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「私がルーマンを危険に晒している…」
ミルアージュは独り言のようにボソリと呟いた。
「関係ない。その隙を作ったのは私達だ。ルーマンが弱体化していなければ、そんな事にはならなかった。」
「でも私が嫁がなければ、こんな急激で事は進まなかったはずよ。」
「急激でなくともいずれは起こっていた。油断して急に動いたからこそ、向こうにも隙ができている。時間をかけて下準備をされなくて良かったと思うくらいだ。」
クリストファーは笑いながら余裕の表情をしているが、ミルアージュは余計に辛くなった。
こんな時ですら私を気にかけてくれている。
その事がわかるからこそ、何もできない自分が悔しかった。
そんなミルアージュの辛そうな表情を見てクリストファーのイラつきは最高潮となった。
ミアを傷つける者は何者であっても許さない。
クリストファーが今回、猛烈に怒っているのはこうやってミルアージュを精神的に追い詰める方法をとる事だ。
絶対に許すことができない。
徹底的に追い詰める。
その下準備をここ数ヶ月していた。
ミアが許しても私は絶対に許しはしない。
そう心に誓っていた。
「大まかには全部話した!細かな話は明日以降だ。よし、これで夫婦水入らずだな。」
ミルアージュの顔色が曇っているため、クリストファーは話を切り替える事にした。
ミルアージュが悩めば、クリストファーにとって最悪な結論を出すことは今までの経験からわかっている。
そんな事をクリストファーは望んでいないし、真実を知っている者たちだってミルアージュの幸せを祈っている。
それが伝わらない事に歯がゆさを感じるが、それを今ミルアージュに言ってもわからない。
それなら…逃れられないようにするしかない。
幸せになりたくないのなら押し付けるしかない。
それがクリストファーの結論だった。
その為に外堀を埋めていく。
国のためではなくミルアージュの為に。
レンドランド王、アンロック宰相や軍部大将、ブランなど国に影響がでない範囲ならミルアージュの為に無償で動いてくれる。
今までミアが皆にどれだけのものを与え、恩に感じているかなど考えた事がないだろう。
それを私が利用しても問題ないはずだ。
ミアの味方は私だけで良い。
だから、ミアには何も教えない。
結果として国のためになるのだからミアだって反対はできない。
私のそばでただ、幸せになってくれれば良い。
「もちろん約束だから応えてくれるよな、ミア。」
今はミアが何も考えられないようにするしかない。
それならクリストファーは得意だった。
いつも無茶ばかりして文句を言われていたのだから。
ミアからの約束はとっているし、アビーナルが次の日の予定を言い訳に早めに切り上げるよう口出してくることもない。
「ミア、今日は私を受け入れてくれるだろう。こんなに待たせたのだから。」
ニヤリと笑うクリストファーにミルアージュは嫌な予感しかしなかった。
ミルアージュは独り言のようにボソリと呟いた。
「関係ない。その隙を作ったのは私達だ。ルーマンが弱体化していなければ、そんな事にはならなかった。」
「でも私が嫁がなければ、こんな急激で事は進まなかったはずよ。」
「急激でなくともいずれは起こっていた。油断して急に動いたからこそ、向こうにも隙ができている。時間をかけて下準備をされなくて良かったと思うくらいだ。」
クリストファーは笑いながら余裕の表情をしているが、ミルアージュは余計に辛くなった。
こんな時ですら私を気にかけてくれている。
その事がわかるからこそ、何もできない自分が悔しかった。
そんなミルアージュの辛そうな表情を見てクリストファーのイラつきは最高潮となった。
ミアを傷つける者は何者であっても許さない。
クリストファーが今回、猛烈に怒っているのはこうやってミルアージュを精神的に追い詰める方法をとる事だ。
絶対に許すことができない。
徹底的に追い詰める。
その下準備をここ数ヶ月していた。
ミアが許しても私は絶対に許しはしない。
そう心に誓っていた。
「大まかには全部話した!細かな話は明日以降だ。よし、これで夫婦水入らずだな。」
ミルアージュの顔色が曇っているため、クリストファーは話を切り替える事にした。
ミルアージュが悩めば、クリストファーにとって最悪な結論を出すことは今までの経験からわかっている。
そんな事をクリストファーは望んでいないし、真実を知っている者たちだってミルアージュの幸せを祈っている。
それが伝わらない事に歯がゆさを感じるが、それを今ミルアージュに言ってもわからない。
それなら…逃れられないようにするしかない。
幸せになりたくないのなら押し付けるしかない。
それがクリストファーの結論だった。
その為に外堀を埋めていく。
国のためではなくミルアージュの為に。
レンドランド王、アンロック宰相や軍部大将、ブランなど国に影響がでない範囲ならミルアージュの為に無償で動いてくれる。
今までミアが皆にどれだけのものを与え、恩に感じているかなど考えた事がないだろう。
それを私が利用しても問題ないはずだ。
ミアの味方は私だけで良い。
だから、ミアには何も教えない。
結果として国のためになるのだからミアだって反対はできない。
私のそばでただ、幸せになってくれれば良い。
「もちろん約束だから応えてくれるよな、ミア。」
今はミアが何も考えられないようにするしかない。
それならクリストファーは得意だった。
いつも無茶ばかりして文句を言われていたのだから。
ミアからの約束はとっているし、アビーナルが次の日の予定を言い訳に早めに切り上げるよう口出してくることもない。
「ミア、今日は私を受け入れてくれるだろう。こんなに待たせたのだから。」
ニヤリと笑うクリストファーにミルアージュは嫌な予感しかしなかった。
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