28 / 58
28
しおりを挟むピリピリ
「..........」
「何だこのひりついた空間は......。」
アキラはアルマッド邸にいた。そして、側近らしき人が十数人、そしてアルマッド、アキラで円卓を囲んでいた。
「コホン。」
アルマッドが咳払いをする。その瞬間に周りの人たちが覚悟を決めたように唾を飲んだ。
「それではカイザー領との内戦についての会議を始める。こちらの兵は5万、あやつらの兵はおよそ12万とされていて兵力に差がある。さて、これをどのようにして覆す?皆の意見を聞かせてくれ。」
「ふむ。」
真っ先に手を挙げたのはアルマッドと一番近いところにいる白髪、白髭の老兵だった。
「ギル指揮官。」
「五番、六番隊を中枢へと向かわせ、持久戦をしながら一番、二番隊が横から追撃、三番隊が裏から回り込んで寝首をかくってのが勝ち筋かのお。今回の戦はかなり分が良い。カイザー領の犬っころたちでは我ら狼には勝てぬよ。」
「ギル指揮官の指摘通り、奴らの統率力は我らには無いものだ。しかし、質が悪くとも2倍の兵力を持っている。勝てて当然、その上で犠牲を少なくする方法が必要だ!他にいないか!」
シーン
ギル指揮官の言った作戦以上のものを考えうる人はいなかった。一見、単なる案の一つかと思われていたが、地理的要因などを加味するとギル指揮官の作戦は完璧なものだった。
ひりついている中、アキラは配られていた資料を見ていた。敵の強力な兵のリストや地図などを見ていた。
「私はアキラ殿の意見を聞いてみたい。」
他の重役に呆れたアルマッドはアキラへとふった。
「あ、俺ですか。そうですね ~ とかどうですか?」
アキラは相手をおびき寄せ、奇襲をするという案を提案した。
「ほっほっほ、それは面白い。じゃが、それをするためには資源や労力が必要じゃよ。」
「それは ~ などで十分に対応できると思います。」
「ほぉ、これはさらに面白いのぉ。アルマッド様、私はアキラ殿の作戦がいいかと。」
アキラの作戦はギル指揮官の心を掴んだ。それと同時にここにみんなの心もがっちりと掴んだ。
そして、3時間にも渡る会議は終わった。
「では、アキラ殿。先程、頼んだ物の納品はよろしく頼んだぞ。」
「はい、任せてください。」
アキラは会議室を出た。
「ちょっといいかね。」
「はい?なんですか?」
ギルがアキラに話しかけた。
「あんな作戦を商人が考えつくとは思わぬのじゃが、お主は何者かのぉ?」
ギルはアキラを疑惑の目で見ていた。
「あぁ、あれは俺の国で昔使われてたものなんですよ。」
平々凡々のアキラが唯一得意だったものが日本史である。偉人の伝記や戦国武将の聖地巡りなどをするほど好きなのであった。
「それでですね!その時驚くわけですよ!間者がまさか自分の右腕なんて思わないですよね!」
アキラは久しぶりに語れることでリミッターが外れ、ギルに小一時間ほど話していたのだ。
「ほぉ、それは確かに思わぬことじゃ。」
ギルもアキラの話が新鮮で笑顔で話を聞き、意見を交換しあった。
「あ、すみません。沢山話しすぎちゃいましたね。」
「いや、わしも指揮官をして30年も経つが目からウロコが出るようなことばかりじゃった。」
ギルが引退し伝説の指揮官として語り継がれる時に最も敵に回したくなかった指揮官として名を挙げられたのは「アキラ」だった。
しかし、これはまた別のお話である。
160
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる