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第2章
諦められない(ヴォルティス視点)
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ヴォルティスは命の泉に戻っていた。
命の泉の中で体を清める。
清めながら処刑場での出来事を思い返す。
かわいい子は完全ではないが、闇落ちしている。それは間違いない。
なのに何故、一緒にいて大丈夫だったのか。
それどころか前と変わらず、心が癒されている自分がいる。
穢れが少し増えたが、かわいい子から受けたのではなく、民衆達の悪意が集まったものだ。負の感情も多く集まれば穢れとなる。量は多くないが、大勢の前に出るのはやはり辛い。
「ヴォルティス様、大丈夫ですか?無理しすぎです。」
情報の神ルーマが命の泉に近づく。
チャプンと泉の水を揺らし、ヴォルティスは立ち上がる。
「大丈夫だ。私のかわいい子を闇落ちさせたのだ。許せる訳ないだろう。こうやって落とせるくらいの穢れだ。問題ない。」
私のかわいい子が闇落ちした。
どんなに心が澄んでいる聖女であっても負の感情に負けてしまう事がある事は知っている。
あのような残酷な場面を見たのだ、心優しいかわいい子が闇落ちをしても仕方がないと怒りも失望もなかった。
私の怒りはかわいい子を取り巻く人々へ向けられていた。
だが、かわいい子に会って考えが変わった。
闇落ちはしているが、あの子の体からは穢れは外に出ていず、自我もはっきりある。
かわいい子の中で様々な穢れがうごめいている。それなのに、あの子の周囲の空気が澄んでいる。私を気遣う余裕もある。
こんな事があり得るのか?
かわいい子に触れていれば、もっとはっきりと状況がわかっただろうが‥
「ルーマ、お前を呼んだのは真相を知りたいからだ。かわいい子についてまだ知っている事があるな?」
ルーマの表情が変わる。
ルーマは情報の神だ。私に全てを報告する義務がある。それにも関わらず、報告とかわいい子の現状があっていない。
ルーマは嘘をついてはいないが、情報を全て出してはいないと考えた。
「申し訳ありません‥」
そう言うとルーマは映像を映し出した。
あの闇落ちした時のものだ。何度も見たその映像には続きがあった。
かわいい子が闇落ちをした後、すぐに村の穢れが浄化されている場面が映し出されていた。
「これは‥」言葉が続かない。
かわいい子は優しい子だった。だから、闇落ちしたのかと納得できた。
「あれは他人の穢れです。殺された村人達の穢れを全て自分の中に抑え込みました。浄化する為に。」
そう、理不尽に殺された何十人もの村人が生み出した穢れは大きい。
無理やり穢れを切り離した代わりに穢れを取り込むことになったのだ。
「なぜ‥そのような事を‥かわいい子ならわかっているはずだ。穢れを取り込めばどうなるのか‥」
「わかっていて村人を救う道をとったのだと思われます。」
穢れに覆われれば魂は空には昇れず悪霊化し、穢れをうみ続ける。時間が経てば、浄化されても魂が傷つきすぎて、消滅し転生は難しくなる。
元々力が強いといっても神と結ばれていない聖女候補が浄化できるものではない。
アリーティナという聖女候補の時に倒れたからわかっていた筈だ。
私のかわいい子は闇落ちも覚悟していたのか?
