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最終章 ~夢からの脱出~

#31.ラストゲーム ~苦戦~

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 人の形…もう少し正確に表現すると

 そいつはパーカーのフードを深めに被り
 見た事も無い様な美しいナイフを持って立っていた


『お久しぶりです…岸根です』


 私は困惑した…お久しぶり??面識があるのか?
 岸根って誰だ?…

 だが私は思い出すのをやめた…もはや10分にも満たない
 過去の記憶しか持たない私では思い出すだけ無駄だからだ…

 距離にして約10mそこに岸根と名乗る男がいた
 そして岸根を境にその向こうは闇だった…

 今まで私が通ってきた廊下は岸根の背後から無となっていた…
 私は理解した…あの美しいナイフで私の記憶を削っていたのだと…

 私と岸根は立ち止まり対峙していた…

 良くも悪くも【記憶の削除】の進行が止まった
 それは岸根が静止したからだと肌で感じ取れた…

 とは言え時が止まった訳ではない…

 現在20:02…残り23分で私の未来の記憶が消える
 記憶では再起動には成功しているのだ…

 その先、未来の私がどうなってるのかは知らない…
 目的と理由が不明だが再起動は成功してるはず…

 つまりこの状況、切り抜けられるはず!


 私は切り出す
『あなたは何者?』

 岸根は答える
『いぃ~質問ですねぇ~非常にシンプルで効率がいい…コレは
   ゲームなんですよ…私が貴女を狩ると言う一方的なゲームです』

『岸根のゲーム?徐々に追い込む詰め将棋みたいな感じか?』

 とにかく私は知能をフル回転させ考えた
 目の前に指紋認証の扉がある…現状では【記憶の削除】は
 停滞しているが時は刻々と進んでいる

 選択肢としては一択だ…指紋を認証させる事
 目の前とは言え手を伸ばして届く距離ではない

 私は向かい合ったまま後退し指紋認証の横に立った…

『おめでとうございます。指紋…認証出来ましたね』
 そう言いながら岸根は数歩近づいてきた…そして再び立ち止まる

 私は岸根に背を向け一気に研究室を駆け抜けた…虹彩認証のある
 《那由他》に向ったが慌てて走った勢いで研究室中央にある
 自分のデスクに接触し転倒してしまう…

 ふと気づくと目の前に見知らぬ男が立っていた…

『誰??』

 もはや数分前の記憶が無かった…

『先程も言ったでしょうゲームだと!あ、そうでした先程の記憶は
   私が削り取ったんでした…まぁなんて言うか…観察ですよ…』

 観察!?何を言ってるんだ?この男…

『貴女が私を生み出したんですよ…自殺願望でもあったんですか?
   私の目的は徐々に追い込まれた貴女がどんな行動を取るのか?
   見定めてから殺す事…まぁ以外にガッカリな観察結果でしたが…
   もう十分です良いでしょう…あなたもう詰んでますから』

 私は《那由他》を再起動する。その為にここへ来た
 もうそれ以上の記憶がない…


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