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7話 武術vs魔法
しおりを挟む「では、ちょっと私は神族についてをまとめる時間が欲しいから、その間に兵士たちに教えて来てはもらえないか?」
「わかったよ。」
アナリスの提案により、龍騎は先に武術についてを教えることになった。
カリナに案内され、屋外にある訓練所に連れてこられた。
「あと少しで兵士たちが集まって来ます。彼ら彼女らはアナリスを尊敬するあまり、魔法至上主義的な考えを持っているので、苦戦するかもしれません。」
「それは大丈夫だよ。ゼノにもきいたが、実力がものを言うんだろ魔族は?それなら、示せば済む話だよ。」
「そうですね。」
カリナは少し心配そうな顔をしていた。
そして数分後、50名ほどの兵士が訓練所へと現れた。
「アナリス様からの頼みで今日はみんなに武術、近接戦闘を学んでもらう。だが、聞いたところによると武術より魔法というものが多いらしいから、この中で上から強いやつ3人前に出てきてくれ。」
龍騎がそういうと、ザッと3人が立ち上がり前に出てきた。
誰も意見を言わないところを見ると、ほかの兵士たちとは比にならない強さということがわかる。
「じゃあ、君たち3人で俺にかかってきてくれ。それで俺が魔法を使わず武術で倒せば、文句は言わないだろ?」
「申し訳ないが、私たち、いや、私一人でであんたを殺してしまうかもしれない。」
黒い肌で耳が長い、いわゆるダークエルフというやつが龍騎に突っかかってきた。
「それは問題ない。俺は死なないから存分に来てくれ。他の2人もわかったか?」
「はい。」
他の2人は大人しかった。1人はローブを被った男でもう1人は杖を持った小さな眼鏡っ娘だった。
「ルールは俺か3人全員が戦闘不能になるまでだ。もちろん途中で参ったしてもいいからな。」
「では、私が仕切らせてもらいます。それでは、試合開始!!」
カリナの合図とともに戦いは始まった。
「舐められたままってのはムカつく『雷槍』。」
ダークエルフは宙に雷で槍を20本ほど生成した。
「おぉ、これが雷魔法か。」
「はぁ、めんどくさい『影刃』。」
男は龍騎に向けて自分の影を鋭い刃のように変えて攻撃した。
『永久凍土』
眼鏡っ娘は氷の塊を龍騎へと放った。
「すごいな、これが本物の魔法か。あそこでしか見た事なかったから、生で沢山の見れるのは感動だな。だけど、全部動きが単調だな。」
シュワッ
「なっ!!んな馬鹿な、何が起こったんだ!」
3人が出した魔法を全て龍騎は消した。
「まあ、難易度は多分2万年目の1人前くらいの訓練人形かな。じゃ、次はこっちから。」
そう言って龍騎は高速で動き、3人に少しずつ触れた。
ピッピッピッピッ
「これで完璧。どうする?まだやるか?」
「何を!魔法を止めただけでいい気に……なんでだ……魔法が……いや、魔力がなくなってる。」
「…………。」
「私も出ませんね。」
3人は魔力がなくなり、魔法を使えなくなっていた。
「これが武術だよ、今俺は倭秀国で作られた「穴樂」という武術にある「穴点」という技で相手の血液や酸素の巡りを悪くする点を打たせてもらった。それを魔力が巡る魔臓の近くを打つことで魔力が身体に巡らなくなる。」
「参りました……。」
魔法を使えなくなった3人はあっさりと負けを認めた。
そして、その場にいた魔族の兵士は一切の文句を言わず龍騎の言うことを聞くようになった。
「ようは武術は目的ではなく、手段だ。相手を捕縛する、相手を戦闘不能にする、相手を傷つけない、相手を殺す、用途しだいで修める武術も変わってくる。そこをゆめゆめ忘れないようにしておこうな。」
まずは武術の根底にある龍騎の考えを話して、そこから個々にあった武術を教えていった。
筋が良かったのは4人いた。
最初に出てきたダークエルフのクルフ、影使いのシャド、ちびっ子魔術師のシュリ、そして弱々しい感じのウルフ耳をした狼獣人のフェルだ。
「師匠、お手合わせ願います。」
「よしわかった。」
クルフは一瞬にして龍騎の強さに惚れ込み、師匠と呼び慕っていた。
クックッ
「おう、その動きか。もう少し緩急をつけると相手は右の拳が見えなくなるから、そこを意識してみよう。」
コクッ
喋らないがシャドも龍騎に教えを乞おうとしていた。
ものの4時間だったが、兵士の能力は格段に上がった。
魔族の身体能力は高く、およそ龍騎の始めたての5倍ほどの習得の速さを見せていた。
「じゃあ、今日はここまでだ。今日教えたのはほんの基礎だ。だが、基礎を繰り返していれば、自ずと身体が応用を閃くようになる。次に指導する機会があれば教えるが、そう多くはないだろうから、今日学んだことをどうか活かしてくれ。」
「はい!!」
指導が終わると、龍騎はその場にいた魔族から尊敬の眼差しで見られるようになった。
後々、アナリスの軍は近接戦闘も出来、魔法での援護射撃も出来ることから「最強の魔王軍」と呼ばれるようになる。だが、それはまた別のお話……。
「アナリス、入るぞ。」
「リュウキか、入ってくれ。」
「もう終わりそうか?」
「うむ、既に終わっておる。神族に関しての情報はまとめた、簡潔に話すぞ。質問があればいつでも言ってくれ。」
アナリスは龍騎に神族に対してのことを話した。
まず、神族は存在すること、そして噂通り本当に神のように強いということ。
そして、神族は神界から落ちてきた堕神でまた神の座に返り咲こうとしていること。
また強さに敏感か神族は既に龍騎の存在に気づいて動き出しているんじゃないかというアナリスの予想。
「それじゃあ、俺が探さなくてもあっちから来てくれる可能性があるってことか。」
「まあ、そうじゃな。その可能性は高いと思うぞ。勇者と呼ばれる我らが天敵も全盛期に変死を遂げる場合が多く、それらは神族の仕業じゃないかと私は睨んでいるのじゃよ。」
「なるほどな、強いから狙うってことか。それは、なんで狙ってくるんだ?」
「やつらは神の座に返り咲くには「神を殺して席を1つ空けよう」と言う考えなんじゃろうな。」
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