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プロローグ 『まさにどの世界もガチャは付き物だ』
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静寂に包まれた夜。
周辺に光というものは一切無く、あるとすれば無数の星々の輝きだったがそれさえも今は姿を消している。
季節に合わない冷風が抜け、木々が騒ぎ出すと共に束の間の静寂は破られる。
腹の震えるような轟音。
微かなそれは次第に大きく、大きくなり身体全体までも震撼させる。
逃げなきゃ、これは普通じゃない。
辛うじて正気を保つ脳が警鐘を鳴らすも心は既に不安に染まり、足は恐怖の鎖に縛られていて何の反応も示さない。
自分の身体が自分のモノでない感覚。
今の状態を表すのにこれ以上的確な言葉はないだろう。
「........っ!?」
そびえ立つ木々が不自然に傾き、一瞬にして消える。
目前に迫るそれに俺は目を見張った。
激流だ。
山のあらゆるものを巻き込む激流。
これが土砂崩れか。
間髪入れる事なく走る激痛。
筋肉がギシギシと悲鳴をあげ、内臓が圧迫される。
上も下もわからない浮遊感に意識が沈んでいく。
ああ、これは死ぬな。
走馬灯が駆け巡る中、俺は命を散らした。
************************
はずなんだが。
「何で俺は生きてるんだろうな」
「生きてはいませんよ。確かにあなた、菱田龍也さんはあの時死にましたから」
天蓋付きの真っさらなベット、豪華な造りのシャンデリア。
何処かの国のお姫様が住んでそうな部屋のカーペットの上に座り込んだ状態で俺はそんな言葉を漏らす。
それに応えるのはこの部屋にいるもう一人の人物だ。
鮮やかな桃色の髪を肩ほどで整え、金の蔦の刺繍の入った貫頭衣のようなものに身を包んでいる。
通りかかる人が皆、振り返るような可愛らしい顔つきの少女の深紅の瞳が見つめてきた。
「今こそ私の力でそれはそれは酷い有様だった肉体も完璧に元どおりに構成出来てますが...あなたが学校行事を勝手に抜け出し、勝手に死んだおバカさんであることに変わりはありません」
「やめて、それは俺も自覚してるから」
何となくでこなすはずだった林間学校でどうしてあんな事を。
心のどこかでは何となく生きる生活に不満があったのだろうか。
いや、そんなはずは....多分ない。
人を助けるために死ぬならまだ格好がつくが、これは只のアホ死にである。
ああ、八十歳まで生きて家族に見守られながら普通に死ぬ予定だったのになあ。
頭を抱えながら唸り声をあげる俺に可憐な少女は呆れたように溜息をつく。
「自覚してるならいいです。ま、起こってしまったことは仕方ありませんし。自然災害なので一概にあなたのせいとも言い切れません。本来はこのまま消滅....
となるんですがちょっと事情がありまして」
「事情?」
俺の問いかけに少女はコクンと頷く。
「はい、ですのでタツヤさんには異世界転生という方法を取りたいと思います」
「.....そんな事出来んの?」
ラノベとかで多く出てくる異世界、主にファンタジーな世界は誰もが一度は憧れを持つ。
この主人公みたいに俺も異世界に!みたいな感じで...持たない人は知らん。
しかし、それはあくまでも創作であって実際には存在しないことも大半の人達は理解している。
俺もそれは理解しているので、そんなバカな!ハッ!!と鼻で笑ってやりたかったが、まずこの身に起こってる事が結構異常なので頭ごなしに否定は出来なかった。
というかこの子何者なの。
明らかに人間じゃないような...
「私は神様ですからこれくらいは造作もありません」
愛らしい少女は少し自慢げに胸を張る。
「はあ、それはすげぇな.....神様だったんだな」
「気づいてなかったんですか」
「普通、気づかなくね!?」
「あなたの身体をあっという間に無傷に出来るなんて神様くらいでしょう?人間の医者ならお手上げレベルですよ」
かなりご不満そうに頰を膨らませる神様。
一瞬、そんな感じはしたけど神様はスマホゲームのガチャ前とか初詣の時ぐらいしか信じないでしょ。
そう言えばスマホゲームの夏イベ近かったな....とか考えていると神様がハッと何かに気づいたかのように続ける。
「おっと、あまり時間がないですね...えーと、異世界に行くにあたってスキルを一つ付与することになってるので、今与えてしまいましょう」
そう言って、神様が俺の胸に手をかざす。
瞬間、胸に淡い光が宿り、やがて消滅した。
「これで終わり?」
「ええ、これで異世界に着いた時には使えるようになっているはずです」
あまり実感はないが、それは異世界の方で湧くだろう。
それより気になることを聞かなければいけないな。
「これってチートスキル?」
チートスキルがあるかないかによって結構変わる。
これがあれば富とか名誉とか何かも得て楽に暮らすなんて事も可能なわけだからね。
「それはわからないです。確かにとんでもないチートスキルが付与される前例もありますが...これランダムなんで」
「くじ引きかよ!?」
これからの生活が決まるっていうのにゲームのガチャと変わらんやん。
確率も分からないし、十連じゃなくて単発。
明らかに闇だが...ま、まあ、俺の運は覚醒してるはずだ。
何たって神様が構成した肉体の持ち主だし!
