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聖女の変化
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ドレスは淡いものからパステルカラーに変えた。
腰まであった髪も肩下まで切ってスッキリした。
本当はコトミの時と同じショートボブくらいにしたいけど、流石に反対されそうでやめた。
ミルダさんは髪を切る際、何か言いたげな顔をしたが、何も言うことはなかった。
私も知っている。
この国のお姫様は髪の毛を伸ばす事が常識だと。
ルイードも私の姿を見て驚いていたが、何も言わなかった。
バレたなら少しでもコトミらしくいたかった。
いつかここを出て平民として暮らしていくのだという私の決意表明‥
誰にも言ってはいないけど、自分の中での区切りだ。
「また来たの?」
「またとは何だ?来てやっただけありがたいと思え。」
拗ねたような口をしているルイードは幼い。
いや、年相応なんだろうか。
きっとこの国の王子様は日本より精神年齢が高い気がする。
そのように教育されているんだろうな。
今のルイードがきっと素なんだろうなと最近気づいてきた。
「来てほしいなんて一言も言っていないよ。」
私も嬉しいと思いながら悪ノリをする。
ルイードはプイッと横を向いて
「コトミはアイーダではないが、聖女である以上、婚約者だ。不仲だと思われたくない。」
ちょっと胸が痛い。
まぁ、そうだよね。
レオさんからもすぐには婚約は破棄できないと言われている。
「婚約やめれないの?聖女は記憶を失ったからとか言って。」
「やめたいのか?」
「えっ?ルイードはアイーダが好きなんだよね?いくら姿形は同じでも嫌じゃない?」
「コトミが聖女である以上、俺との婚約は決定事項だ。」
ルイードは真っ直ぐに私を見て言い切る。
聖女だから。
そう、婚約がなかなか破棄できない理由も聖女であるからなのだ。
胸が痛い。
私自身を見てほしい。
でも、ルイードの婚約者であるのは聖女であるから。
この事実は変わらない。
なんか嫌だなぁと思うけど、考えても仕方ない。
明るく振舞ってごまかす。
「えー?私、恋愛もできないの?」
「したいのか?」
「そりゃあ、彼氏の一人も欲しい年頃だよ。」
そう、本当だったら花の女子高生だったんだよなとしみじみ思う。
「じゃあ、俺にしとけ。」
簡単に言ってくれるなぁ。
この国は自由恋愛ではないとレオさんに聞いた。
私との婚約関係もルイードにとったら当たり前の事なんだろう。
「キラキラ美形は目が肥えそうで嫌だ!」
だって、いつかここを出て行かなくちゃいけないし。
ルイード基準じゃ確実に彼氏はできない。
「言っている意味わからんが、コトミの婚約者は俺だ。これは決定事項だ!」
この会話をもう何度繰り返しただろう。
そんなに聖女の婚約者でいたいのかな。
ルイードは私が婚約者に変わって本当にいいのかな?
アイーダが死んでる以上はどうにもならないけど。
心の中が覗けたらいいのに‥
王族は小さなうちから婚約者が決まっているってミルダさんは言っていた。
王妃様や王子妃の教育はそのくらい大変な事らしい。
アーリア姫を見て思った。
マナーの勉強をしていて感じた。
私には妃になれる人間じゃない。
「ねぇ、私そのうち、ルイードの婚約者を外れたら外に出れる?」
「出たいのか?」
「元の世界じゃ平民だよ、こんなところ息が詰まる。学校にはもう行けないから外で働いて彼氏も作っていつか結婚もしたいな。」
ルイードはそんな私を苦笑いで見ているだけだった。
どうせ、夢見る女子高生ですよ。
だって本当に手に入れたいものは望めないんだもん。
それなら、できるだけ早く離れたい。
「あんまりここに来てないで、早くルイードも好きな人見つけないとダメだよ!」
無理して笑いかける。
「俺には必要ない。」
またプイッと目を逸らされた。
「そう?まぁ出会いは突然だしね!いい人できたら教えてね!」
お茶を飲むフリをして視線をずらす。
ごめんね、笑って言ってあげられるだけの演技力はないな。
聖女という立場がルイードを縛ってしまっている。
早く解放してあげたいけど‥
嫌だなって思う私もいる。
少し沈黙。
「そういうコトミもこんなところにいるから出会いなんてないだろう。そんな夢みたいなことさっさと諦めろ。」
基本、この宮はメイドさんなど女性しかいない。
ここで会ったことある男性はレオさん、護衛の騎士さん達くらいだ。
通りすがり人と議会にいたおじさんは除くけど。
「そんなんだよね、でも会う人会う人男前ばっかりで目が肥える。この国はみんなこんな感じなの?ルイードもレオさんも護衛さんたちもみんなカッコいいよね。」
「レオさん?護衛?」
怪訝そうに見る。
「そう、騎士さんのあの筋肉、いいよね。一生守りますとか言われてみたい!!キャー、惚れちゃうよね!」
ルイードは意味がわからないといった呆れ顔。
「いや、護衛に惚れたらいけないだろ。」
「仕事で守られるんじゃなくて大切な人として言われてみたいの!」
拗ねたように私も言う。
いきなりルイードは膝をついて私の手を取った。
「コトミ、あなたを私の全てをかけて一生守っていく。だから私の側にずっといてほしい。」
唇を手の甲にチュとつけた。
くぅ、やられた。
ルイードの名演技!
