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彼のいない日②
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「ありゃ外れくじだったね。荒れてた頃とはいえ、見る目なさすぎるわ」
席に戻ったベベドナに、一部始終を見ていた仲間が声をかける。ベベドナと昔なじみのサキュバスたちだ。
ベベドナに劣らず美しい顔立ちと身体つきをしているが、化粧がけばけばしすぎて最近の若者には少し遠目で見られている。
中でもベベドナと付き合いの長い、青髪のサキュバスが魚の骨をつまみながら隣に座るベベドナに問いかける。
「にしてもあんた、精気とれてなくて大丈夫なの。老けるわよ。」
「軽くつまみ食いはしてるし、好きじゃないけど家畜の血もわけてもらってるから」
「せめて人間の血にしなさいよ」
「外聞が悪い。死体の血を飲むのも見つかると不味いし、売買されてるのも合法なのは高いからね…」
友人が彼女を心配してくれているのは分かるが、ベベドナは人の血や、キヴィ以外の精気を取る気はしなかった。
元からベベドナはその時意中の人間以外から精気を取るのはあまり気が進まない性質だ。
青髪の友人、ゼレーヌは美味ければいい、と手あたり次第に食いつくす性格だったが。
「そう。そこまでしてあの司祭に執着するのも理解できないね。美味しいの?あいつの精気」
「そりゃ…あ…いや、あたしがそう感じるだけだろうけど」
思わず肯定しかけたが、美食家の友人を警戒して、付け足す。
彼女はにや、と笑って言った。
「とりゃしないわよ。好みじゃないし、ガリガリじゃない」
「見た目よりあるんだよっ!」
「そこは知ってんのね」
「まあね…」
姦しいサキュバスたちを白い目で見ながら村の魔族ほとんどの酒の肴にされているキヴィに、ダゲスンたちは同情した。
時計の針が一時を回る頃、突然ベベドナが声を上げた。
「えっ…!あたし、帰らなきゃ!」
「酒臭いのバレるし止めときなよ」
「でも、明日キヴィ様が朝帰るって」
教会の前を通った友人から今、伝えられたのだ。サキュバスは人より耳がよく、人に聞こえない周波数の声を出して遠くの仲間に言葉を伝えることができる。魔族にも一部の種族にしか聞こえない、諜報にも使われる便利な能力だ。
ダゲスンやゼレーナはケラケラ笑いながらベベドナをからかう。
「そりゃ遊び歩いたのがバレるな」
「相当酒くせえよお前」
「あんたたちに無理矢理飲まされたってことにするから口裏合わせんだよ」
「はいはい」
まだまだ飲み続ける友人たちを後に、ベベドナは日が昇る前、急いで酒場を出た。
きっとキヴィはベベドナが朝まで酒場で仲間たちと飲んでいたと知っても何も言わないだろうし、仲がいいねと含みもなく笑うだけだろう。ベベドナもてきとうに誤魔化す算段はあって遊びに出たのだが、ただ早く彼の顔が見たくて、ベベドナは夜の街を駆けていった。
「ベベドナ!」
とはいえ修道女の名目で教会に滞在しながら夜遊びをしたことに後ろめたさを感じ、誰もいない廊下を抜き足指し足で歩くベベドナだが、背後からいきなり名前を呼ばれ、足に暖かい温度を感じビクリとする。
「あんたか…なんでまだ起きてるんだい」
見れば教会で一番幼い子供が足にしがみついていた。
「お手洗いに…」
「そう、早く寝なよ」
「キヴィ様もベベドナもいなくなっちゃうと思って、怖くて寝れなかった。マレンマレンは遊んでくれないし、勉強ばっかさせるし」
「キヴィ様もすぐ帰るよ。マレンマレンは忙しいからね。勉強もした方がいいよ。キヴィ様みたいになりたいんならね。」
「授業する時のキヴィ様、ちょっと変だから嫌…」
「何言うんだい。目がキラキラしてて可愛いだろ!」
幼い子供の頭を撫で、落ち着かせる。子供たちが寝る部屋まで連れていき、寝るまで側にいてやった。
ここの子供は甘やかされ過ぎて心配だけど、大丈夫なのかね…キヴィ様、勉学や道徳関係にはそれなりに厳しいけど。
そんなことを考え、酒場の男の言葉を思い出したベベドナはふふと笑った。
翌朝、ベベドナは香水をかけまくり酒臭さを誤魔化してキヴィを迎えたが、だいぶやつれたキヴィは疲れた笑顔で笑ったあと、すぐに自室に行ってしまい、昼まで出てこなかった。
何かあったかとベベドナたちは気を揉んだが、目の下にくまをつくって出てきたキヴィによれば、論戦で疲れたあと旧知の人物に深夜まで飲まされ、そこから馬車で帰って頭痛と眠気がひどすぎたという。それは災難だったね、と言いつつベベドナはキヴィから香るワインの香りに女の匂いが混じっていないことを確認し、安心した。
