わがまま妃はもう止まらない

みやちゃん

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「アルトの隊長昇進を祝って乾杯!」
ミルアージュが高らかにグラスを掲げると第三部隊の皆が乾杯をした。

皆、第三部隊の食堂に集まっていた。
訓練終わりにアルト隊長の昇進祝いをミルアージュが開いたのだ。

「今日は私のおごりなので遠慮はいらないわ!」
ミルアージュは上機嫌だった。
皆、ミルアージュのおごりでご馳走を食べ放題、飲み放題に浮かれていた。

最初だけ…

ミルアージュの近くになぜか王太子クリストファーがいた。すごく不機嫌な顔をして。

「おい、何で王太子がここにいるんだ?王太子の部隊は第二だろ?」

「知るかよ。ミルアージュ様に聞いてもわからないっていうんだから。あんなに美味しそうなものいっぱいあるのに食べに行きづらい…」

第三部隊の隊員達は王太子の前を通り、山盛りに盛り上げられたご馳走を取りに行く勇気がなかった。
前を通る時はどうするのがマナーなのかわからないので通るに通れない。

「クリス、あなた場の雰囲気を壊しているわ。さっさと出て行って!」
不機嫌なクリストファーに向かいミルアージュが怒鳴った。

それにつられクリストファーの殺気が強くなった。
なぜだ?
クリストファーに喧嘩を売っているのはミルアージュなのに、殺気を向けられるのは第三部隊の隊員達…

「おいおい、夫婦喧嘩か?別の場所でしてくれよ…っか早く出て行って欲しい。」
皆が心の中で思ってしまった。

せっかくのご馳走が…せっかくの飲み放題が…取りに行くこともできない。

「姫、祝ってくれるのは嬉しいが、クリストファー様をなんとかしてくれないか?」
クリストファーの殺気に耐えながらアルトがミルアージュにだけしか聞こえるように話しかけた。

クリストファーのブワッと強くなる殺気に皆固まった。

「アルトの祝いの席なのに…仕方ないわね。」
ボソリと呟いてミルアージュはクリストファーの前に立った。

「行くわよ、クリス。久しぶりに時間が取れているし散歩でもしながら戻りましょうか?」

ミルアージュに促されクリストファーは食堂を後にした。



「ハァ、緊張した。結局王太子は何しに来てたんだ?」
隊員達は緊張の糸が切れてぐったりしている。

王族と会う機会すらなかなかないのに、同じ食堂で一緒にに座ってるなんてもう二度とないはずだ。

平民が多い第三部隊員が王族と一緒に食事を共にするマナーなんかさっぱりわからない。

そこまで考えて皆ふと思った。
ミルアージュだって王族だったと…

ミルアージュと遠征し共に寝起きしたせいか第三部隊員はミルアージュに親近感がわいていた。

「ミルアージュ様、訓練は鬼のようだけど優しいな。」
「そうだな。」

アレンベールでのミルアージュの功績を知っている第三部隊の者達はミルアージュが噂どうりの悪女ではない事を知っている。

このルーマンを誰よりも心配している優しい王太子妃。
皆、ミルアージュについていこうと思っていた。

「俺の昇進祝いに来てくれてありがとう。姫がたくさん食べ物や飲み物を置いて行ってくれた。楽しんでくれ。」
アルトが場を仕切った。

そう、アルトは平民で初めて隊長になった。
ミルアージュなら実力さえあれば身分など気にせず、出世させる。そう皆に認識させた。

モチベーションの高め、皆で切磋琢磨をすることがこの第三部隊にはどうしても必要だった。
今まで貴族の兵達から身分差別を受け、理不尽な事もやらされてきた者も多い。
軍の実力をあげていくためには希望を持つことはとても大切だ。

ミルアージュがアルトを隊長にしたのはアルトのためだけではなく部隊の為である事は知っている。皆がアルトを目指す事ができるように、明日の訓練でさらに強くなる事ができるように。
そうなる事を期待しているのだ。

アルトは覚悟を決めていた。
ミルアージュに一生ついていくと。
その為に必要なら大将にでもなってやると…
あんなにウジウジ悩んでいたアルトだが、一度決断すると誰よりも貪欲に剣も座学も学んだ。

ミルアージュの期待に応えたい。
それがアルトの原動力だ。
それを感じ取っているからこそ、あんな風にクリストファーはアルトを威嚇しに来たのだ。

ミルアージュは自分の妃だと言わんばかりに。

「そんなに警戒しなくても自分の置かれている立場は理解できているのに。」
アルトはポソリとつぶやいた。

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