かっこいいし、ノリノリだ。
俳優になればすぐに人気者になる。
間違いない!
「いいですよ。ルイード王子様。」
私もルイードの悪ノリにのってニッコリと微笑む。
嘘でも嬉しいと思う自分がいる。
ルイードが一瞬頬を赤らめて
「じゃあ、コトミ‥」
「なーんて。それ新しい婚約者さんにも言ってあげたら一瞬で惚れられちゃうよ!すごいね、やっぱり王子様だね、ルイードは」
ミルダがルイードに近づいて囁く。
「聖女様は鈍いようですね‥。」
「そのようだな、とりあえずアルーやその他の護衛達にも近づかないように行っておかねば。皆にお面をつけるか?」
「それでは、対応が遅れて護衛の意味がありません。」
「そうだな‥それにレオさんか、兄上が愛称を教えるなんて‥」
きゃっきゃ嬉しそうに話すコトミをみてルイードは嫌なものを感じていた。
腰まであった髪も肩下まで切ってスッキリした。
本当はコトミの時と同じショートボブくらいにしたいけど、流石に反対されそうでやめた。
ミルダさんは髪を切る際、何か言いたげな顔をしたが、何も言うことはなかった。
私も知っている。
この国のお姫様は髪の毛を伸ばす事が常識だと。
ルイードも私の姿を見て驚いていたが、何も言わなかった。
バレたなら少しでもコトミらしくいたかった。
いつかここを出て平民として暮らしていくのだという私の決意表明‥
誰にも言ってはいないけど、自分の中での区切りだ。
「また来たの?」
「またとは何だ?来てやっただけありがたいと思え。」
拗ねたような口をしているルイードは幼い。
いや、年相応なんだろうか。
きっとこの国の王子様は日本より精神年齢が高い気がする。
そのように教育されているんだろうな。
今のルイードがきっと素なんだろうなと最近気づいてきた。
「来てほしいなんて一言も言っていないよ。」
私も嬉しいと思いながら悪ノリをする。
ルイードはプイッと横を向いて
「コトミはアイーダではないが、聖女である以上、婚約者だ。不仲だと思われたくない。」
ちょっと胸が痛い。
まぁ、そうだよね。
レオさんからもすぐには婚約は破棄できないと言われている。
「婚約やめれないの?聖女は記憶を失ったからとか言って。」
「やめたいのか?」
「えっ?ルイードはアイーダが好きなんだよね?いくら姿形は同じでも嫌じゃない?」
「コトミが聖女である以上、俺との婚約は決定事項だ。」
ルイードは真っ直ぐに私を見て言い切る。
聖女だから。
そう、婚約がなかなか破棄できない理由も聖女であるからなのだ。
胸が痛い。
私自身を見てほしい。
でも、ルイードの婚約者であるのは聖女であるから。
この事実は変わらない。
なんか嫌だなぁと思うけど、考えても仕方ない。
明るく振舞ってごまかす。
「えー?私、恋愛もできないの?」
「したいのか?」
「そりゃあ、彼氏の一人も欲しい年頃だよ。」
そう、本当だったら花の女子高生だったんだよなとしみじみ思う。
「じゃあ、俺にしとけ。」
簡単に言ってくれるなぁ。
この国は自由恋愛ではないとレオさんに聞いた。
私との婚約関係もルイードにとったら当たり前の事なんだろう。
「キラキラ美形は目が肥えそうで嫌だ!」
だって、いつかここを出て行かなくちゃいけないし。
ルイード基準じゃ確実に彼氏はできない。
「言っている意味わからんが、コトミの婚約者は俺だ。これは決定事項だ!」
この会話をもう何度繰り返しただろう。
そんなに聖女の婚約者でいたいのかな。
ルイードは私が婚約者に変わって本当にいいのかな?
