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最終章 ~夢からの脱出~

#30.得体の知れない何か

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 諸悪の根源

 このワードが妙に気になったが今はソレどころじゃ無かった

 現在18:40…いよいよ1時間前の事が思い出せない

 19:00にタクシーで向かえば余裕で研究所には到着するが
 その前に【記憶の削除】が現在に追いついてしまったら

 目的すら忘れてしまう可能性も否定できない…

 急いで行動する事に越した事は無い
 私はタクシーを呼び研究所に向う事にした

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 予定通りとは言えないが順調に時は進んでいる
 それに比例して更に【記憶の削除】は加速していた…

 タクシーが到着し目的地に向け出発はしたが
 タクシーを呼んだ記憶が既に無かった…

 目には見えないがまるで背後から得体の知れない何かに
 追い詰められている感覚に陥る

 そして見た事も無い様なナイフで私の記憶が
 徐々に削り取られていく恐怖を感じる

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 現在19:45…研究所に到着。と同時に施設に入る

 後40分もしない内に20:25を迎え未来の記憶が消え去ってしまう…
 そこから先の出来事は全くの未知だ

 そして何よりタクシーに乗った序盤の記憶が無い

 15分…

 恐らく過去15分まで記憶は削られている…

 私の人生27年間で残された記憶はこれから先の40分と合わせて
 55分弱しかない…

 とにかく私は急いだ…幸い地震が起きなかったので
 施設内部の照明は通常通りだ

 小走りで廊下を進んだ…長年研究に費やした施設だ
 《那由他》までの道のりは手に取る様に把握している

 もう目の前に研究室の扉がある…そんな中
 得体の知れない何かの気配を感じる…

 これはもう背後まで記憶が削られている証拠だ
 思わず私は後ろを振り返る…

 この時、ここまでどうやって来たのかさえ覚えてない…

 そして急いでいるにも関わらず私は立ち止まってしまった
 何故ならソノ得体の知れない何が形となって現れたからだ

 それは人の形をしていた…


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