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マリア王女はミルアージュの部屋をいきなり訪ねてきた。
本来、前触れを出してから訪れるものだ。
王女が他国の王太子妃に対して突然の訪問などあり得ない。
「それなのにマリア王女を部屋に招き入れたのか?」
クリストファーはミルアージュに聞いた。
いくら相手が王女だからって安全管理が甘いと言われても仕方ない。
クリストファーを巡って揉めるかもしれないのだ。下手したら国際問題になる。
「いつもなら入れないわよ。なんかすごく思いつめていた顔をしていたから嫌な予感がしたのよ。」
ミルアージュは苦笑いをする。
「その時、クリスからのクッキーの差し入れがあったの。」
「?クッキーなんて差し入れてないぞ?」
クリストファーは首をかしげる。
「クリスの差し入れと知って止める間もなく口に入れたのよ。毒味もせずに…」
マリア王女は自分からクッキーを口に入れたとミルアージュは言ったが、その場にいたのはミルアージュとマリアだけだ。
実際のところはわからないと宰相も尋問官も思った。
それが本当ならマリアは自分で仕掛けたのでなければ、考えなしの愚かな王女ということになる。
「そう。クリスからの差し入れのね。」
ミルアージュはもう一度クリストファーからもらったと言う。
そこは誰も疑っていないので流してほしいと皆が思った。
「だから、差し入れていない!」
クリストファーはムキになって否定する。
ミアに毒物を送ったなど思われるのは本気でなくても嫌だ。
「そんなの知っているわよ。でもマリア王女がクリスの名の差し入れの毒を私の部屋で摂取するなんてできすぎよね?」
シーンと静まり返る。
裏があるとしか思えない状況に頭痛がする。
「それならなぜ毒の特定ができたのですか?」
宰相はミルアージュにきく。
「アンロックの王族なら毒の見極めや対処なんて当然よ。」
「?」
皆、頭にハテナマークが飛んでいる。
暗殺に備えて毒の耐性をつけるのは王族のあるあるだ。
だが、毒の見極めてどうなるのだ?
ミルアージュは少し言いにくそうに答える。
「お父様が病弱だったのは毒の後遺症が残ったから。だから徹底的に毒の耐性はつけられたし、毒の種類や摂取した時の対処方法は完璧なつもりよ。」
「だが、見た目ではわからないだろう?匂いか?」
クリストファーは意味がわからんと言う。
ミルアージュは本当のことを言うとクリストファーが怒るのが目に見えるが、言わないという選択肢はないという事もわかっていた。
これは尋問官もつき、正式に行われている尋問なのだから。
「マリア王女が食べたクッキーを口に含んだのよ。」
皆固まっている。
「毒物とわかっていて口に入れたのか?」
クリストファーは恐る恐る口を開く。
ミルアージュもバツが悪そうにハァーとため息をついた。
「マリア王女は苦しがっていたけど、即死しない程度の毒ならいけると思って。口に含んだ際、ランケットの特有の味がしたわ。」
「ミア!!何してるんだ!」
クリストファーの怒鳴り声が響き渡る。
ミルアージュは素直にごめんなさいと謝っている。
「ランケットってなかなか出回らないものですよね?どうして知っているのですか?」
宰相が口を挟む。
珍しい毒草のため、王族ですら耐性をつけにくく、甘味も含んでおり食材に混ぜるにはちょうど良いものだ。
そして、量により発現時期や症状も選ぶ事ができ使い勝手が良かったため、王族や高位貴族向けの毒物だった。
「幼い時、その毒で一度死にかけたから…結局犯人は捕まらなかったけれど、レンラグスの間者の仕業ではないかと言われていたわ。」
レンラグスはアンロックを侵略しようと何度か戦争を仕掛けていたし、因縁がある事は皆知っていたが、毒殺未遂の疑いもあったのだ…
クリストファーは息を飲んだ。
「証拠はあるのか?」
「憶測の域を出ないけれど、アンロックに攻め込んできていた事とランケットはレンラグスで取れる毒薬だったから。」
「どうしてそんな大事を言わなかった!知っていたらもう少し周囲を注意したのに。マリア王女にだって会わせなかった。」
クリストファーはミルアージュを抱きしめた。
「大丈夫よ、毒殺未遂なんて何度もあったから気にしてたらキリ無いわよ。」
ミルアージュは笑い飛ばした。
「他にもあったのか?」
クリストファーの声が低くなる。
あー、間違った。言ってはいけない事だった。
ミルアージュは慌てて話を戻す。
「犯人の目的は私を殺す事かマリア王女をルーマンのせいにして死なせる。この二つが有力ね。」
「マリア王女の自作自演という可能性は?」
国王が口を開く。
クリストファーの興味をひき、ミルアージュを失脚されるために。
量を減らせば毒味だって通り抜けられる。王族に対し通常はそういう使い方をする。
なのに…食べてすぐ苦しみだしたのを見ると量はかなり多い。
王族が毒味なしで食べ物を口に入れることなどない、そう考えるとマリアの行動がとても怪しくなるのだ。
「ないとは言いませんが、あの毒の量だと早期に対応できなければ致死率が高いです。自分の死ぬ確率が高い毒を自作自演で使うには相当な覚悟が必要です。」
まだマリア王女の事を知よく知らないが、死ねるほどの覚悟を持っていたのだろうか?