村人を助けたければ、私に言えば良かったのだ。
穢れには触れられないが、聖女達が穢れを浄化した後、村人の魂の傷を癒し、あの世に送る事もできた。
輪廻の神にいえば次の転生先も配慮してもらえた。
そこまで考えて自虐的に笑う。
「その事を教えてなかったのは私か。」
そう、かわいい子が笑顔で「神様」と呼んでくれるのが嬉しかった。
だから、態度が変わって欲しくなくて敢えて自分の立場を言わなかった。
だから、ただの「神様」となったのだ。
結ばれる時、自分が神々を束れる最高位を持つ神だから選ばれたくなかった。
「私」自身を望んで欲しかった。
そして、裁きの神である事も知られたくなかった。人々を裁くと言う名のもとで死なせていたと知れば、嫌われるかもしれないと怖かった。
それがこんな事になるなんて‥
ルーマは私の心情に配慮してくれていたのだとわかる。
「ルーマ、かわいい子の闇落ちは通常と違うようだ‥調べてくれないか?」
もしかしたら、もしかしたら‥何とかできるのではないか。その考えがどうしても頭から離れない。
ルーマは悲しそうな顔をして答える。
「それがヴォルティス様のお望みならば。ただ、ヴォルティス様の望む結果となるかは保証はできません。聖女候補様が闇落ちをしている事実は変わりません。」
そんな事はわかっている。わかっていても諦められないのだ‥
命の泉の中で体を清める。
清めながら処刑場での出来事を思い返す。
かわいい子は完全ではないが、闇落ちしている。それは間違いない。
なのに何故、一緒にいて大丈夫だったのか。
それどころか前と変わらず、心が癒されている自分がいる。
穢れが少し増えたが、かわいい子から受けたのではなく、民衆達の悪意が集まったものだ。負の感情も多く集まれば穢れとなる。量は多くないが、大勢の前に出るのはやはり辛い。
「ヴォルティス様、大丈夫ですか?無理しすぎです。」
情報の神ルーマが命の泉に近づく。
チャプンと泉の水を揺らし、ヴォルティスは立ち上がる。
「大丈夫だ。私のかわいい子を闇落ちさせたのだ。許せる訳ないだろう。こうやって落とせるくらいの穢れだ。問題ない。」
私のかわいい子が闇落ちした。
どんなに心が澄んでいる聖女であっても負の感情に負けてしまう事がある事は知っている。
あのような残酷な場面を見たのだ、心優しいかわいい子が闇落ちをしても仕方がないと怒りも失望もなかった。
私の怒りはかわいい子を取り巻く人々へ向けられていた。
だが、かわいい子に会って考えが変わった。
闇落ちはしているが、あの子の体からは穢れは外に出ていず、自我もはっきりある。
かわいい子の中で様々な穢れがうごめいている。それなのに、あの子の周囲の空気が澄んでいる。私を気遣う余裕もある。
こんな事があり得るのか?
かわいい子に触れていれば、もっとはっきりと状況がわかっただろうが‥
「ルーマ、お前を呼んだのは真相を知りたいからだ。かわいい子についてまだ知っている事があるな?」
ルーマの表情が変わる。
ルーマは情報の神だ。私に全てを報告する義務がある。それにも関わらず、報告とかわいい子の現状があっていない。
ルーマは嘘をついてはいないが、情報を全て出してはいないと考えた。
「申し訳ありません‥」
そう言うとルーマは映像を映し出した。
あの闇落ちした時のものだ。何度も見たその映像には続きがあった。
かわいい子が闇落ちをした後、すぐに村の穢れが浄化されている場面が映し出されていた。
「これは‥」言葉が続かない。
かわいい子は優しい子だった。だから、闇落ちしたのかと納得できた。
「あれは他人の穢れです。殺された村人達の穢れを全て自分の中に抑え込みました。浄化する為に。」
そう、理不尽に殺された何十人もの村人が生み出した穢れは大きい。
無理やり穢れを切り離した代わりに穢れを取り込むことになったのだ。
「なぜ‥そのような事を‥かわいい子ならわかっているはずだ。穢れを取り込めばどうなるのか‥」
「わかっていて村人を救う道をとったのだと思われます。」
穢れに覆われれば魂は空には昇れず悪霊化し、穢れをうみ続ける。時間が経てば、浄化されても魂が傷つきすぎて、消滅し転生は難しくなる。
元々力が強いといっても神と結ばれていない聖女候補が浄化できるものではない。
アリーティナという聖女候補の時に倒れたからわかっていた筈だ。
私のかわいい子は闇落ちも覚悟していたのか?
村人を助けたければ、私に言えば良かったのだ。
穢れには触れられないが、聖女達が穢れを浄化した後、村人の魂の傷を癒し、あの世に送る事もできた。
輪廻の神にいえば次の転生先も配慮してもらえた。
そこまで考えて自虐的に笑う。
「その事を教えてなかったのは私か。」
そう、かわいい子が笑顔で「神様」と呼んでくれるのが嬉しかった。
だから、態度が変わって欲しくなくて敢えて自分の立場を言わなかった。
だから、ただの「神様」となったのだ。
結ばれる時、自分が神々を束れる最高位を持つ神だから選ばれたくなかった。
「私」自身を望んで欲しかった。
そして、裁きの神である事も知られたくなかった。人々を裁くと言う名のもとで死なせていたと知れば、嫌われるかもしれないと怖かった。
それがこんな事になるなんて‥
ルーマは私の心情に配慮してくれていたのだとわかる。
「ルーマ、かわいい子の闇落ちは通常と違うようだ‥調べてくれないか?」
もしかしたら、もしかしたら‥何とかできるのではないか。その考えがどうしても頭から離れない。
ルーマは悲しそうな顔をして答える。
「それがヴォルティス様のお望みならば。ただ、ヴォルティス様の望む結果となるかは保証はできません。聖女候補様が闇落ちをしている事実は変わりません。」
そんな事はわかっている。わかっていても諦められないのだ‥
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