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聖女暗殺未遂の罪(王太子視点)
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聖女様がルイードを叩いた。
唇から血が流れているのを見ると本気で叩いたのだろう。
あり得ない聖女様の動きに驚き、対応が遅れる。
ルイードもルイードだが、その上をいく聖女様‥
グダグダな様相をみせる議会。
誰も何も言わない。
というより言えないのだ。
聖女様の剣幕があまりに凄すぎて‥
ルイードが言った言葉‥
「お前は聖女だ。代わりなどいない。」
間違ったことは言っていない。
国王は別としてもこの国では聖女様が全てにおいて最優先にされる。
そんな当たり前の事を聖女様自身が否定された。
何が聖女様を怒らせる地雷となるのか皆、分からないため、議会は静まり返る。
「聖女様、私の事は構いません。お守りできず、本当に申し訳ありませんでした。」
ルイードと聖女様の揉めている原因が自分である事に耐えきれずアルーが謝る。
聖女様はアルーの方を向き睨んだ。
ビクつくアルー。
「あなたにも怒っているんだからね!確かに私が全部悪かったんだけど!私を逃すためにあなたは生き残る事を諦めた。命を捨てようとした。そんな事、もうそんな事しないで‥」
怒鳴り声はだんだんと小さくなり、聖女様の目から涙が流れていた。
聖女様はアルーに近づき手を握った。
「温かい。本当に生きていて良かった‥。ごめんなさい、私のせいで、もう死なないで‥お願いだから。死んだら全部終わっちゃうんだよ。」
聖女様の声は優しい。
アルーは泣くのを堪えているのか眉間にシワが寄った。
「聖女様、一生お仕え致します。」
アルーが聖女様に跪き、剣を立て騎士の誓いをした。
アルーはもう決めてしまった‥聖女様に一生仕えると。
この若さで主を選ぶ事はまずない。
騎士として主を決めてしまえばもう軍部には戻れず、主を変える事もできない。
アルーはもう聖女様にしか仕える事ができなくなってしまったのだ。
きっと聖女様はアルーの決意をわかってはいないだろう。
よろしくと笑いかけている。
「私はもっと強くなります。聖女様を守れるように。聖女様も、もう私の命を守るために賊に向かっていかないでくださいね。倒せたから良かったものの‥」
アルーにそう言われて聖女様はちょっと考えて下を向いた。
「そうだね‥あなたに言ったのと同じ事してたね。ごめんなさい。」
シュンとする聖女様は可愛らしい。
この会話から聖女様が賊を倒したのがバレた。
アルーと騎士団長にはアルーが聖女様の力で命を救われた事と間者説が否定された事は伝えており、問題はなかったが‥
聖女様が賊を倒した事実とさっきルイードを叩いたのを見てしまった衝撃で皆、完全に固まっている。
聖女様の神聖なイメージは違った方向に向かってしまった‥。
その混乱に乗じてさっさと事を済ませよう。
まだルイードは聖女様に叩かれ、怒鳴られたショックから立ち直っていない。
聖女様がアーリア姫を庇った以上、誰も口出しなどできない。
アーリア姫は不問、後は減給の処罰で終わらせた。
どうなるかと思ったが、思った以上に良い終わり方ができた事にホッと息をつく。
聖女様の考え方はコトミ様の世界の考え方はなのだろう。
この世界の常識とは全く合わない。
だが、聖女様にはそのままでいてほしいと思う自分がいる。
ルイードはまだ固まったまま。
聖女様の想いなど見ていたらすぐわかるのに、本当に馬鹿だ。
聖女様が正体について告白をした時、私を呼んだのはルイードが聖女様をかばって立場を悪くするのを防ぎたかったから。
今だってアーリア姫の味方をしたのは自分に置き換えてしまい、ルイードの冷たい態度が許せなかったから。
聖女様はいつだってルイードを見つめている。
ルイードはレオなどという愛称で呼ばせているのに気付いたらどうするだろう。
クスリと笑いが出る。
本名がレオンバールという名だと教えず、いきなり愛称を伝えていた。
それほどに私の中で聖女様を好ましく思っている事にも自分でも驚いた。
「レオさん」
と満面の笑みで話しかけてくる聖女様を思い出して温かいものを感じた。
これがルイードの執着するものなんだと実感する。
ルイードは大切な弟だ。
彼の幸せを願っているのも事実で、今なら聖女様への想いに蓋をする事はできる。
