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「ミルアージュ様に軍の指揮ができるわけがない!大体あの第三部隊を出すなど我が国の恥だ!」
第二部隊隊長のキュラミールは叫んで立ち上がった。
「恥?」
突き刺すようなミルアージュの冷たい視線がキュラミール隊長に向けられた。
その場にいた者達はミルアージュのあまりの威圧感に固まった。
「ルーマンで一番マシな部隊が第三よ。これ以上侮られる訳にはいかないの。国の存続がかかっている時にあなたのしょうもないプライドで時間をかけたくない。」
「しょうもないプライドだと!」
キュラミール隊長は拳を握り、今にもミルアージュに殴りかかりそうな勢いだった。
「…キュラミール隊長、席につけ。命令だ。」
クリストファーにそう言われると従わない訳には行かずキュラミールは納得いかない顔をしながら渋々席についた。
「まずリスクがある以上、ミルアージュを出す事はできない。私の代わりはいてもミルアージュの代わりはいない。今のルーマンには必要な存在だ。アビーナル、アルトへの命令内容を見ても父上もそう判断しているのだろう。」
クリストファーの発言に皆言葉を失った。
どうして王太子妃が王太子より重要となるのか。
クリストファーの寵愛は有名だが、国王はなぜ?
ミルアージュが口を開く。
「クリストファー殿下、私が出るのが一番最適だとわかっていますよね?それとも私が信じられませんか?」
ミルアージュの口調は丁寧だ。何より冷静に話している。
それなのに…クリストファーに向けられた圧はものすごく強いものだった。
「…私が出るよりうまく場をおさめる事ができるだろう。だが…」
クリストファーはミルアージュに嘘がつけない。すぐにバレる嘘などついてミルアージュの信頼を失いたくない。昔からの癖のようなものだったが、ミルアージュを守るという重要な場面でも嘘をつくという選択を選ぶ事はなかった。
「ミルアージュ様の方がクリストファー様よりうまく場をおさめる?そんな…ありえない。」
宰相がポソリと呟く。
クリストファーはルーマンが誇る王太子だ。それなのに、クリストファー自身もミルアージュもミルアージュの方が上だと考えている。
「勘違いしないで、私の方が優秀と言っているわけではないわ。良くも悪くもクリストファー殿下はアンロックでも要注意人物だったわ。」
ミルアージュはクリストファーをチラッと見てフゥとため息をついた。
厳重な守りを誇っているアンロック王城に息を吸うように不法侵入し、行動も全く読むことができない。常識も通用しない。ある意味誰よりも怖い人物だった。
「相手の裏をかく戦法ならピカイチよ。クリストファー殿下の行動は誰にも予測できない。だけど、正攻法しかもレーグルトが相手なら私の方が有利だわ。」
クリストファーが皆にわかるように説明を付け足した。ミルアージュは自分から何も言わないが、この先の話には必要な事だ…
「ミルアージュはレーグルト・レンラグスの連合軍と戦った時のアンロック側の総司令官だ。」
「はっ?アンロックが不利の中、圧勝したあの戦いですか?」
「そうだ、当時13歳だったミルアージュはアンロックの白銀強王と呼ばれていたな。」
白銀強王とは、顔まで隠した白銀の鎧を身につけていた王に付けられた通り名だった。
クリストファーは吐き捨てるように言う。クリストファーにとってミルアージュを苦して続ける最大の戦争だっただけに苛立ちが隠せなかった。
「あれはアンロックの前王だったのでは?」
宰相が少し考えてから聞いた。
「前王は病に臥せっていた。だが、あの場では王の存在は必要だった。誰よりも強い王がな…ミルアージュは王の替え玉だ。」
アンロックはまだ成人もしていないミルアージュに全てを押し付け利用した。
クリストファーはそんなアンロックの連中を毛嫌いしていたはずなのに…蓋を開ければ自分もそんなアンロックの連中と同じ事をミルアージュにしようとしている。
そして、ミルアージュはまた心の傷を増やす。
「クリストファー殿下、そんな真剣な顔をしてもダメよ。あの後大変だったんだから。」
その頃のミルアージュを思い出し殺気を出しているクリストファーにミルアージュは釘をさす。
「クリストファー様もその戦に関わっていたのですか?」
宰相が聞いた。ルーマン宰相ですら知らない隣国の内情をまだ成人もしていないクリストファーが知っている事に首をひねった。
「関わっていたというか…終わった後にちょっとな。」
クリストファーは何事もないようにシレッと誤魔化した。
ミルアージュは冷たい視線をクリストファーに向けながら説明した。
「開き直らないで。本当に大事だったのよ。私が王の代わりで戦に出ていた事に激怒してアンロックに怒鳴り込んだ挙句、無抵抗の軍部大将を殴り飛ばすなんてね。」
「は?殴り飛ばした?」
宰相が驚きのまま呟いた。
他国の内情に口を出した挙句に軍の大将を殴るなどあり得ない…謝罪で済むのか?
