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第六章 物語も終盤

51.戦い

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 なぁんてな。

「あぁ。ノベルメイカーで戦うってのは嘘だよ、イレイザー。お前にこれを自慢したかっただけ~」

 と、俺はバッグにペンとノートを戻した。

「あら、使わないんスか?!」

 イレイザーはズッコケって感じで空を見上げた。
 そりゃ、こんなの使って戦闘なんてできっかよ。
 設定弄りながら戦うとか無理ゲーも良いところだっつの。
 設定を書き換える時に風景が歪んで見える時があるし、書いてる間に攻撃されるし、そもそもテーブルがなきゃ文字は書けねぇよ!

 ――それに、ハイライターとイレイザーとステイプラーにはノートの姿を見せてやりたかった。
 なぜならば、俺は特にこの3人を信頼しているからだ。
 兄貴分のハイライター、心優しいイレイザー、俺と契約をしたステイプラー。
 俺は、この3人には異世界に帰る前に全てを教えてやりたかったんだ。

 ――そして、俺は彼の発言からあることを思い出す。
 亜人族は基本的に魔法は扱えない。
 亜人族が魔法を扱えるようになるのは、妖精族の契約の適性によるもの。

 イレイザーは学生の頃に妖精族と契約をして魔法適性を持ち、魔法を撃つために練習をしていたと言った。
 彼の使える魔法は少なくとも『回復魔法』が存在する。
 ちょうど、俺が大怪我を負っていた時に万能って言っていいほどの超回復魔法を見せてくれた。
 つまり、イレイザーに従属している妖精族は恐らく『回復属性』!
 亜人族の回復力ってだけで厄介なのに、妖精族の回復魔法もかけ合わさったら、もはや無敵状態に近いんじゃないか?!

「ううん……。分かったっスよ。ノベルくんがそんなに僕と戦いたいなら僕も拒まないっス。それに、新しく得た力が強いかどうかの試し撃ちに僕を使おうとしないで欲しいっス」

「……あ、バレた?」

 俺は頭をかいて2番目の目的がバレてしまったことを肯定する。
 そう、俺は1度でもいいから試してみたかった。
 ――そこら辺のクソラノベ主人公のチートスキルじゃなくとも、この街のNO.2レベルが倒せるのかどうかを!
 それに、俺は現世に帰る前にイレイザーと試合をしてみたかったんだ。
 異世界に来て初めて強いと感じたお前を負かせるかどうかの一大テストだ!

「僕も久しく模擬戦闘をしてなかったから少しだけ疼いてたんスよ。僕は弱者を嬲るのはあまり好きじゃない。でも、ハイライターの過酷な鍛錬を乗り越え、ステイプラーの能力を受け継ぎ、『女神様』って存在から加護を受けている事もわかった。そんなことを聞いたら、なんだか手加減とか馬鹿みたいっス」

「燃えてきたみたいだが、本来の目的は『ルーラーとの面会』をかけた勝負だかんな? それで、俺の条件は飲むのか?」

「分かったっス。僕も駄々をこねる子供じゃない。勝負、引き受けたっス。ただし、僕には加減なんてないっスよ? 死にかけたら、この前みたいに回復魔法をゴリゴリかけてあげるっス」

 イレイザーは珍しく眉間にシワを寄せ、素早いバック転で俺から距離をとった。
 しなやかな骨格の動きと人間業ではあり得ない体の柔らかさ。
 亜人族には骨と臓器が存在しないって話はマジマジのマジだな。
 あぁ、だったら亜人族って飯食うのに、どうやって消化してうんこするんだろう。

「僕の名前はイレイザー・テイルズ。このカナヤの傭兵ではNO.2、武器は必要無し。マスターに教わった『拳法』で戦わせていただくってス」

「俺の名はノベル。順番が繰り下がるなら、俺はカナヤの傭兵ではNO.7か? 戦闘方法は銃による遠距離攻撃を採用させていただく」


 そして俺とイレイザーはお互いに構え、場の空気は一気に仕上がった。
 緊張感によって高鳴る心臓、今までにないほど肌がビリビリと震え立ち、イレイザーのにこやかで覇気のある表情にビビって足が竦む。

「では、始めさせてもらうぞ! 審判はこの俺様、ハイライターが務める! 戦闘不能、または10秒間立てなかった場合、そして俺様が審判を下した時点でその者は敗北とする! では、これよりイレイザー対ノベルの試合を開始する!」

 ――これで勝たなきゃ、きっとイレイザーは本当にルーラーと生涯会うことはない!
 仮に俺が負けでもすれば、彼のプライドの高さから察するに間違いなくルーラーには会いにいけなくなる!
 負けられない、イレイザーのためにもルーラーのためにもこの試合は絶対に負けられないんだ!

「それでは、始めっ!!」
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