俺がキーなわけがない!?

クルクル

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00 追憶のプロローグ

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 ―――雨?

 目を開ける。見える景色は赤、赤、赤・・・。あたり一面が火の海と化している。

「・・・さむい」

 雨に打たれ冷えた体を起こす。周囲の惨状に反して、目立った傷はない。

 ―――何をしてたんだっけ?

 思い出せない。なぜ街が燃えているのか。なぜこんなところで寝ているのか。何かが引っ掛かる。
 しばらく考え込む。

?」

 それは分かる。チカラを使った。

 ―――何のために?

 思い出そうと懸命に記憶をたどる。

 光。黒い服の人、白い服の人、人、人、人。爆発。
 黒い服の人と白い服の人たちが戦って、巻き込まれて。

 ―――それで・・・

瑠蒼ルアは?」

 幼馴染が黒い服の人たちに捕まった。人質にするつもりだったのだろうか。それは分からない。でも白い服の人たちは助けてくれなかった。『白』は、彼女ごと『黒』を攻撃した。

 ―――僕は、それを見て・・・

「・・・瑠蒼は、どこ?」

 あたりを見回す。彼女の姿はない。
 彼女を探さないと。火の中を歩きだす。瓦礫に紛れて『白』や『黒』が見える。ほかの大人たちも。
 黒い服の人たちは悪いやつらだ。白い服の人はたちは正義の味方だと思っていた。

 ―――思って、いたのに。

 助けてくれなかった。守ってくれなかった。白い服の人たちあいつらも同じだったんだ。

「―――――」

 話し声が聞こえる。何かを怒鳴っているような声だった。声の聞こえる方へ向かう。

 ―――誰かいる?

 瓦礫の影から覗く。そこにいたのは、黒い服の人と探していた幼馴染、そして傷ついて倒れている一人の少年だった。

湊人みなと・・・?」

 倒れている少年はもう一人の幼馴染。
 なぜ彼が赤い水たまりに倒れているのか。
 なぜ『黒』はイラついたように舌打ちをするのか。
 なぜ瑠蒼が『黒』に担がれているのか。
 なぜ『黒』は湊人に近づいている。
 なぜ足を上げる。
 なぜ湊人の頭の上で足を振り下ろそうとする。

「っ!?やめろ!!!」

 手を伸ばす。
 足が振り下ろされる。
 てのひらが光る。
 『黒』がこちらに気付く。
 光が集まり、形を作る。僕のチカラのカタチ、【カギ】を創り出す。
 手を振り下ろす。【カギソレ】が飛んで行って刺さる。
 【カギソレ】が光る、光る、光る。

 そして。

 眩い光が、燃える街を呑み込んで、目の前が真っ白になった。
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