【完結】悪役王女は裏で動くのがお好き

みやちゃん

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宰相の苛立ち

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コンコン

宰相の執務室がノックされた。

「入れ」
宰相がそのノックに答える。

「失礼します。」
ミアが一礼をして執務室に入る。

宰相以外にも文官がいた。

「あぁ、もうそんな時間か。すまない、時間が押していてまだもう少しかかりそうだ。」

眉を下げてすまなさそうにメイドに謝っている。
これを見た文官が驚いて目を大きく見開いた。
冷静沈着でいつも威圧感がすごく皆から恐れられている宰相が本当に申し訳なさそうに謝るなんて。
しかもまだ若いメイドにだ。

「いえ、私は構いません。こちらのお話が急ぎでなければ、日時の変更をしましょうか?」
メイドは遠慮気味に言った。

宰相は文官をチラッと見て
「そうしてもらえると助かる。」

「わかりました。また、必要な時にお呼びください。」
一礼をしてミアは部屋を出た。

その様子を文官はジッと見つめていた。
ミアの流れるような優雅な礼儀作法に見とれていた。

「先ほどの方は?」
文官は聞いてからしまったと思った。
宰相は仕事中の私語を嫌がるので、普段なら仕事に関する話しかしないが、先ほど見た光景に驚いてつい聞いてしまったのだ。

「あの方は私の大切なお方のご令嬢だ。あの若さで父の意思をしっかりとついでおられる。」

宰相が目を細めて懐かしむように答えた。

宰相が自分のことを話しただけでも驚きではあるが、それよりあの20歳そこそこの女性に対し、敬語を使ったことにも文官は驚いた。

宰相が大切なお方というのは誰だろうか?
貴族なのは間違いない。
文官は気にはなったが、これ以上の私語はやめておいた方が良いと判断し
「そうですか。」
とだけ声を出した。

ただ、彼女に無礼な振る舞いだけはしない方が良いと思った。
宰相にあんな表情にさせる彼女の敵に回れば、宰相の敵となってしまう‥そんな表情に見えたからだ。


文官と30分ほど議論をした後、執務室は宰相一人となり、ため息が漏れた。

「はぁ、何で急に仕事が入るんだ?せっかくおいでくださったのに。」

グチグチと独り言をつぶやいている。

皆から恐れられいる宰相は、ミアのことが大好きなただのおっさんだ。
ミアを呼んでお茶でもしながら最近の様子を聞きたいだけだった。

忙しい中、時間を確保するのにどれだけ頑張って政務をこなしたか。

それをあの文官は!!
問題があっても持ってくるタイミングというものがあるだろう!
理不尽な怒りをぶつける先もなく、机をガンと叩いた。

一息おくと、ミアと過ごす時間が欲しい宰相は、ミアの勤務表を見ながら自分の予定と会う日を探していく。

勤務表を私用に使うなど宰相がするべきではないが、それどころではない。

同じ王城にいても接点がなく、なかなか会えないのだ。

「次の約束を早く取らなければ奴に先を越されてしまう。」

ブツブツ言いながら勤務表を真剣に見つめる宰相。

何をしてるのか知らないものが見たらこの国の一大事があったと勘違いしそうなくらい真剣な顔だった。


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