「さてスキルの付与も済んだので...そろそろ異世界への転生を開始しましょう」
神様がパチンと指を鳴らすと周囲にいくつもの魔法陣が浮かんだ。
それらはだんだんと数を増し、輝きも一層強くなる。
「あなたの異世界での生活が健やかであらん事を...心から願っています」
向日葵のような神様の笑顔を最後に俺の意識は途絶えた。
周辺に光というものは一切無く、あるとすれば無数の星々の輝きだったがそれさえも今は姿を消している。
季節に合わない冷風が抜け、木々が騒ぎ出すと共に束の間の静寂は破られる。
腹の震えるような轟音。
微かなそれは次第に大きく、大きくなり身体全体までも震撼させる。
逃げなきゃ、これは普通じゃない。
辛うじて正気を保つ脳が警鐘を鳴らすも心は既に不安に染まり、足は恐怖の鎖に縛られていて何の反応も示さない。
自分の身体が自分のモノでない感覚。
今の状態を表すのにこれ以上的確な言葉はないだろう。
「........っ!?」
そびえ立つ木々が不自然に傾き、一瞬にして消える。
目前に迫るそれに俺は目を見張った。
激流だ。
山のあらゆるものを巻き込む激流。
これが土砂崩れか。
間髪入れる事なく走る激痛。
筋肉がギシギシと悲鳴をあげ、内臓が圧迫される。
上も下もわからない浮遊感に意識が沈んでいく。
ああ、これは死ぬな。
走馬灯が駆け巡る中、俺は命を散らした。
************************
はずなんだが。
「何で俺は生きてるんだろうな」
「生きてはいませんよ。確かにあなた、菱田龍也さんはあの時死にましたから」
天蓋付きの真っさらなベット、豪華な造りのシャンデリア。
何処かの国のお姫様が住んでそうな部屋のカーペットの上に座り込んだ状態で俺はそんな言葉を漏らす。
それに応えるのはこの部屋にいるもう一人の人物だ。
鮮やかな桃色の髪を肩ほどで整え、金の蔦の刺繍の入った貫頭衣のようなものに身を包んでいる。
通りかかる人が皆、振り返るような可愛らしい顔つきの少女の深紅の瞳が見つめてきた。
「今こそ私の力でそれはそれは酷い有様だった肉体も完璧に元どおりに構成出来てますが...あなたが学校行事を勝手に抜け出し、勝手に死んだおバカさんであることに変わりはありません」
「やめて、それは俺も自覚してるから」
何となくでこなすはずだった林間学校でどうしてあんな事を。
心のどこかでは何となく生きる生活に不満があったのだろうか。
いや、そんなはずは....多分ない。
人を助けるために死ぬならまだ格好がつくが、これは只のアホ死にである。
ああ、八十歳まで生きて家族に見守られながら普通に死ぬ予定だったのになあ。
頭を抱えながら唸り声をあげる俺に可憐な少女は呆れたように溜息をつく。
「自覚してるならいいです。ま、起こってしまったことは仕方ありませんし。自然災害なので一概にあなたのせいとも言い切れません。本来はこのまま消滅....
となるんですがちょっと事情がありまして」
「事情?」
俺の問いかけに少女はコクンと頷く。
「はい、ですのでタツヤさんには異世界転生という方法を取りたいと思います」
「.....そんな事出来んの?」
ラノベとかで多く出てくる異世界、主にファンタジーな世界は誰もが一度は憧れを持つ。
この主人公みたいに俺も異世界に!みたいな感じで...持たない人は知らん。
しかし、それはあくまでも創作であって実際には存在しないことも大半の人達は理解している。
俺もそれは理解しているので、そんなバカな!ハッ!!と鼻で笑ってやりたかったが、まずこの身に起こってる事が結構異常なので頭ごなしに否定は出来なかった。
というかこの子何者なの。
明らかに人間じゃないような...
「私は神様ですからこれくらいは造作もありません」
愛らしい少女は少し自慢げに胸を張る。
「はあ、それはすげぇな.....神様だったんだな」
「気づいてなかったんですか」
「普通、気づかなくね!?」
「あなたの身体をあっという間に無傷に出来るなんて神様くらいでしょう?人間の医者ならお手上げレベルですよ」
かなりご不満そうに頰を膨らませる神様。
一瞬、そんな感じはしたけど神様はスマホゲームのガチャ前とか初詣の時ぐらいしか信じないでしょ。
そう言えばスマホゲームの夏イベ近かったな....とか考えていると神様がハッと何かに気づいたかのように続ける。
「おっと、あまり時間がないですね...えーと、異世界に行くにあたってスキルを一つ付与することになってるので、今与えてしまいましょう」
そう言って、神様が俺の胸に手をかざす。
瞬間、胸に淡い光が宿り、やがて消滅した。
「これで終わり?」
「ええ、これで異世界に着いた時には使えるようになっているはずです」
あまり実感はないが、それは異世界の方で湧くだろう。
それより気になることを聞かなければいけないな。
「これってチートスキル?」
チートスキルがあるかないかによって結構変わる。
これがあれば富とか名誉とか何かも得て楽に暮らすなんて事も可能なわけだからね。
「それはわからないです。確かにとんでもないチートスキルが付与される前例もありますが...これランダムなんで」
「くじ引きかよ!?」
これからの生活が決まるっていうのにゲームのガチャと変わらんやん。
確率も分からないし、十連じゃなくて単発。
明らかに闇だが...ま、まあ、俺の運は覚醒してるはずだ。
何たって神様が構成した肉体の持ち主だし!
「さてスキルの付与も済んだので...そろそろ異世界への転生を開始しましょう」
神様がパチンと指を鳴らすと周囲にいくつもの魔法陣が浮かんだ。
それらはだんだんと数を増し、輝きも一層強くなる。
「あなたの異世界での生活が健やかであらん事を...心から願っています」
向日葵のような神様の笑顔を最後に俺の意識は途絶えた。
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