だが、聖女様の希望は‥
いつルイードに伝えよう。
ルイードが荒れない事を祈るのみだ。
唇から血が流れているのを見ると本気で叩いたのだろう。
あり得ない聖女様の動きに驚き、対応が遅れる。
ルイードもルイードだが、その上をいく聖女様‥
グダグダな様相をみせる議会。
誰も何も言わない。
というより言えないのだ。
聖女様の剣幕があまりに凄すぎて‥
ルイードが言った言葉‥
「お前は聖女だ。代わりなどいない。」
間違ったことは言っていない。
国王は別としてもこの国では聖女様が全てにおいて最優先にされる。
そんな当たり前の事を聖女様自身が否定された。
何が聖女様を怒らせる地雷となるのか皆、分からないため、議会は静まり返る。
「聖女様、私の事は構いません。お守りできず、本当に申し訳ありませんでした。」
ルイードと聖女様の揉めている原因が自分である事に耐えきれずアルーが謝る。
聖女様はアルーの方を向き睨んだ。
ビクつくアルー。
「あなたにも怒っているんだからね!確かに私が全部悪かったんだけど!私を逃すためにあなたは生き残る事を諦めた。命を捨てようとした。そんな事、もうそんな事しないで‥」
怒鳴り声はだんだんと小さくなり、聖女様の目から涙が流れていた。
聖女様はアルーに近づき手を握った。
「温かい。本当に生きていて良かった‥。ごめんなさい、私のせいで、もう死なないで‥お願いだから。死んだら全部終わっちゃうんだよ。」
聖女様の声は優しい。
アルーは泣くのを堪えているのか眉間にシワが寄った。
「聖女様、一生お仕え致します。」
アルーが聖女様に跪き、剣を立て騎士の誓いをした。
アルーはもう決めてしまった‥聖女様に一生仕えると。
この若さで主を選ぶ事はまずない。
騎士として主を決めてしまえばもう軍部には戻れず、主を変える事もできない。
アルーはもう聖女様にしか仕える事ができなくなってしまったのだ。
きっと聖女様はアルーの決意をわかってはいないだろう。
よろしくと笑いかけている。
「私はもっと強くなります。聖女様を守れるように。聖女様も、もう私の命を守るために賊に向かっていかないでくださいね。倒せたから良かったものの‥」
アルーにそう言われて聖女様はちょっと考えて下を向いた。
「そうだね‥あなたに言ったのと同じ事してたね。ごめんなさい。」
シュンとする聖女様は可愛らしい。
この会話から聖女様が賊を倒したのがバレた。
アルーと騎士団長にはアルーが聖女様の力で命を救われた事と間者説が否定された事は伝えており、問題はなかったが‥
聖女様が賊を倒した事実とさっきルイードを叩いたのを見てしまった衝撃で皆、完全に固まっている。
聖女様の神聖なイメージは違った方向に向かってしまった‥。
その混乱に乗じてさっさと事を済ませよう。
まだルイードは聖女様に叩かれ、怒鳴られたショックから立ち直っていない。
聖女様がアーリア姫を庇った以上、誰も口出しなどできない。
アーリア姫は不問、後は減給の処罰で終わらせた。
どうなるかと思ったが、思った以上に良い終わり方ができた事にホッと息をつく。
聖女様の考え方はコトミ様の世界の考え方はなのだろう。
この世界の常識とは全く合わない。
だが、聖女様にはそのままでいてほしいと思う自分がいる。
ルイードはまだ固まったまま。
聖女様の想いなど見ていたらすぐわかるのに、本当に馬鹿だ。
聖女様が正体について告白をした時、私を呼んだのはルイードが聖女様をかばって立場を悪くするのを防ぎたかったから。
今だってアーリア姫の味方をしたのは自分に置き換えてしまい、ルイードの冷たい態度が許せなかったから。
聖女様はいつだってルイードを見つめている。
ルイードはレオなどという愛称で呼ばせているのに気付いたらどうするだろう。
クスリと笑いが出る。
本名がレオンバールという名だと教えず、いきなり愛称を伝えていた。
それほどに私の中で聖女様を好ましく思っている事にも自分でも驚いた。
「レオさん」
と満面の笑みで話しかけてくる聖女様を思い出して温かいものを感じた。
これがルイードの執着するものなんだと実感する。
ルイードは大切な弟だ。
彼の幸せを願っているのも事実で、今なら聖女様への想いに蓋をする事はできる。
だが、聖女様の希望は‥
いつルイードに伝えよう。
ルイードが荒れない事を祈るのみだ。
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