アイーダが死んでる以上はどうにもならないけど。
心の中が覗けたらいいのに‥
王族は小さなうちから婚約者が決まっているってミルダさんは言っていた。
王妃様や王子妃の教育はそのくらい大変な事らしい。
アーリア姫を見て思った。
マナーの勉強をしていて感じた。
私には妃になれる人間じゃない。
「ねぇ、私そのうち、ルイードの婚約者を外れたら外に出れる?」
「出たいのか?」
「元の世界じゃ平民だよ、こんなところ息が詰まる。学校にはもう行けないから外で働いて彼氏も作っていつか結婚もしたいな。」
ルイードはそんな私を苦笑いで見ているだけだった。
どうせ、夢見る女子高生ですよ。
だって本当に手に入れたいものは望めないんだもん。
それなら、できるだけ早く離れたい。
「あんまりここに来てないで、早くルイードも好きな人見つけないとダメだよ!」
無理して笑いかける。
「俺には必要ない。」
またプイッと目を逸らされた。
「そう?まぁ出会いは突然だしね!いい人できたら教えてね!」
お茶を飲むフリをして視線をずらす。
ごめんね、笑って言ってあげられるだけの演技力はないな。
聖女という立場がルイードを縛ってしまっている。
早く解放してあげたいけど‥
嫌だなって思う私もいる。
少し沈黙。
「そういうコトミもこんなところにいるから出会いなんてないだろう。そんな夢みたいなことさっさと諦めろ。」
基本、この宮はメイドさんなど女性しかいない。
ここで会ったことある男性はレオさん、護衛の騎士さん達くらいだ。
通りすがり人と議会にいたおじさんは除くけど。
「そんなんだよね、でも会う人会う人男前ばっかりで目が肥える。この国はみんなこんな感じなの?ルイードもレオさんも護衛さんたちもみんなカッコいいよね。」
「レオさん?護衛?」
怪訝そうに見る。
「そう、騎士さんのあの筋肉、いいよね。一生守りますとか言われてみたい!!キャー、惚れちゃうよね!」
ルイードは意味がわからないといった呆れ顔。
「いや、護衛に惚れたらいけないだろ。」
「仕事で守られるんじゃなくて大切な人として言われてみたいの!」
拗ねたように私も言う。
いきなりルイードは膝をついて私の手を取った。
「コトミ、あなたを私の全てをかけて一生守っていく。だから私の側にずっといてほしい。」
唇を手の甲にチュとつけた。
くぅ、やられた。
ルイードの名演技!
かっこいいし、ノリノリだ。
俳優になればすぐに人気者になる。
間違いない!
「いいですよ。ルイード王子様。」
私もルイードの悪ノリにのってニッコリと微笑む。
嘘でも嬉しいと思う自分がいる。
ルイードが一瞬頬を赤らめて
「じゃあ、コトミ‥」
「なーんて。それ新しい婚約者さんにも言ってあげたら一瞬で惚れられちゃうよ!すごいね、やっぱり王子様だね、ルイードは」
ミルダがルイードに近づいて囁く。
「聖女様は鈍いようですね‥。」
「そのようだな、とりあえずアルーやその他の護衛達にも近づかないように行っておかねば。皆にお面をつけるか?」
「それでは、対応が遅れて護衛の意味がありません。」
「そうだな‥それにレオさんか、兄上が愛称を教えるなんて‥」
きゃっきゃ嬉しそうに話すコトミをみてルイードは嫌なものを感じていた。
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