まだ成人していないとは言え、王太子クリストファー様がアンロックで処刑されてもルーマンも文句をいう資格すらないレベルの話だ。
国王が真っ青な顔でアンロックに旅立った事があったな…宰相は国王の苦労に少し同情した。
「ミアに苦痛を与えた愚か者だ。当たり前だ。アンロック王は病で弱ってたからさすがに殴れなかったがな。」
言い換えれば…病人じゃなければ殴っていたと言っているクリストファーに皆が青ざめた。
殴っていたらクリストファーは確実にこの場にはいなかったはずだと思ったから。
第二部隊隊長のキュラミールは叫んで立ち上がった。
「恥?」
突き刺すようなミルアージュの冷たい視線がキュラミール隊長に向けられた。
その場にいた者達はミルアージュのあまりの威圧感に固まった。
「ルーマンで一番マシな部隊が第三よ。これ以上侮られる訳にはいかないの。国の存続がかかっている時にあなたのしょうもないプライドで時間をかけたくない。」
「しょうもないプライドだと!」
キュラミール隊長は拳を握り、今にもミルアージュに殴りかかりそうな勢いだった。
「…キュラミール隊長、席につけ。命令だ。」
クリストファーにそう言われると従わない訳には行かずキュラミールは納得いかない顔をしながら渋々席についた。
「まずリスクがある以上、ミルアージュを出す事はできない。私の代わりはいてもミルアージュの代わりはいない。今のルーマンには必要な存在だ。アビーナル、アルトへの命令内容を見ても父上もそう判断しているのだろう。」
クリストファーの発言に皆言葉を失った。
どうして王太子妃が王太子より重要となるのか。
クリストファーの寵愛は有名だが、国王はなぜ?
ミルアージュが口を開く。
「クリストファー殿下、私が出るのが一番最適だとわかっていますよね?それとも私が信じられませんか?」
ミルアージュの口調は丁寧だ。何より冷静に話している。
それなのに…クリストファーに向けられた圧はものすごく強いものだった。
「…私が出るよりうまく場をおさめる事ができるだろう。だが…」
クリストファーはミルアージュに嘘がつけない。すぐにバレる嘘などついてミルアージュの信頼を失いたくない。昔からの癖のようなものだったが、ミルアージュを守るという重要な場面でも嘘をつくという選択を選ぶ事はなかった。
「ミルアージュ様の方がクリストファー様よりうまく場をおさめる?そんな…ありえない。」
宰相がポソリと呟く。
クリストファーはルーマンが誇る王太子だ。それなのに、クリストファー自身もミルアージュもミルアージュの方が上だと考えている。
「勘違いしないで、私の方が優秀と言っているわけではないわ。良くも悪くもクリストファー殿下はアンロックでも要注意人物だったわ。」
ミルアージュはクリストファーをチラッと見てフゥとため息をついた。
厳重な守りを誇っているアンロック王城に息を吸うように不法侵入し、行動も全く読むことができない。常識も通用しない。ある意味誰よりも怖い人物だった。
「相手の裏をかく戦法ならピカイチよ。クリストファー殿下の行動は誰にも予測できない。だけど、正攻法しかもレーグルトが相手なら私の方が有利だわ。」
クリストファーが皆にわかるように説明を付け足した。ミルアージュは自分から何も言わないが、この先の話には必要な事だ…
「ミルアージュはレーグルト・レンラグスの連合軍と戦った時のアンロック側の総司令官だ。」
「はっ?アンロックが不利の中、圧勝したあの戦いですか?」
「そうだ、当時13歳だったミルアージュはアンロックの白銀強王と呼ばれていたな。」
白銀強王とは、顔まで隠した白銀の鎧を身につけていた王に付けられた通り名だった。
クリストファーは吐き捨てるように言う。クリストファーにとってミルアージュを苦して続ける最大の戦争だっただけに苛立ちが隠せなかった。
「あれはアンロックの前王だったのでは?」
宰相が少し考えてから聞いた。
「前王は病に臥せっていた。だが、あの場では王の存在は必要だった。誰よりも強い王がな…ミルアージュは王の替え玉だ。」
アンロックはまだ成人もしていないミルアージュに全てを押し付け利用した。
クリストファーはそんなアンロックの連中を毛嫌いしていたはずなのに…蓋を開ければ自分もそんなアンロックの連中と同じ事をミルアージュにしようとしている。
そして、ミルアージュはまた心の傷を増やす。
「クリストファー殿下、そんな真剣な顔をしてもダメよ。あの後大変だったんだから。」
その頃のミルアージュを思い出し殺気を出しているクリストファーにミルアージュは釘をさす。
「クリストファー様もその戦に関わっていたのですか?」
宰相が聞いた。ルーマン宰相ですら知らない隣国の内情をまだ成人もしていないクリストファーが知っている事に首をひねった。
「関わっていたというか…終わった後にちょっとな。」
クリストファーは何事もないようにシレッと誤魔化した。
ミルアージュは冷たい視線をクリストファーに向けながら説明した。
「開き直らないで。本当に大事だったのよ。私が王の代わりで戦に出ていた事に激怒してアンロックに怒鳴り込んだ挙句、無抵抗の軍部大将を殴り飛ばすなんてね。」
「は?殴り飛ばした?」
宰相が驚きのまま呟いた。
他国の内情に口を出した挙句に軍の大将を殴るなどあり得ない…謝罪で済むのか?
まだ成人していないとは言え、王太子クリストファー様がアンロックで処刑されてもルーマンも文句をいう資格すらないレベルの話だ。
国王が真っ青な顔でアンロックに旅立った事があったな…宰相は国王の苦労に少し同情した。
「ミアに苦痛を与えた愚か者だ。当たり前だ。アンロック王は病で弱ってたからさすがに殴れなかったがな。」
言い換えれば…病人じゃなければ殴っていたと言っているクリストファーに皆が青ざめた。
殴っていたらクリストファーは確実にこの場にはいなかったはずだと思ったから。
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