わがまま妃はもう止まらない

みやちゃん

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5,6歳のマウルと呼ばれた男の子は振り上げられた剣を見て目を閉じた。

「マウル!」
剣が振りあげられたのを見た母親は慌ててマウルのもとに走り出した。

母親からの距離では間に合わない。

キュラミールも本気ではなかった。
第三部隊が、いや平民たちが活躍をしたのが面白くない。
「しょうもないプライド」と遠征前にミルアージュに恥をかかされた事をまだ根に持っていたので力を誇示したかっただけだ。

パリンッ

周りは顔を真っ青にした。

赤ワインが入ったグラスがキュラミールにぶつけられ割れた。
キュラミールの服は赤ワインで真っ赤に染まり、ポタポタと雫がこぼれていた。

母親は駆け寄りマウルを抱き、ブルブルと震えていた。

マウルと呼ばれる平民の子どもの言動は貴族しかも権力を持つキュラミールに対し許されるものではない。

だが、それ以上に赤ワインをグラスごと投げられるというのはキュラミールにとって許しがたい事態であった。

「誰だ…こんな愚かな事をした奴は…」
キュラミール隊長は静かに殺気を出している。
誰しも本気で怒ったと覚悟した。

誰がしたのかはわからないが、処刑すら覚悟しなければならないと皆思った。

「愚かなのはあなたよ。」
その声に応えるようにミルアージュの声が響いた。

アルトは慌ててミルアージュを見た。

ミルアージュの冷たい殺気がキュラミールに注がれる。

お互いに一言も話さずにらみ合いが続く。

周囲の者たちも口を挟む事などできなかった。

先にしびれをきらし、動いたのはキュラミール。

「なぜ、私にこのような無礼な真似をされたのか?」
一応王太子妃であるミルアージュには強くは出られない。

プルプルと握る拳がキュラミールの怒りを表していた。

「マウル、あなたのお兄様のお名前はなんというのです?」
ミルアージュは怒るキュラミールを無視してマウルと母親の元に歩いていった。

「アレンド…」
目から涙をポロポロこぼしながらマウルは答えた。

「アレンドは、努力を惜しまず、訓練も人一倍頑張っていました。周囲への気配りや思いやりのある若者で、将来を期待していました。彼がいたから今、国王は帰還できたのです。」

母親は涙を流している。
ミルアージュはマウルに言う。

「あなたのお兄様は素晴らしい剣士よ。誇りに思いなさい。亡くなったのはとても残念です。」

母親とマウルに向かい、敬意を込めてミルアージュは深々と頭を下げた。

王族が平民に頭を下げるなど考えられない。
皆その光景を唖然としながら見ていた。

「王太子妃、何をなさる!王族としての誇りもないのか!」
血筋や身分何より大切にするキュラミールは大声でミルアージュを怒鳴りつけた。
王太子妃への不敬など全く考えていない言葉だった。

「ここは第三部隊への慰労の場です。第三部隊の皆に敬意をはらうべきです。そんな簡単な事も理解できないなら参加する資格はありません。今すぐここを去りなさい!」

ミルアージュは高々に宣言した。
今ここから去るようにキュラミールに命令したのだ。
ミルアージュがキュラミールに命令という形をとったのは初めての事だった。

「あなたが私に命令できる立場にはない。」
王族としても第三部隊の司令官とも認めない。
キュラミールはミルアージュを睨みつけた。

「では強制的に排除するわ。アルト剣を持ってきなさい。」

ミルアージュはドレスを着ており、剣を持ち歩いていない。
アルトの剣で強制的にキュラミールを排除するのが本気なのはその場の誰の目にもわかった。

「そこまでだ。」
ミルアージュとキュラミールの間に王太子クリストファーが現れた。

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