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公爵が語る真実
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「もう一つ。もうローズって呼んでいい?」
ローズミナの愛称をロイナルドは呼ぶ数少ない一人だ。
両親、姉から呼ばれていた愛称をクーデターの後、呼ばれるのが辛くローズミナと呼んでもらっていたのだ。
コクリとローズミナは頷いた。
もうそう呼ばれても悲しいと思わなくなっていた。
「ローズ、あなたは捨てられた訳ではない。そのことは伝えておきたい。」
ニコニコ微笑んでいたロイナルドが急に真顔になった。
「そのことはもういいの。」
ロイナルドの言葉をこれ以上聞きたくないとローズミナは遮った。
「いや、一生重荷になるのがわかっていて黙っていることはできない。兄上は前に一度、フィルランダ前国王にあなたを王妃に迎えたいと打診していた。」
「えっ?」
そんな話は初めて聞いた。
現国王もロイナルドとともにローズミナとよく遊んだ幼馴染だ。
そんな話になってもおかしくない。
だが、ローズミナは父からもそんな話を聞いたことがなかった。
大きな利益の縁談がどうして進まなかったのか‥
「兄上も関係性もいい、しかも隣国との同盟強化というメリットもある縁談を断られるなんて考えていなかった。しかし、前国王の返答はローズを王妃にはできないというものだった。あなたは心が綺麗すぎると。子どもとして守られているうちはなんとかなっても、王妃となればそうはいかない。悪意に溢れた王宮の中で、あなたが生きていくのには心がもたないというものだった。」
「そんなこと‥」
「あなたは積極的に孤児院や貧困層への救済をしていただろう。前フィルランダ国王は、国民の姿を見て声を聞き、何もできないと嘆き苦しんでいたあなたを見て、国民達の現状を知り、なんとかしないといけないと言っていたそうだ。そして、落ち着いたら臣下に嫁がせ、ローズを廃嫡させると。前国王はあなたも守りたかったのだと思うよ。」
父は家族を愛していた。
それでも王族としての役目を優先させていると思っていた。
「お父様‥私の覚悟のなさに気づいていたのですね。」
ローズミナは涙を流した。
「ローズ‥」
誰かを救うために誰かを犠牲にする。
王族として選ばねばいけない時もある。
全ての人を救うことなどできない。
ローズミナにはその選択ができないことは自分でもわかっていた。
国を治める器ではないという父の言葉‥王族から離れ、幸せになれというエールだったのだと思うと救われたような気がした。
—————————-
ロイナルドの妻であるローズ公爵夫人は元平民であり、社交の場には姿を現さなかった。
元王子である公爵は見た目も麗しく、また優秀であり、領地もとても豊か。
そんな優良物件を平民に持っていかれた貴族達の反感は強く、お茶会などに誘うものもなかった。
だが、隣国である女王ミルラレティーだけは外交で国を訪れた時、必ず公爵家に立ち寄った。
ミルラレティーは公爵と幼馴染であり、家族ぐるみで仲が良いのだという。
その妻が平民であり、女王が会うことは不敬ではないかとの意見も出ていたが、公爵自身、気にするそぶりも見せず無視をしていたし、国王も許していたため、表立って批判する者はいなかった。
フィルランダ王国はクーデターからだいぶ落ち着きを見せ、女王は立て続けに産んだ王子、王女を連れて外交ができるくらいになっていた。
夫である宰相補佐は宰相となり、女王を支え、歴代最高の宰相となるだろうも囁かれている。
ミルラレティーは外交を言い訳にまた今日も公爵の家を訪れるのであった。
FIN
ローズミナの愛称をロイナルドは呼ぶ数少ない一人だ。
両親、姉から呼ばれていた愛称をクーデターの後、呼ばれるのが辛くローズミナと呼んでもらっていたのだ。
コクリとローズミナは頷いた。
もうそう呼ばれても悲しいと思わなくなっていた。
「ローズ、あなたは捨てられた訳ではない。そのことは伝えておきたい。」
ニコニコ微笑んでいたロイナルドが急に真顔になった。
「そのことはもういいの。」
ロイナルドの言葉をこれ以上聞きたくないとローズミナは遮った。
「いや、一生重荷になるのがわかっていて黙っていることはできない。兄上は前に一度、フィルランダ前国王にあなたを王妃に迎えたいと打診していた。」
「えっ?」
そんな話は初めて聞いた。
現国王もロイナルドとともにローズミナとよく遊んだ幼馴染だ。
そんな話になってもおかしくない。
だが、ローズミナは父からもそんな話を聞いたことがなかった。
大きな利益の縁談がどうして進まなかったのか‥
「兄上も関係性もいい、しかも隣国との同盟強化というメリットもある縁談を断られるなんて考えていなかった。しかし、前国王の返答はローズを王妃にはできないというものだった。あなたは心が綺麗すぎると。子どもとして守られているうちはなんとかなっても、王妃となればそうはいかない。悪意に溢れた王宮の中で、あなたが生きていくのには心がもたないというものだった。」
「そんなこと‥」
「あなたは積極的に孤児院や貧困層への救済をしていただろう。前フィルランダ国王は、国民の姿を見て声を聞き、何もできないと嘆き苦しんでいたあなたを見て、国民達の現状を知り、なんとかしないといけないと言っていたそうだ。そして、落ち着いたら臣下に嫁がせ、ローズを廃嫡させると。前国王はあなたも守りたかったのだと思うよ。」
父は家族を愛していた。
それでも王族としての役目を優先させていると思っていた。
「お父様‥私の覚悟のなさに気づいていたのですね。」
ローズミナは涙を流した。
「ローズ‥」
誰かを救うために誰かを犠牲にする。
王族として選ばねばいけない時もある。
全ての人を救うことなどできない。
ローズミナにはその選択ができないことは自分でもわかっていた。
国を治める器ではないという父の言葉‥王族から離れ、幸せになれというエールだったのだと思うと救われたような気がした。
—————————-
ロイナルドの妻であるローズ公爵夫人は元平民であり、社交の場には姿を現さなかった。
元王子である公爵は見た目も麗しく、また優秀であり、領地もとても豊か。
そんな優良物件を平民に持っていかれた貴族達の反感は強く、お茶会などに誘うものもなかった。
だが、隣国である女王ミルラレティーだけは外交で国を訪れた時、必ず公爵家に立ち寄った。
ミルラレティーは公爵と幼馴染であり、家族ぐるみで仲が良いのだという。
その妻が平民であり、女王が会うことは不敬ではないかとの意見も出ていたが、公爵自身、気にするそぶりも見せず無視をしていたし、国王も許していたため、表立って批判する者はいなかった。
フィルランダ王国はクーデターからだいぶ落ち着きを見せ、女王は立て続けに産んだ王子、王女を連れて外交ができるくらいになっていた。
夫である宰相補佐は宰相となり、女王を支え、歴代最高の宰相となるだろうも囁かれている。
ミルラレティーは外交を言い訳にまた今日も公爵の家を訪れるのであった。
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