わがまま妃はもう止まらない

みやちゃん

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「覚悟がない?」
ムランドは不思議そうにこちらを見た。
何を言われているのかわからないのだろう。

人や自分の死に覚悟なんてできている…と自分では思っているのは見ていてわかる。

「人を殺してもらえる褒美であなたやマリア王女は本当に喜べると思えないわ。」

そういう人種がいる事は間違いない。
だけど、ムランドは決してそんな人間ではないだろう。よくこの道を選んだと思わせるくらい優しいのはすぐにわかった。

護衛の訓練をちゃんと踏まずにここにいるのも問題だが、戦争に出るのも相当危ないだろうとミルアージュは思っている。
それは周囲の者たちと距離感が近さを見てもわかる。
無口で冷静なフリをしておいて隠しきれない。

王女に寄り添い、この国のメイド達や従者にすら配慮し、気遣いをみせる。

戦場ではその優しさは弱点となる。相手に弱点を易々と教えている時点で負ける。

そういう人間は、戦場で敵を倒せても危険が差し迫った時、仲間を捨てるという判断ができず共倒れをする。
だから、どれだけ強くなろうと重要なポジションにはつけない。リスクが高すぎるから。

「もし、この国とレンラグスが戦争になったらどうする?今日の味方が明日の敵、そうなる可能性だってある。」

「……」

「今、あなたがこの城で仲良くしていた者たちが敵になったら迷わず殺せる?本人の人柄や家族を無視できる?危険が迫ってどうしようもない時、迷わず仲間を見捨てられる?」

殺される者にも感情がある。悲しむ家族がいる。
そして、仲間でも個人を犠牲にし全体を守るという選択肢しかない場合もある。

危機に迫られた中では迷う時間などない。

「ミルアージュ様は迷わず、そうするのですか?」

「するわ。私の個人的感情を優先して民を危険に晒すわけにはいかない。私の守れるものはそんなに大きくない。それならば、大切な人達を優先し、必要があれば迷わず殺す。味方でも犠牲にするわ。」

その覚悟ができているのか。
それは死ぬより強い覚悟が必要だ。
死ねば後悔も苦しみも感じる事はないが、生き残れば一生背負わなければならないのだから。

私も偉そうな事をいいながらクリスには手を出しすぎるなと怒られたばかりだけど。
まぁ、若い子にちょっとくらいお説教するのが大人ってものよね…と言い訳してみる。

「正直、あまりピンと来ません。その場に立ったことがないので。」

ムランドは考え込んだ。
元々素直な人なのだろう。

人を殺して絶対、幸せになれないタイプ。
そしてそれを見たマリア王女も傷つく。

こういう人はわざわざそういう道を選ばず、普通に幸せになってほしい。
剣の腕はもったいないけど…

これこそ、私のわがままかしら?
ブランだってリスクを考え外したというよりもマリア王女を悲しませたくないというのが正解っぽいけどね。

「急ぎではないからゆっくり考えてみて。それで結論が出たらブランに言うといいわ。あなたの覚悟次第でブランが動くかもよ。でもオススメはしないわ。」

「わかりました。アドバイスありがとうございます。」
ペコっとムランドはお辞儀をした。

「いえいえ。考え込む前に私と楽しみましょう。」
ミルアージュとムランドの試合が始まった。


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