ミルアージュはぼんやりと考えていた。
本来、前触れを出してから訪れるものだ。
王女が他国の王太子妃に対して突然の訪問などあり得ない。
「それなのにマリア王女を部屋に招き入れたのか?」
クリストファーはミルアージュに聞いた。
いくら相手が王女だからって安全管理が甘いと言われても仕方ない。
クリストファーを巡って揉めるかもしれないのだ。下手したら国際問題になる。
「いつもなら入れないわよ。なんかすごく思いつめていた顔をしていたから嫌な予感がしたのよ。」
ミルアージュは苦笑いをする。
「その時、クリスからのクッキーの差し入れがあったの。」
「?クッキーなんて差し入れてないぞ?」
クリストファーは首をかしげる。
「クリスの差し入れと知って止める間もなく口に入れたのよ。毒味もせずに…」
マリア王女は自分からクッキーを口に入れたとミルアージュは言ったが、その場にいたのはミルアージュとマリアだけだ。
実際のところはわからないと宰相も尋問官も思った。
それが本当ならマリアは自分で仕掛けたのでなければ、考えなしの愚かな王女ということになる。
「そう。クリスからの差し入れのね。」
ミルアージュはもう一度クリストファーからもらったと言う。
そこは誰も疑っていないので流してほしいと皆が思った。
「だから、差し入れていない!」
クリストファーはムキになって否定する。
ミアに毒物を送ったなど思われるのは本気でなくても嫌だ。
「そんなの知っているわよ。でもマリア王女がクリスの名の差し入れの毒を私の部屋で摂取するなんてできすぎよね?」
シーンと静まり返る。
裏があるとしか思えない状況に頭痛がする。
「それならなぜ毒の特定ができたのですか?」
宰相はミルアージュにきく。
「アンロックの王族なら毒の見極めや対処なんて当然よ。」
「?」
皆、頭にハテナマークが飛んでいる。
暗殺に備えて毒の耐性をつけるのは王族のあるあるだ。
だが、毒の見極めてどうなるのだ?
ミルアージュは少し言いにくそうに答える。
「お父様が病弱だったのは毒の後遺症が残ったから。だから徹底的に毒の耐性はつけられたし、毒の種類や摂取した時の対処方法は完璧なつもりよ。」
「だが、見た目ではわからないだろう?匂いか?」
クリストファーは意味がわからんと言う。
ミルアージュは本当のことを言うとクリストファーが怒るのが目に見えるが、言わないという選択肢はないという事もわかっていた。
これは尋問官もつき、正式に行われている尋問なのだから。
「マリア王女が食べたクッキーを口に含んだのよ。」
皆固まっている。
「毒物とわかっていて口に入れたのか?」
クリストファーは恐る恐る口を開く。
ミルアージュもバツが悪そうにハァーとため息をついた。
「マリア王女は苦しがっていたけど、即死しない程度の毒ならいけると思って。口に含んだ際、ランケットの特有の味がしたわ。」
「ミア!!何してるんだ!」
クリストファーの怒鳴り声が響き渡る。
ミルアージュは素直にごめんなさいと謝っている。
「ランケットってなかなか出回らないものですよね?どうして知っているのですか?」
宰相が口を挟む。
珍しい毒草のため、王族ですら耐性をつけにくく、甘味も含んでおり食材に混ぜるにはちょうど良いものだ。
そして、量により発現時期や症状も選ぶ事ができ使い勝手が良かったため、王族や高位貴族向けの毒物だった。
「幼い時、その毒で一度死にかけたから…結局犯人は捕まらなかったけれど、レンラグスの間者の仕業ではないかと言われていたわ。」
レンラグスはアンロックを侵略しようと何度か戦争を仕掛けていたし、因縁がある事は皆知っていたが、毒殺未遂の疑いもあったのだ…
クリストファーは息を飲んだ。
「証拠はあるのか?」
「憶測の域を出ないけれど、アンロックに攻め込んできていた事とランケットはレンラグスで取れる毒薬だったから。」
「どうしてそんな大事を言わなかった!知っていたらもう少し周囲を注意したのに。マリア王女にだって会わせなかった。」
クリストファーはミルアージュを抱きしめた。
「大丈夫よ、毒殺未遂なんて何度もあったから気にしてたらキリ無いわよ。」
ミルアージュは笑い飛ばした。
「他にもあったのか?」
クリストファーの声が低くなる。
あー、間違った。言ってはいけない事だった。
ミルアージュは慌てて話を戻す。
「犯人の目的は私を殺す事かマリア王女をルーマンのせいにして死なせる。この二つが有力ね。」
「マリア王女の自作自演という可能性は?」
国王が口を開く。
クリストファーの興味をひき、ミルアージュを失脚されるために。
量を減らせば毒味だって通り抜けられる。王族に対し通常はそういう使い方をする。
なのに…食べてすぐ苦しみだしたのを見ると量はかなり多い。
王族が毒味なしで食べ物を口に入れることなどない、そう考えるとマリアの行動がとても怪しくなるのだ。
「ないとは言いませんが、あの毒の量だと早期に対応できなければ致死率が高いです。自分の死ぬ確率が高い毒を自作自演で使うには相当な覚悟が必要です。」
まだマリア王女の事を知よく知らないが、死ねるほどの覚悟を持っていたのだろうか?
ミルアージュはぼんやりと考えていた。
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