ベベドナはキヴィの無事を、天上にいるらしい神に感謝しておいた。
席に戻ったベベドナに、一部始終を見ていた仲間が声をかける。ベベドナと昔なじみのサキュバスたちだ。
ベベドナに劣らず美しい顔立ちと身体つきをしているが、化粧がけばけばしすぎて最近の若者には少し遠目で見られている。
中でもベベドナと付き合いの長い、青髪のサキュバスが魚の骨をつまみながら隣に座るベベドナに問いかける。
「にしてもあんた、精気とれてなくて大丈夫なの。老けるわよ。」
「軽くつまみ食いはしてるし、好きじゃないけど家畜の血もわけてもらってるから」
「せめて人間の血にしなさいよ」
「外聞が悪い。死体の血を飲むのも見つかると不味いし、売買されてるのも合法なのは高いからね…」
友人が彼女を心配してくれているのは分かるが、ベベドナは人の血や、キヴィ以外の精気を取る気はしなかった。
元からベベドナはその時意中の人間以外から精気を取るのはあまり気が進まない性質だ。
青髪の友人、ゼレーヌは美味ければいい、と手あたり次第に食いつくす性格だったが。
「そう。そこまでしてあの司祭に執着するのも理解できないね。美味しいの?あいつの精気」
「そりゃ…あ…いや、あたしがそう感じるだけだろうけど」
思わず肯定しかけたが、美食家の友人を警戒して、付け足す。
彼女はにや、と笑って言った。
「とりゃしないわよ。好みじゃないし、ガリガリじゃない」
「見た目よりあるんだよっ!」
「そこは知ってんのね」
「まあね…」
姦しいサキュバスたちを白い目で見ながら村の魔族ほとんどの酒の肴にされているキヴィに、ダゲスンたちは同情した。
時計の針が一時を回る頃、突然ベベドナが声を上げた。
「えっ…!あたし、帰らなきゃ!」
「酒臭いのバレるし止めときなよ」
「でも、明日キヴィ様が朝帰るって」
教会の前を通った友人から今、伝えられたのだ。サキュバスは人より耳がよく、人に聞こえない周波数の声を出して遠くの仲間に言葉を伝えることができる。魔族にも一部の種族にしか聞こえない、諜報にも使われる便利な能力だ。
ダゲスンやゼレーナはケラケラ笑いながらベベドナをからかう。
「そりゃ遊び歩いたのがバレるな」
「相当酒くせえよお前」
「あんたたちに無理矢理飲まされたってことにするから口裏合わせんだよ」
「はいはい」
まだまだ飲み続ける友人たちを後に、ベベドナは日が昇る前、急いで酒場を出た。
きっとキヴィはベベドナが朝まで酒場で仲間たちと飲んでいたと知っても何も言わないだろうし、仲がいいねと含みもなく笑うだけだろう。ベベドナもてきとうに誤魔化す算段はあって遊びに出たのだが、ただ早く彼の顔が見たくて、ベベドナは夜の街を駆けていった。
「ベベドナ!」
とはいえ修道女の名目で教会に滞在しながら夜遊びをしたことに後ろめたさを感じ、誰もいない廊下を抜き足指し足で歩くベベドナだが、背後からいきなり名前を呼ばれ、足に暖かい温度を感じビクリとする。
「あんたか…なんでまだ起きてるんだい」
見れば教会で一番幼い子供が足にしがみついていた。
「お手洗いに…」
「そう、早く寝なよ」
「キヴィ様もベベドナもいなくなっちゃうと思って、怖くて寝れなかった。マレンマレンは遊んでくれないし、勉強ばっかさせるし」
「キヴィ様もすぐ帰るよ。マレンマレンは忙しいからね。勉強もした方がいいよ。キヴィ様みたいになりたいんならね。」
「授業する時のキヴィ様、ちょっと変だから嫌…」
「何言うんだい。目がキラキラしてて可愛いだろ!」
幼い子供の頭を撫で、落ち着かせる。子供たちが寝る部屋まで連れていき、寝るまで側にいてやった。
ここの子供は甘やかされ過ぎて心配だけど、大丈夫なのかね…キヴィ様、勉学や道徳関係にはそれなりに厳しいけど。
そんなことを考え、酒場の男の言葉を思い出したベベドナはふふと笑った。
翌朝、ベベドナは香水をかけまくり酒臭さを誤魔化してキヴィを迎えたが、だいぶやつれたキヴィは疲れた笑顔で笑ったあと、すぐに自室に行ってしまい、昼まで出てこなかった。
何かあったかとベベドナたちは気を揉んだが、目の下にくまをつくって出てきたキヴィによれば、論戦で疲れたあと旧知の人物に深夜まで飲まされ、そこから馬車で帰って頭痛と眠気がひどすぎたという。それは災難だったね、と言いつつベベドナはキヴィから香るワインの香りに女の匂いが混じっていないことを確認し、安心した。
ベベドナはキヴィの無事を、天上にいるらしい神に感謝しておいた。
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