わがまま妃はもう止まらない

みやちゃん

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レンラグス王国はルーマンの横に位置する広大な土地を有する王国である。
後継者争いや内部紛争が繰り返されており、問題が多い国であった。

そんな外交に時間をかけている場合ではないレンラグスから第二王女が留学にきた。
公にはなっていないが、レンラグスにいるのが危険であり、留学を理由にした国外避難である。

「レンラグスのマリア・ファームライスと申します。よろしくお願い致します。」
王女としてのマナーを完璧に身につけているマリア王女を見て謁見の間にいた者たちは目を奪われる。

レンラグスとはまだ十分に交流もなかったため、今後を期待して国王をはじめとする王族、有力貴族たちも謁見の間に集められていた。

マリアはとても美しい王女だった。優しげな物腰で微笑む彼女を見たら天使が舞い降りたのかと思ってしまうくらいだ。

「今年、16歳となられたと聞いた。学園の手配はしている。我が国でゆっくりと過ごされよ。」
ルーマン国王も笑顔でマリア王女を歓迎した。

「ありがとうございます。この国は戦争もなく豊かな国です。我が国もそのようになればと思っています。」
マリア王女はルーマン国王にも堂々と受け答えをしており、皆の印象をよくした。

国王の横に座っているクリストファーにも挨拶を行う。

「クリストファー様お久しぶりです。今後ともどうぞよろしくお願い致します。」
王女として綺麗にお辞儀をした。

「ああ、こちらこそ、そなたとの国と交流が深めていければと思っている。あなたがその架け橋となってくれれば嬉しい。」
クリストファーもにこやかに対応している。

「まぁ、ルーマンの王太子にそのようなお言葉を頂けるなんて光栄でございます。また、両国について話せる機会などあれば良いのですが…お会いできますか?」

「それなら是非、私の妃も共に食事でもどうだろうか。我が妃ミルアージュはアンロックの出身だ。せっかく来たのだ、他国の色々な情報を得て持ち帰るといい。」
クリストファーはマリア王女にそう返した。

「お妃様…」
マリア王女は意外そうな顔をした。
国王側につきクリストファーと仲が悪いという噂はレンラグスにも伝わっているようだ。

意外そうな顔をしたのは一瞬ですぐにフワフワした笑顔となる。
「ミルアージュ様ですね、お噂はレンラグスにも伝わっております。お会いできて光栄です。」

「ミルアージュ・ディロイア・ルーマンです。よろしくお願いいたします。」
ミルアージュも名前を名乗った。
ルーマンを名乗れる女性は王女のほかには王妃、王太子妃のみだ。
王太子クリストファーの妃として挨拶をした。

それにもマリアはすぐに反応した。

その様子を見れば…マリア王女の思いがわかってしまう。

素直な王女様ね…
こんな謁見の間で他国の王太子に興味があると言っているような態度だ。
ミルアージュはマリアの態度に少し呆れたが、羨ましくもあった。

それと同時に嫌な予感がしていた。
ルーマン貴族がどう動くか見たかったが、こんなに早く他国も絡んでくるなんて思いもしなかった。
問題はレンラグス王国が絡んでいるのか王女の思いだけなのか…
そんな風に冷静にマリアを観察してしまっている自分に気づく。

クリストファーが私に求めているもの…
きっとこの王女のような守ってあげたくなるような女性だろう。

お似合いよね…そう思うと胸がズキリと痛みながらマリアに微笑むミルアージュだった。
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