【完結】愛する者を手に入れる事が皇帝になる条件です

みやちゃん

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皇帝と皇后

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イオマミール帝国の皇帝の私室。
珍しく皇后が来ていた。
皇帝、皇后の間にはギスギスした雰囲気が流れている。

「アイルーナになぜあのような条件を出したのですか?」
皇后は皇帝に聞く。
アイルーナと皇帝の契約を皇后は知っているようだ。

皇帝は皇后の方は見ず、書類に目を通しながら返答のみする。
「アイルーナは昔からずっと皇帝になる事のみに執着していた。帝王学もすべて終わらせている。皇帝となる前に愛する人と出会ってほしいと思ったのだ。権力では手に入らないものだ。」

皇后はハッと鼻で笑った。
「愛に溺れて権力を使ったのは誰なのかしら。」

「‥‥」

「私は貴方を許すつもりはないわ。アイルーナの邪魔などしないで。」
皇帝は顔を上げる。
皇后は皇帝と視線を合わせるのも嫌がり、視線をずらした。

「‥‥わかっている。」
皇帝は答える。

皇后は言いたいことだけをいうとすぐに皇帝の部屋を出た。

結婚当初からずっと部屋は別。
余程の用件がなければ皇后が来ることはない。
また、皇帝が皇后のところに行くことも。
公の場以外で会うことすら滅多になかった。

皇帝の実子が一人というのは珍しい。
後継者争いで優秀な者が皇帝となる。
その為に何人も子がいるのが通常だ。
現皇帝と皇后との間にアイルーナしかいない。
皇后は一人産んだのだからもういいだろうと皇帝を完全に拒否していたし、側室も迎えなかったので実子は一人だけとなった。

わかっている、皇后の悲しみや怒りは‥
皇帝はため息をつく。

「アレク」
微笑んでくれていた頃を思い出す。

どうして、こんな事になったのだろう。
自分が望んだわけではない。

親友の横で微笑んで私を呼ぶ彼女。
皇帝候補である自分を特別扱いしない大切な友人達だった。
私が彼女を想ったのがいけなかった。
皇帝となる自分の立場を理解していなかった。
どんなに後悔しても、もうあの頃には戻れない。

アイルーナには私と同じ思いはしてもらいたくない。
「親らしい事を何もしていない私が今更か‥」

皇帝は呟くと書類に目を通し始めた。
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