こんなにも恐ろしいサイズのフリントロック式銃が召喚されてんだからな!


 俺の号令で一斉に引き金を引くと、合計8丁が燧石ひうちいしを叩き、火薬に着火!
 ミサイルでも発射したんかと思うくらいの爆音が闘技場内で炸裂したのだ!
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