【完結】悪役王女は裏で動くのがお好き

アルロック王城の日常

「ミア、仕事終わった？」
アンロック王城メイドのアンは同期であるミアに声をかけた。

「うーん、もうちょっとかかりそう。先に戻ってて。」

こげ茶色の髪を後ろで一つにくくり、メイド用のキャップを付けてほうきではきながらミアはアンに笑顔で返した。

目が悪いと大きなメガネをかけそばかすがあるミアはお世辞にも美人とは言えなかった。

せっかく王城で働いているのだから化粧の一つでもしたらいいのにとアンは思っている。

年頃の女性にとって王城は結婚相手を探す良い場になっていた。
貴族との結婚は難しいが、軍隊員、文官には平民も結構いる。
しかも、平民で王城で働けるというのはエリートであり、生活も安定しているのだ。

ミアは恋人がいないと言っていた。
女が一人で生きていくのは、なかなか難しい。
行きおくれといわれる歳になってもミアにはなんの焦りもないことがアンには不思議でしょうがなかった。
年下のアンにとってミアは頼りになるお姉さんだ。
幸せになって欲しいと考えていた。

「じゃあ、先に戻っているね。」
「うん、また後でね。」

ミアはとても気が利いて仕事も早い。
そのせいか、色々な仕事を押し付けられ仕事がおすことも多かった。
それを愚痴一つ言わず、笑顔でこなすミアをアンは尊敬していた。


ミアはアンの後ろ姿を見送りながら呟いた。
「こんな平和がずっと続けばいいのに。」

ミアにとってアンのような存在がとても嬉しかった。
アンは平民であったが、メイドとなるべく職業学校を卒業しており、メイドの卵たちには人気がある王城に採用されたのだ。

暗殺者や間者の可能性などもあるため、家族関係などは徹底的に調べられるが、それ以外は基本的に本人の技量と知識の実力で勝ち取ったものだ。

平民であるアンが素直に笑って幸せな将来を話すことができる‥
アルロックがそんなことができる国だと実感することができる。
父が命をかけて守ったこの国の平和を見るのがミアは好きで誇らしかった。

「あっ、もう時間。」
宰相に呼ばれてるんだった。
早く行かなきゃ。
ミアは慌てて仕事を終わらせ、宰相のところに向かった。