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2話 友好
しおりを挟む「すまない!強き者よ、先日現れた者だが、姿を見せてはくれないだろうか!」
ガチャ
外から聞こえた声に男は反応し、扉を開けた。
「何か不思議な感覚だな。日本語では無いが、理解はできる。脳で勝手に変換している気分だ。」
男は冷静に今起こったことを分析していた。
「突然出迎えてしまい申し訳ないです。先日は異国の方とは知らずにあまりコミュニケーションが取れなかったため、翻訳のスキルがある者を連れてまいりました。」
「いや、こちらこそ少し気まずくなってしまって申し訳ない。それにしてもそのスキルとやらは便利なものだ。周りの人間もそのスキルの効果が反映されるのか……」
男も少しは気にしていた。
「いえ、当人が特殊でして『交渉上手』と言うスキルでして、交渉の場で円滑に進めるためのスキルで翻訳というのは副次的なものです。」
「なるほど、つまり俺と何かを交渉しに来たということか。」
「はい、そうです。貴方がいる場所はクルト王国の領地でございまして……」
「つまり俺は異国から来た不法滞在者ということか。」
「はい……」
男を前に気まずそうに返事をした。
「まあ、これには訳があってだな。」
男は甲冑を着た者たちに異世界に飛ばされたことを話した。
「なるほど、合点がいきました。」
こうして男はたくさんのやり取りをして色々な情報を交換した。
「君たちは王国お抱えの精鋭たちで俺の生命反応に反応してこんな山奥まで来たということか。」
「はい。そして、元をたどってきたらここにつき、貴方を見た瞬間にすぐに分かりましたよ。『敵にしては行けない強者』だということが。」
前回の事を報告すると国王からは「戦力を増強しいざと言う時に備えよ。また必ず敵対関係にはならず友好を結んでこい。」とのお達しがあり今に至るという。
「そんなに俺は化け物じみてはいないんだがな。」
「短期間でこの生活水準にした方では説得力はありませんよ。」
「まあ、ともあれ俺は住むことを許可してくれると言うのであれば、特に害をなすことはしない。街に行くなと言うのであれば行く気もない。今の生活で満足しているからな。」
男は特別な野望がある訳でも欲望を持っているわけではなかった。ただ、静かに自分のペースで生きられればよかったのだ。
「もちろん、ここに住んでもらって構いません。また街に出かけたい場合は私たちに行ってもらえればスムーズに入れますのでその際は仰ってください。」
「仰ってください と言われても伝える術はないんだけどな。」
「大丈夫でございます。週に一度ほど伺わせて頂きますのでその際にお申し付けくだされば。」
「そんな頻度で来なくていいのに。忙しいだろうから気は使わなくていいよ。」
「いえいえ、こちらがしたいので。もしかしてご迷惑でした?」
「いや、たまには話し相手が欲しいと思っていたところだ。」
こうして男と一国は友好を結ぶことになった。
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