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「母上のお呼出など珍しいですね。何かありましたか?」

アルフードは王妃の部屋に呼ばれていた。
なぜ呼ばれたのかもわかっているのに、白々しい。
王妃はアルフードの悪びれない態度にイラつきを覚えた。

「なぜ、アメリア嬢にあそこまでするのです?」

「やっとアメリア嬢の名を呼んでくれましたか。あなたの将来の義娘になるのです。仲良くお願いしますね。」

アルフードはまたとろけるような笑顔を王妃に向けた。
そして質問はしっかりと避けている。
話すつもりはないようね。

あんなに物事に冷めていたこの子が…心を開いている令嬢がいるのは正直嬉しいけれど、それがあの令嬢なんて。

あのお茶会を思い出して残念感を否めない。

それにしてもどこで知り合ったのだろう。
アルフードがあそこまで思い入れるにはあの子を動かす何かがあったはず。

いくら思い返してもアルフードとアメリアの出会いに思い当たらなかった。
アルフードに関係した記録にもなかった。

「アメリア嬢が王子妃になるのは辛いのではないかしら?」
あのお茶会のアメリア嬢はひどすぎた。
マナーや礼儀作法など全くできていない。

今からその教育もしなければならないのは正直気が重いし、そもそもできないのかもしれないと王妃は思っていた。

人には得意不得意がある。
不得意な事があっても得意分野で生きていけば良い。
王妃もそう思っているが、王子妃となれば話は別だ。

国内外的にどうしても注目を浴びてしまう。
国の威厳を保つためにも王子妃の役割は大切だから。

「アメリア嬢が頑張っている姿は可愛らしかったですね。母上があのお茶会でのアメリア嬢を見てそう言っているのなら気にしなくても良いですよ。」

クスクスと笑うアルフードを見るとアメリア嬢の事を思い出しているのだろう。

「どういう意味かしら?」
王妃は目の前のアルフードが何を考えているのかわからなかった。
あれを見て気にしなくてもいいなんて…どうして思えるの?

王妃の不思議そうな顔をしているのを見たアルフードが答える。

「アメリア嬢は私の婚約者になりたくなくて、できない振りをしていただけですから。」

そんな事が?
アルフードの婚約者になるのは貴族なら名誉。
親のひいき目だけじゃない。
王子という地位、美貌、人望どれを見ても秀でている。
性格は少し腹黒いが、王族としては必要なものだし、しっかりと隠している。
その面では兄である王太子レアンより優秀だ。

レアンは優しく、真面目すぎる。
アルフードの狡猾さや腹黒さはレアンを補佐していく役目にちょうど良いと王妃自身思っている。

「あなた、アメリア嬢に本性を出したの?」
王妃はそれ以外にアルフードとの婚約を拒否する理由に思い当たらなかった。

「まさか、アメリア嬢には一生気付かせませんよ。真綿に包むように愛します。強いて言うなら愛が重すぎるからでしょうか?」

アルフードはニコニコと微笑みを絶やさない。
これほどアルフードの微笑みが怖いと思った事はないわ…嫌がろうとアメリア嬢はもう逃げられないわね。

アメリア嬢に同情する王妃だった。



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