わがまま妃はもう止まらない

みやちゃん

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「はぁ。結局俺は何がしたかったんだ…」

アルトは自分のテントで大きなため息をついた。
戦闘するよりも精神面がやられてグッタリと寝袋に倒れこんだ。



ミルアージュとアルトは静かにお茶を一杯だけ飲んだ。

本当にただ無言でお茶を飲んだだけ…

「ハァァァ、何しに言ったんだ、俺…」
アルトは頭を抱えてため息しか出ない。

確かに夜遅くに同じテント内で長く過ごすのはいけないとアルトだってわかっている。

だが、ミルアージュから愚痴も悲しみも何も引き出せなかったのが辛かった。

「クリストファー様の言った通りか…俺はなんの力にもならない。」

ミルアージュを独りにしておいた方が良かったのか…
結局、ミルアージュを心配するアルトに気遣ってくれただけなのでは…

アルトはどうするのが良かったのか結局わからなかった。

あんなに強いのに。
強いからこそ、数多くの人を死なせ罪を背負う。

「本当にな、ここまでだとは思わなかった。よくあれで生きてきたな。」

独り言を言っているアルトに答える声が聞こえた。

「…マカラック様!なぜここに!お戻りになったのでは…」

アルトの頭元にマカラックが立っており、アルトも慌てて体勢を起こした。

「一度は戻ったんだが…」

マカラックは歯切れの悪い言い方をしている。

「ミルアージュ殿と聖力で繋がっていたから、まだ完全に切れていないんだ。力も精神的なつながりも…ミルアージュ殿はかなりまずい状況だ。」

「まずい状況…」
マカラックの眉間にしわを寄せた表情を見て、アルトも嫌な予感しかしなかった。

「ミルアージュ殿の精神はもう限界だ。」

「限界…」

「今までも心を殺して無理してたから元々ギリギリだったんだ。それが今回の事で時間と共に忘れかけていた感覚を取り戻してしまった。」

アルトはゴクリと唾を飲み込んだ。
この先を聞きたくないと思ってしまった。

「自分が人を殺し、不幸な人を増やしたとな。」

「あの場合はどうにもならなかった!姫が敵を抑えてくれたおかげでこちらの死者は少なかったんだ。」

「ああ、ミルアージュ殿だって、そんな事わかっている。だが、感情は別だ。」

そんな状態なのに、自分が支えられない。
内側を見せてもらえない。
アルトは悔しくて涙が出てきた。

泣いたのなど、いつぶりだろう。
悔し涙に限定すれば、子供の頃喧嘩に負けて以来だ。

「私達の手には負えない。クリストファー殿を呼んでこようと思う。クリストファー殿は私の事をどのくらい知っている?」

「俺が知っている範囲は全て報告している。」

「じゃあ、ここに連れてこれるかな?クリストファー殿もミルアージュ殿のように聖力をすぐに使いこなせてくれると助かるが…それまでミルアージュ殿を頼む。」

「ああ、わかった。」

そうアルトが言うとスゥとマカラックは消えていった。




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