虚構の鎖

第6章：大野健一の秘密

芹沢と美咲は大野健一の行方を追う。大野は実験が行われていた時期に重要な役割を果たしていた人物であり、何かを隠しているに違いない。二人は彼の最後の足取りを辿るため、彼が関与していた施設や過去に住んでいた場所を訪ね歩く。

大野は過去に一度も公に姿を現さず、その後行方をくらませていたが、ある人物が彼を目撃したと言う情報を得た。それは、青木敏郎という中年の男性で、かつてフェニックス心理研究所の従業員だった。青木は、大野が数年前にある病院に出入りしていたことを証言する。

青木：「大野さんは、研究所が閉鎖された後、どこかで治療を受けていたようです。でも、彼は一度も診療記録を残していないんですよ。不審に思っていたんですけど、あの頃から様子が変わってましたね。」
芹沢：「どこに行ったか、わかりますか？」
青木：「私も最後に見たのは、５年前に入院していた病院です。都内のとある精神科病院です。でも、その後は完全に姿を消しました。」

芹沢と美咲はその病院に向かうことに決める。病院の記録にアクセスし、大野健一がそこに入院していた証拠を見つけ出すとともに、彼が受けた治療の詳細を明らかにしようとする。

精神科病院での発見

病院に到着すると、医療スタッフは初めは抵抗するが、芹沢の捜査権をもって交渉を続ける。ようやく、病院側は彼らにあるファイルを開示することを許可した。そのファイルには、大野健一が精神的に不安定になり、記憶を取り戻す過程で錯乱状態に陥ったことが記録されていた。

美咲：「……これが、父の最後の実験の結果？」
芹沢：「間違いない。大野は、記憶を戻そうとした結果、何か恐ろしいことが起こったんだ。」

ファイルの中には、大野が記憶の回復に苦しんでいたこと、そしてその結果として彼の人格が分裂し、暴力的な傾向を示し始めたことが記されていた。大野は、過去の実験によって引き起こされた罪悪感と恐怖に悩まされ、精神的に壊れていったのだ。

病院の医師は、大野が一度「治療」を受けるために入院していたが、途中で失踪したことを語った。彼の最後の治療内容には、記憶の回復を促進するための強力な薬物が使われていた。

芹沢：「つまり、大野も被験者の一人だったということか。そして、その過程で自分の過去を知ることになった。」
美咲：「彼は、このままでは自分が取り返しのつかないことをしてしまうと恐れていたのかもしれない。」